4話 レース前調整にゃー


 私はとりあえず時間になるまで暇をつぶしミシュと一緒に会場の中に入っていく。


「はいはーい!選手の皆さんはこちらに集合してくださーい!」


とニリさんが奥の扉から手を振り現れた。

いよいよ時間ときが来た……

もう行くしかない。


「シャーリンちゃん行ってらっしゃい」

「行ってくるにゃ!」


私はミシュに手を振ると、ゆっくり扉の中に入っていった。


「結構長い廊下だにゃ……」


前には今回一緒に走る種族たちが歩いていた。

正直ものすごく強そうで、私は、足がすくんでしまう。


「ねぇ!君!当日出場者だよね!一緒に頑張ろうね!」

「うにゃあ!?」


私は後ろから茶色っぽい服を着た女の子に急に呼びかけられ思わず真上に飛び上がる。


「急にごめんね!私猿族のレムカ!私はこれで10回目のデビューレースだよ!初めてはなかなか勝てないから大変だよー?」


レムカが私に目配せをしてくる。

優しそうな人だったので、私たちは一緒に向かうことにした。

しばらく廊下を歩いていると上に上る階段を上がり外に出る。


「もうだれか先に走ってるにゃ」


私は目の前に走ってる青服の女の子を見る。

周りの人たちとは一際違う……まるで別格のようなオーラがにじみ出ていた。

私の本能が叫んでいる、あの種族はやばいと。


「あの人は……ロミさん!前回ルべリオン2級レースで1位になった人だね!」

「あの人が……」


レムカの言葉に私はロミの方に視線が行く。ロミの走りは流しているだけなんだろうがかなりの迫力があり私は思わず見とれてしまう。


「凄いにゃ……ん?」


私はそこに1人の女の子が歩いて行くのを見つけた。

第一印象は、体がすごく大きい。


「やはりここにいましたわね!ロミ!」


黄色いレース服を着た女の子は叫びながら、ロミを呼び止める。


「またですか?……エリ……何の用ですか?」

「やっとリベンジできますわ!前回のルべリオン2級レースでは僅差で負けてしまいましたので……ここであなたに必ず……勝って見せますわ!」


エリはそんなことを言うとそのまま離れていった。

どうやらライバル?的な関係らしい。


「なんか色々あるんだにゃぁ……」


私はその2種族の様子を見て、心の鼓動が大きくなっているように聞こえた。


「レースには絶対勝者と敗者が存在するから……良いライバルを持つのがいいって先生が言ってたね」


レムカが呟く。

確かにその通りで、良いライバル関係がなければ張り合いもないのだ。

正直私は楽しみにしているのだろう、強者たちが集っているこのレースのことを。


「にゃるほど……」

「皆さーん!それではウォーミングアップを始めてください!」


ニリが叫ぶと私の方に歩いてくる。

どうやらここから詳しい説明があるらしい。


「シャーリンさんは初めてなのでここの説明させていただきますね、まず今から、約2時間コースの下見や、ウォーミングアップの時間があるので、今のうちにコースの把握、軽くストレッチ、筋トレなどをして下さい。観客は今はまだ居ませんが、出走の1時間前に開放しますので一気に増えていきます。ですが気にせず走ったり準備体操をして下さい。時間が来れば番号が呼ばれますが、呼ばれる少し前には、この10番近くに待機していただけるとありがたいです。時計は今出てきた通路の壁にありますので。またレースが終われば色々説明をさせていただきます。今回は初めてですので楽しんで走ってくださいね!」

「分かったにゃ!」


私は大きく頷き、時計の方を見てから、そのままコースの中に入っていった。コースの中はゴム式で走りやすそうな感じになっている。周りを見ると、既にもう準備体操を終えて次々コースを走り始めていた。


「私も準備体操して一周だけ走ろうかにゃ」


私はその場で軽く準備体操をして、軽く走ってみた。

ゴムの道は走り慣れてないので、あまり良く分からない。

しかし、そんなことも言っていられないため、私はひたすら走ることにしたのだった。


一方その頃ロミは走りながら周りの偵察をしていた。


「なるほど……1番の人はスタートの練習……ということはスタートの調子が悪いということですか……スタートが出来れば私も危ないかもしれないですね……そして4番の……」

「ロミに勝つんですわあああ!」


とエリが叫びながら筋トレをしていた。

燃えている。それはもうだれも近寄れないくらい燃えていた。


「調子は見るまでも無さそうですね……」


その後ロミはこんな感じに偵察し続け……ついにシャーリンの所に目を移した。


「へぇ……意外とかなり体は柔らかいのね……けどいかにも初めてっていう感じが出てる……この長距離3350mどこまでついてこれるのか……まぁ今の私には関係無いですね……」


ロミはそんなことを呟きながらまた前を向いた。


「ふっ……ふっ……はぁ……」


私はコースをとりあえず走りきった。

まさかここまで疲れるとは思ってなくて、正直ミスしたと思っている。



「思った以上に疲れるにゃ……けど走れない距離ではないにゃ……あとは……本番に備えるしかないにゃ……」


私は伸びをした後また軽く筋トレに移った。

これからはとりあえず、このトレーニングを繰り返すことにした。

そうして、しばらく筋トレとスタート練習、ジョギングを繰り返しているとニリからの放送が流れる。


「それでは皆さんは番号の所に移動してください!」

「もうそんな時間……緊張するにゃ……」


私は一番右端の10番と書いてある線に立つと改めて人がたくさん見ていることに気づいた。


「全員ロミさん目当てにゃ?」


私は周りを見ていると、ロミさんらしき人が私の所へ歩いてきた。


「初めてのレースしっかり学びなさい」

「にゃ?」

「お互い良いレースにしましょう、勝っても負けても」


そういうとロミは一番のところまで歩いて行った。でも実はその言葉は私をさらに燃えさせることになる。

私は負けず嫌いなのだ。

負けてもと言われて燃えない私ではない。


「そこまで言われたら……私頑張るしかないにゃ」


私は真剣な顔で前を見つめた。

このレース絶対に勝つ!!

そう意気込んで。

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