第7話 二戦目のリベンジ合コン③
そんなドーアの変化も気にもせず、俺は葡萄ジュースをチビチビと飲む。すると、殺気めいた視線を感じる。俺は視線の矛先を探す。
視線を送っていたのはマッス先輩だ。俺のドーアに対する態度が気に食わなかった様だ。俺は先輩の意図を感じ取り、態度を改めようと考える。
少し反省の態度を見せて、うつむく。すると、チリーが自分の剣をかごの中から取り出す。そして、剣を鞘から抜き、回復士のメンテに、ご機嫌な顔で見せる。
「どうだ?これが私の自慢の武器だ。スゴいだろ?」
「え、あぁ、いい剣だね」
メンテは戸惑いながら、答える。俺は、こいつこの剣がどんな物か分かってないなと感じ、横槍を入れる。
「ショートソードじゃないですか?材質はミスリルですよね?」
「お、あんた、分かるのか?そうなんだ、軽くてよく斬れるんだ。私の体格にスゴく合ってるんだ」
チリーは俺に笑顔で答える。俺は流れが来たと、ここぞとばかりに会話を進める。
「チリーさんはタイプ的に、スピード型の剣士とお見受けしますが、剣術は何処で習ったんですか?」
「父に習ったんだ。父は昔、この国の騎士団長をしていて、スゴく強かったんだ。私の尊敬している師匠でもあるんだ」
チリーは懐かしそうに語る。俺は頷きながら聞いている。メンテの表情が険しくなっている。チリーの気持ちが俺の方に流れて行ってるのが悔しいのであろう。俺はしめしめと思いながら、チリーとの会話を深めていく。
「ところで、あんたの剣はどんなのを使ってるんだ?職業柄こういうのスゴく気になるんだ。見せて貰ってもいいか?」
チリーは、俺のかごに入っている剣の事が気になるらしい。剣術に関して、真面目に誠実に取り組んでるようだなと俺は感じる。
俺はかごから、柄の所にひよこのマークの付いた愛剣を取り出す。そして、それをチリーに渡す。チリーは重たそうに、両手で剣を落とさない様に持つ。
「重いな。抜いてもいいか?」
「うん、いいよ」
チリーは俺の剣を確かめる様に見てから、剣を鞘から抜く。刀身が光を反射して、眩しいばかりに輝いている。
「初めてこんな剣を見る。材質は何で出来ているんだ?」
「あ、それオリハルコンだよ」
「え、オリハルコンだって!嘘だろ?最高級品の材質じゃないか!何処でそんな物を手に入れたんだ?」
「ムーア大陸の洞窟にオリハルコンが落ちてたから、拾ったんだ。それを近くのドワーフの鍛冶屋に持ってって、剣を作って貰ったんだ」
「ムーア大陸だって?大魔王の城がある大陸じゃないか!最強クラスの魔物がウジャウジャ出る大陸だぞ!あんた、あの大陸に行った事があるのか?」
「うん、あるよ。つい最近まで、そこにいたよ」
俺は淡々と答える。そんなにスゴい事なのか、俺は綺麗な女の子にそんな風に言われるので、かなりいい気になる。
同席していた皆が驚いた顔で、俺の方を見る。マッス先輩は知っていたので、澄ました顔をしているが。
「あんた、ホントに強いんだな?いや、驚いたよ。見た感じ冒険初心者っぽかったからさ」
「え、そうなの?俺ってそんなに弱そうに見えるの?」
「あぁ、悪いけどムーア大陸に行ける程のレベルには全然見えない」
チリーの言葉に、俺は少しショックを受ける。だから、みんなから軽く見られてたのかとやっと気付く。
確かに防具も身に付けてない普段着だし、剣もひよこのマークが入ってるしなと、自分を客観的に見つめてみる。
「あんた、パーティーは誰と組んでるんだ?ムーア大陸に行ってるって事は、仲間もかなりのレベルなんだろ?」
「誰ともパーティーを組んでないよ。一人だよ」
俺は正直に答える。
「え・・・」
チリーが引いたような反応を見せる。
俺は不味い事を言ったのかと、自分の返答に不安を感じる。
「冗談は止めろよ。一人であの大魔王の膝元まで行ける訳ないだろ?分かったぞ。他のメンバーの事は内緒なんだろ?一人で合コンに来てるから」
チリーが笑いながら、突っ込んで来る。いや、本当なんだけどなと思いながら、俺は苦笑いして、その場を流す。
すると、存在が薄くなり始めていたメンテが口を開く。
「そろそろ、席替えタイムにしましょうか?」
俺はまた、知らない言葉に戸惑っていた。
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