第11話 初めての授業にゃー


 「今日がいよいよ入学式にゃー!!」


私は跳ね起きカーテンを開ける。

いつもの癖が、ついついこの世界でも出てしまったのだ。


「ねぇ……いきなり叫ばれてカーテン開けられると目覚め悪いんだけど」

「ごめんにゃ……」

「次からは絶対にしないで」

「はいにゃ……」


相変わらず私たちの距離は遠い。

もう私は仲良くなるのを諦めて、生活することにした。

いや、諦めるというより、時間をかけ、仲良くなっていく方針に変えただけなのだが……


「あー鉛筆削るの忘れたにゃ……今日書類書かないとけいないのににゃー……」


『朝食の時間です。食堂を開放します』


「あっ……まぁいいにゃ後で削るにゃ」


私は走って食堂に向かっていった。

その時、尻尾があたり鉛筆が落ちたことに、私は気づくはずもなかった。



「シャーリン!おはよー!」

「ミシュおはようにゃ!」

「遅いですわよ!」

「珍しいね、シャーリンが最後なんて……」

「そうですわね~何かありましたの~それよりも早く食べましょう~?」


もうすでにミシュ、ロミ、エリ、スライがご飯を取り、座っていた。

私たちはある1種族のお皿を見て少し話しだす。


「ここのお料理はどれも素晴らしく最高ですわ~こう……びゅ~ん……と飛びたくなる気持ちになりますわぁ」

「そ……そうだにゃ、私も今まで食べたことないにゃ」

「それにしてもいつも以上に食べますのね……ロミ……」

「こほん!これは走るためには大事なのです。たくさん食べて体力をつけないといけませんから!」

「ロミ……ここに来て……太りましたわね?」

「ぶふ!コホンコホン!」


ロミが慌ててせき込む。

私、ミシュ、スライが黙っていたことを、エリはいとも簡単に話してしまった。


「そ……そんなことはありません!!毎日ランニングしていますから!!」

「そうにゃ~運動しない私でもここに来て痩せたにゃ~全然気にする必要ないにゃ~ここのご飯結構食べても太らないにゃ~」

「ぶふ!!」


ロミがまたまたせき込む。

私には何故せき込んだのか全く分からない……

助け船を出したつもりだったのだけど……


「にゃ?大丈夫にゃ!!?」

「え……ええ……大丈夫ですよ……」

「シャーリンさん……ものすごい決定打を与えましたわね……」

「ロミ〜どうしたのです~?私でよければ相談に乗りますよ~?むしろなかなか食べても、体付き大きくならないことで悩んでるんですよね~?食べて大きくなる方法私教えましょうか~?」

「うう……」

「にゃ!?ロミさんが泣いたにゃ!!?」

「あなた達ちょっとは乙女心を持ちなさい!ロミさんは最近体重が増えて悩んでいるんですのよ!」

「皆……ひどい…・・・ グスン……うああん!」

「いや……一番の原因はエリさんじゃ……最後にとどめのドストレート入れてるし……ロミ、ヨシヨシ……」

「うわああ!ミシュ~ありがとう~」


ミシュはため息をついた。

しばらくロミの号泣が続き、気づいたらもう朝食の終わりが近づいていた。


「もういいですよ……ミシュありがとうございます」

「いえいえ~また3人にいじめられたら私を頼ってね?」

「にゃにゃ!!?私はいじめてないにゃ!」

「私もアドバイスをしようと思っただけですわ~」


私たちの意見にロミは軽く睨む。

どうやらまだ許してはいないらしい。


「あなたたちは同罪です!!」


ロミはその後かなりの量があったはずだが……4人より早く爆速で食べ終わった。

ミシュはこの時思う。先ほどの泣きはなんだったのか……と。



その後私たちは部屋に戻るとすぐに体育館に移動する。

どうやらここからが本当の入学式の始まりらしい……


「え~本日は、皆様スラチオレース高等学校にご入学おめでとうございます。この学園は『仲良くライバルを作り共に高め合う』をモットーに活動していきます!これで話を終わります!皆さんは一旦部屋に戻り教室に向かってください!」


案外入学式は、リンカの話だけで終わったので、5分とかからないうちに、私は教室に向かった。



「ここかにゃ~にゃ??」


私はカバンの中を見る。

そこでついに、最悪なことに気づいた。


「鉛筆忘れてきたにゃ……」


私は慌てて時計を見る。

チャイムが鳴るまで残り1分を切っていた。

今から走っても寮には絶対間に合わない。


「やばいにゃ……どうするにゃ……」


私は周りに気づかれない様にカバンの中を探す。

どこを探しても見つからなかった。

正直どこに落としたのかも全く記憶にない。


「……これ落ちてたけど」

「にゃ?」


目の前には不機嫌そうな顔をしたフランの姿があった。

手に持っているのは、私の鉛筆だった。


「落としたらちゃんと拾って片づけてくれる?そのままにしないで」

「ご……ごめんにゃ……」


私は鉛筆を見る。

あれ??芯が出てるにゃ……それにこの削り跡って……。

私はチラッとフランを見る。フランは相変わらず教科書を覗き込んでいた。

わざわざ拾って削ってくれてのだろう。

しかも、この削り方は、鉛筆削りを使わず……ナイフか何かで切ってくれたのだろう。

ここで確信する。

フランはとても、不器用で優しい人なんだということを。


「はいはーい皆さん!きゃあ!」


先生が入ってきた瞬間、羽がドアに引っ掛かり倒れる。倒れたときに見えたのだが、うしろには硬そうな赤色の大きい尻尾がある。


「??何族にゃ??」

「皆さん!入学おめでとうございます!私がこの1年A組の教師となります!ドラゴン族のレイ・ギルミィと言います!よろしく!」

「ドラ……!!にゃ……」


私は目を丸くする。さらにその体付きは……さすがドラゴン女子というくらいスタイル抜群だった。

ドラゴン族など、前世で言ったら空想上の種族、もしくは異世界の種族だろう。

主人が読書好きなので、何回も読み聞かせてくれていたのだ。

まさかここで役に立つとは思わなかったのだが……


「うらやましいにゃあ……」

「うらやましいですわね……」


私とエリの言葉がハモる。

先生はその独り言を聞き逃さなかったらしく……


「私の話で言うとそうだねぇ……こんなんで走れると思うでしょう?」


と両手で胸を揺らす。

明かに狙っている揺らし方だった。


「案外体つきはレースには関係ないものですよー!走るときに揺れて視線が集まるのがむしろ快感になります……!」

「あっこれやばい先生にゃ……小さくて良かったにゃ……」


私は小さく確信した。

周りからも何とも言えない視線が先生に集まる。


「さぁ皆さんもどんどん走って気持ちよくなりましょうね~早速今からトレーニングルーム、練習場を開放するのでどうぞ自由にトレーニングしてくださーい!ちなみに講義は1日午前中の1時間だけですので~」


先生はそう言うとそのまま教室を出ていった。

どうやら、トレーニングに関しては、本当に1時間以外、自主トレーニングらしい。

そうして、先生が再び講義練習として戻ってくると、ここからが本当の地獄講義と化すのだった。

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