第2話 街に着いたにゃー


 「もうそろそろ着くよ!」


ミシュが私の顔を見る。

もうあの後から、1時間ほど歩いており、ようやく建物らしいきものが見えてきた。


「了解にゃあ……遠かったにゃ……」


目の前には明らか遊園地の入り口のような門がある。

これが本当に、国の入り口なのか?とも思ってしまうような門のつくりになっている。

門の上には色鮮やかな花が植えられており、正面の看板には【ようこそ!マージュ国へ!!】と大きく書かれていた。


「あはは……まあ……あそこに住んでいるならならね……優秀な選手ならばあそこまで走るけど」


ミシュが私の方を見て話す。

どうやら、あそこまで走るのは、めったにいないらしい。


「そういえば歩いてるときに何人か出くわしたにゃ」

「そっか今日はキャンプの日だっけ……」


ミシュが思い出したかのように手を叩いた。

キャンプは合宿のようなものらしく、集団で遠出をするらしい。

集団で出会ったならば、恐らくキャンプで間違いないだろう。

とのことだった。


「とりあえず入ってみるにゃ」


私たちはそのまま門をくぐった。

中は想像以上に、前世のアレに近いような気がする。

まぁ門の時点で、なんとなく察してはいたのだけれど……


「にゃにゃ!?遊園地にゃ!?」


私は思わず叫んでしまった。そう中には音楽が流れており周りには大きなドームがあちらこちらに建てられてた。

流石に元の世界でもここまで多くのドームは連接していない……


「ようこそ!私たちの住んでいるサイマージュソープへ!略してマージュ国って呼ぶ種族が多いけどね、門にはマージュ国って書いてるから、マージュ国って覚えてる種族が多いらしいよ」


ミシュが笑う。

確かに、サイマージュソープよりも、マージュ国と呼ぶ方が楽ではある。



「にゃるほど……」


私は周りを見る

本当に周りには、大きなドームばかりで、何があるのか全く分からない。

巨大なビルや、一軒家もちょくちょくあるのだが、基本はドームや球場が建てられている。


「試しにどんな競技があるか見てみる?」


ミシュの言葉に私は大きく頷いた。

この中途半端な思いでレース出るのは、嫌だと思ってはいるのだが、やはり興味はあるのだ。

見られるなら見てみたい。


「まずはこのドームには走るレースが主になってるよ!今は私達、視聴券持って無いから生では見れないけど……」


ミシューが隣にある黄色のテントに入っていく。

テントには大きなモニターが正面に見える。

どうやらここでレースを見ることが出来るらしい。


「凄い人にゃ……」


そうそのテントにはものすごいほどの人……いや種族が前の黒いモニターを見ている。


「始まったらあの画面にその時の様子が映るようになってるよ!」

「にゃるほど……」


私はその画面を知っている……そうまさしく、テレビと同じなのだ。そんなことを思っているうちに、画面に様子が映し出される。


「ちゃんと解説と実況もいてるにゃ」


私は思わず見入る。

画面にはいろんな種族だろうか……のレースの模様が映し出されていた。


「シャーリン!今日の見どころはね……1番から3番だね、まず1番のオーガ族のミレさん、元々走りに関してはトップの成績を出してる子でまぁ……とにかく早いことが特徴かな……2番のこの子はサイ族のミンさん、圧倒的な脚力で後ろから指してくるのを得意としていて……3番がウマ族のミリンさん!この子は初めからとてつもなく差を広げて勝つ戦法を得意としているよ!」


ミシュの説明の後テレビの実況者も似たようなことを話し出す。

実況者も前世の実況者と同じくらい、丁寧に今の状況を伝えてくれている。


「走り終わったら外に止まっている乗り物に乗ってコースを一周するんだよ」


そういえばここに入るときに、浮いている物体があったことに気づいてはいたが、ここで使うものだとは知らなかった。


「そうにゃんだ……ミシュは3人の中だと誰が勝つと思うにゃ?」


私はミシュの顔を見る。

ミシュは一瞬私の顔を見ると、深く考え込む。

正直分からなくて当然だとは思う……


「それは分からないよ……でも、それを予想するのも楽しいよ!」


そんな私たちの会話の間に、モニターでは、皆がトラックの上に歩いている状況だった。

ここの競技場もどうやら、私の世界の競技場と基本的には同じ作りをしているらしい。


「実況者もやっぱりこの3人の事すごく話してるにゃ」

「この3人は私と同じスラチオ中等教育訓練中学校卒業してるからね……」

「スラチオ……なんにゃ?」


私は首を曲げる。

また分からない単語が出てきた。

訓練中学校というくらいなので、恐らくは学校名だとは思うのだけど、確信は出来ない。


「スラチオ中等教育訓練学校はとても審査が難しくて……1100人毎年応募来るのだけど受かるのはたった10人なんだよ」


ミシュが詳しく説明をしてくれる。

つまりは超エリート学校を卒業した種族達ってことらしい。


「にしても観客がすごいにゃ……」


そうその会場には周り一面観客の応援が飛び交っていた


「皆もあの3人を見に来たんだと思うよ、ここの人たちもそうじゃないかな」

「にゃるほど……」


私はしばらく考え込んだ。


続きの説明では、ミシュはスラチオ中等教育訓練学校には推薦で入学し、今はそのままスラチオ高等教育訓練学校にこれもまた、推薦で入学することが決まっているらしい。なのでかなりの腕前は間違いないようだった。


「スカウト来るなんてすごいにゃ」


と私がモニターを見た瞬間、ちょうどレースがスタートした。


「始まったにゃ!」


そこから私は瞬きする間もなく、見入ってしまった。

色んな種族が走り、競い合うその光景はまるで、言葉にできないほど、凄まじいものだった。

私とミシュは叫んで応援しており、周りの観客も私たちの声援に負けないよう、応援していた。

そうして全員がゴールに走り込む。

無事全員がゴールできたらしい。

前世だと中には怪我をする人もいたからだ。

このレースを見て私からは一言。


「す……」

「す?」

「凄かったにゃ!!」


私は道の真ん中でミシュの手を握る。

ミシュも満更ではないらしい。


「あはは……確かにミリンさんのあの初手極大突き放し戦法を、終盤しかもかなり後ろの後続から一気に追い抜かし、1位を取ったミンさんはさすがのパワーとスピードだったね……あんなのミンさんにしかできないし……あと少しでレコードだったらしいし」

「そうにゃ!そうにゃ!あとミレさんもとても惜しかったにゃ!あともう少しで2位だったにゃ!」


私は目を輝かせる。

あそこまでの大接戦を見せられて、興奮するなという方が無理な話……

3種族しかいなかったとはいえ凄いレースだった。


「そうだねぇ……まぁあの3人って結構仲いいからまた対戦すると思うよ」


ミシュが笑う。

この関係もいいなと思った。

それはつまり、ライバルであり仲良しということ……


「良いなぁ……一緒に特訓できるのかにゃぁ」


私は妄想の中興奮していた

あの3人と一緒に走る……

それはどれだけ素晴らしい事なのか……


「じゃあ試しってことでレースに出てみる?」

「にゃ?」


私はミシュの方を見る。

いきなりのことで、一瞬びっくりしたのだが、出られるのならば、出てみたいという気持ちも少しだけあった。


「こっちに一般参加枠があるはずだからね。一応場所は決まってるいるけど誰でもレースには出場できるんだよ。まぁ……強い人と一緒に走ることになる可能性は否定できないけどね」


私はミシュに連れられ道を歩いて行った。

この世界に来ていきなりの初めてのレース……

どうなるかは分からないが、出るからには全力でやろう。

そう思うのだった。

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