第8話 二戦目のリベンジ合コン④

「先輩!席替えタイムってなんですか?」

マッス先輩に、俺は訳が分からないので質問する。


ここでは説明しにくいから、ちょっとこっちへ来いと、マッス先輩は俺を店の端まで連れて行く。他のメンバー達はどうしたのかなと、席を離れた俺達をチラリと見ている。


「マッス先輩、みんなに聞かれたらマズい事なんですか?」

半ば強引に連れて行かれた俺は、みんなの視線を気にしながらマッス先輩に訊ねる。


「あぁ、あの席には俺が狙っているフーコがいる。席替えタイムについて、あそこでは説明出来ない」

「そんなに、スゴい事なんですか?」


「あぁ。重要にして、スゴい事だ。お前は前回、酔っ払って寝ていたから知らないと思うが、ここからが合コン第二章だ。この席替えタイムで、女との関係が決まると言っても過言ではない!」


俺は思わず生唾を飲み込む。


「席替えタイムとは、文字通り席替えの時間が来たと言う事だ。つまり、狙っている相手の横に座れる時が来たと言う事だ!」


「はぁ・・・」

俺は、それだけの事かと少しガッカリして返事をする。そんな俺を見て、マッス先輩はやれやれという顔で話を続ける。


「まだまだ分かっていない様だな、サークよ!愚か者め!隣に座れると言う事は、どういうことなのか?それはつまり、ボディタッチが出来ると言う事なのだ!」


俺は思わず、ハッと言う声をあげる。好きな女の子に触れるだと、俺は事の重大さに気付かされる。


「何故、ボディタッチをする事が重要なのか?それは、ボディタッチをしても女に嫌がられなければ、それはつまり、その女はイケると言う事なのだ!」


俺は思わず鼻を押さえる。興奮して、鼻血が出そうだ。エロ過ぎる。エロ過ぎるぜ、席替えタイム。俺は、マッス先輩が席を離れた理由を理解した。


「しかし、もちろん逆もあるのだ。女の子に好感を持たれていないなら、触ると嫌がられ、距離を取られる。つまり、席替えタイムとは、狙っている女との親密度チェックの時間でもあるのだ。分かったか?」


俺は、なるほどと何度も頷く。マッス先輩は俺に手招きをし、俺達は再びみんなの席へと戻る。


 そして、席替えタイムが始まる・・・。


俺はもちろん、狙いのチリーの隣を奪おうと試みる。そして、チリーの左隣を確保する。ライバルのメンテはチリーの右隣だ。メンテの右側にチリーの仲間のドーアが座る。


俺の対面側は、俺の正面にマッス先輩、その隣にフーコが座っている。フーコの横には、ダフとジマが隣同士座っている。


俺は最終決戦だなと、ライバルのメンテを睨む。メンテも俺の方を睨み返す。こうして、チリー争奪戦の第二ラウンドが始まる。


俺は仕掛ける前にマッス先輩をお手本にしようと、正面の二人を観察する。


マッス先輩の腕とフーコの腕が、ピタッとくっついている。まるで磁石の様だ。俺はスゲエと興奮する。


フーコがもういやだぁと言って、マッス先輩の肩に軽く触れる。おぉっと、俺は思わず声が漏れそうになる。これがボディタッチ、親密度のバロメーターかと感激する。


俺も負けていられないなと、チリーの方を見る。すると、チリーが俺の視線を感じ、話し掛けて来る。


「あ、そうそう。あんた、ムーア大陸に行ってたんだよね?何しに行ってたんだよ?オリハルコンを取りにかな?」


彼女はいつかムーア大陸に行きたいのであろうか、俺はふとそんな風に感じ、正直に答える。


「大魔王チワンを倒しにだよ」

「え・・・」


また、場が凍りついた様に静まり返る。俺はまた何か失言しましたかと、不安に襲われる。


「え、いやいや。大魔王チワンの所に行ったら、さすがに生きて帰れないだろ?冗談にしては度が過ぎるぞ」


チリーは訝しそうな顔で俺を見る。俺は何も嘘は言っていない。そんな顔をされてもと戸惑う。


すると、メンテがニヤリと何か企んでいる様な、そんな嫌な笑顔を見せる。


「サークさん。貴方の嘘がバレてしまいましたね。ムーア大陸の話もオリハルコンの話も、全て嘘だったんですね?」


メンテが俺を見下した様な目で見てくる。俺はふざけるなと、奴を睨み付ける。

チリーの疑っている視線が痛い。俺は弁解する為に席を立つ。



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