第3話 レース会場に着いたにゃー
私はミシュに連れられ目の前にある緑色のドームに向かっていた。
「あそこなら多分当日枠開いてるはずだよ!」
ミシュが話す。
どうやら、参加するためには、事前に申請するか、当日申請して参加するかの二択があるらしい。
「当日参加もできるのにゃ……」
私はふむふむと考える。
当日参加できるならば、参加しても別にいいかな?と思っているのだ。
「とりあえず入ってみる?」
ミシュに連れられ中に入っていった。
中はすごく広くて、玄関の目の前にもう受付が見えている。
どうやらここで受付を済ませると、もう中に入っていいらしいのか、中に入るためのゲートもちゃんとついていた。
「あら、ミシュさんじゃないですかお久しぶりですね。レース希望ですか?」
と受付の人に話しかけられる。
受付の方は、私よりも少し若いくらいだろうか……
もしもこの世界が動物たちが擬人化しているならば、この方も何かの擬人化ということになる。
「あっどうもニリさん!今回は私じゃなくてこの子を」
とミシュが私に手を向けた。
心準備をする間もなくいきなり紹介するので、私は思わず緊張してしまう。
「ど……どうもシャーリンにゃ!」
「シャーリンさんですか、分かりました手続きを済ませましょう」
「え!?もうにゃ!?」
私は目を見開いた。
いきなりのレース参加だと結構いろいろなことをしないといけないと思ったからで、まさか紹介されて、即座に許可が降りるとは思わなかった。
「まぁ今からのレースには間に合わないので最低でも2時間後にはなりますね」
ニリが紙をペラペラめくっている。
レースの予約表だろうか……それにしても凄く分厚い……
「シャーリンは今回初めてで……」
ミシュが言うとニリが険しい顔をする。
何か悪いコンディションなのだろうか……?
例えば、これから大雨になるとか?
「となると初級レースでも厳しくなりそうですね……今日のメンバーは全員強者ばかりなので……」
とメンバー表を見せてくる。
メンバー表には、たくさんの名前と出身校が書かれていた。
「分からないにゃ……」
私はもちろん誰が誰かわかっていない。
出身校も全く分からない。
「そっかぁ……2時間後のレースには……なるほどウルフ族のロミさんが出るのか……」
ミシュが呟く。
ミシュが険しい顔をしているということは、相当な実力なのだろうか……?
「強いんかにゃ?」
ミシュが頷く。
それはもう2回も。
「前のルべリオン2級レースで1位になった人だね……戦術で言うなら中間から一気にスパートをかける感じになるかな?」
「2級で1位にゃ!?」
私はびっくりする。
まぁ……2級がどれほどすごいのかは、わかってはないけど、1級の1つ下ということは……それでも相当な実力者だと思っているからだ。
「一応練習としても使えますからね……どうします?やはり諦めますか?」
「やるにゃ」
「え?」
驚いたのはミシュだった。
どうやら今の話を聞いて、私は引き下がる判断をするだろう。
と思っていたらしい……
「1位は無理でも頑張るにゃ」
私はついつい答えてしまう。
まぁ、私は昔から、負けず嫌いでもあり、強い日音には良く挑んでいく性格なので、強者と分かれば引き下がるわけにはいかないのだ。
「分かりました。では当日参加枠に追加しておきますね、場所は10番……正面から見て一番左です。出番の1時間前にはここに待っていてください。係りの者が案内し一時間程、自主練の時間を設けております」
私たちは大きく頷いた。
正直後悔している。
この世界に来て間もないのに、いきなり宣戦布告しに来たようなものなのだ。
「やってしまったにゃー!絶対勝てないにゃ……」
私は机にひれ伏す。
意気込みだけは強いのだが、結構突拍子に言ったりするので、後悔して落ち込むことがものすごく多い。
「まぁ……初めては誰だってそんなもの……むしろいきなり2級レース1位の人と当たるなんて滅多にないことだし。まぁほかにもあのメンバーの中にはたいていの人が4級レース1位の者だけどね……」
ミシュの言葉に私は悩む顔をする。
どうせ当たるならば、たくさん練習して万全の状態で戦いたいというのが、心の中にあるからだ。
私のプライドが高いということになるとおもうけど……
「まぁ……なんとかなるよ!」
ミシュが頑張ってという風に両手を振った。
もう、参加すると言ってしまった以上、逃げることは出来ない。
(仕方にゃい……やるだけやってみるにゃ!)
と私は心の中で意気込む。
別にここで負けてもまだこれからがある、その時にまた対戦をすればいい。
そう私は強く思うのだった。
一方その頃……
「ロミ姉さん今回のレース頑張ってください!」
「ありがとねフィー、今回はまぁ……私の得意な長距離ですし……練習だからね、そこまで頑張らなくてもいいかなぁ……」
と妹であるフィーの言葉にロミは軽く笑って答える。
強者の余裕なのだろうか、何も動じてはいない。
「そうなの?次の1級レースに繋がると思うけど……」
フィーが下を向く。
フィーにとっては本気で挑んでほしいということだろう。
もちろんロミもそのことは分かっている。
「もちろん手を抜くってわけじゃないけどね?今回は比較的上位者がたくさんいるようですし……」
と奥からニリが歩いてくる。
2人はこの時すでに何かがあったのかと首を傾げている。
「はい、新たな出走表です」
ニリはロミに出走表を渡す。
軽く一礼すると、2人は出走表を見る。
「変わったところは……へぇー当日枠が入ったのかぁ~」
フィーが下の出走表を見る。
どうやら2人は聞いたことの無い名前らしい。
それもそうだろう……
今日、この世界に来て間もないのだから。
「シャーリンさん……」
「はい今回初出走らしいです」
ニリが笑うとそのまま会釈をし歩いていく。
2人はニリが歩いている合間にも、ずっと出走表を眺めていた。
「懐かしいなぁ……私も初出走はここだっけなぁ……でも」
ロミが笑う。
しかし、ロミにとっては初出場の子には、眼中にはなかった。
「まぁこの子は大丈夫だとして……問題あるとするならば前回4級レース1位のワニ族のエリさん……4級レースとはいえ恐らく1級レースにも通用するほどだったし……」
「まぁでもロミ姉ちゃんには勝てないでしょー」
フィーが拳を突き出して笑う。
「こらこら、ライバルだけど喧嘩するわけじゃないからね?」
ロミが慌てて止める。
フィーはたまに暴走するため、定期的に、ロミが抑えないといけないのだ。
「そうだったね!」
フィーは頭を撫でて笑った。
本当にフィーを連れてきてよかったのだろうか……?
ロミはそんなことを考えるのだった。
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