第52話 名前は
たった今、人生で初めて俺は女の子に押し倒されている
「何してるのよソフィア・・さすがに危険よ・・・一目惚れは」
いや絶対そこじゃないだろ
「まぁソフィアなら大丈夫だろ」
突然の意味不明な行動に敵も困惑している・・何だこの女・・いや生き物は
「名前」
「俺の?」
ソフィアと名乗る女は壊れたおもちゃのように首を縦に振る。ナナさんの方を見ると呆れたような困惑したような表情でこっちを見ている
「スグルです。ってか最初に言った気が・・・」
「無駄よ、その子話もまともに聞けないから」
仲間にまでその様な言われ方をしているとは・・何となく分かるが可哀想になってきた
「スグル、ずっと一緒・・いい?」
「いや・・その・・・」
不本意ながら逆プロポーズを貰ってしまっている・・こういう子を相手に適切な返事は・・・下手なことを言ったらヤバそうな予感
「あーだる。戦う気失せたかなー」
え、ナナさん?急にどうしたの。休日の中年みたいなセリフになってるけど・・・
「賛成、私も。もともと戦う気無かったし。リアムはどうする」
「どうするって、財宝はどうするんだよ。俺お前らを運んでここまで連れてきたのに諦めろと」
「別にそういう意味で言ったわけじゃないし」
あれー?戦うどころか仲間割れが始まりそう・・ダンジョンってこういう場所なのか。それとさっきから──
「あのーそろそろどいて頂けないでしょうか」
ソフィアに体を押さえつけられているのだが、自力で抜けようにもびくともしない
「・・・」
あれ・・・無視なの?どうするんだよこれ。あの内輪揉めやめてこっち来てくれませんか。それとナナさんはどこへ?
「あっ!こんなところに宝箱かなー」
いつの間に大広間の奥の岩陰にある宝箱を発見していた。ナナさん、俺のことはスルーなのかい
「アリシアがうるさいから先に見つけられちまったじゃねーか」
「リアムが悪いんだよ、バーカ」
まだやってんのかよコイツら
「ごめんスグル・・」
慌てた顔をしたナナさんが遠くから走って駆け寄ってくる、やっと助けてくれるのか
「あの宝箱罠だったかなー」
「え」
ダンジョン内全体に轟音が鳴り響いた途端、およそ15メートル程の超巨大ゴーレムが天井を突き破り、地へと降臨する。異常な程の大きさに、この場に居合わせた全ての者が驚愕している。
「あんな大きさ見たことがないぞ」
「ソフィア、早く戻って来なさい」
はぁーい、と一つ返事でソフィアは自身のパーティーへと戻っていく
「スグル、あのデカさは尋常じゃない」
巨大ゴーレムはその大きさを忘れたかのような勢いでリアム達へと向かっていく
──高速移動──
リアムはとっさの判断でアリシアとソフィアを抱え巨大ゴーレムの突進を回避する。しかし、リアム達に向いていたヘイトがナナへと向かう
「えー、ちょちょ」
とっさに使った──封印鎖──でその動きを止めるも、すぐに解けてしまう
「やばっ──」
──高速移動──
リアムはスキルでナナを安全なところへ連れ出した。ナナがもともといた場所には大きな穴ができている
「敵に助けられるなんて屈辱だなー」
「そんなこと言っていられないだろ。これは」
「そうかも、共闘だね」
誰もがこの超巨大ゴーレムに危機感を持っている。この世界で多くの経験を積んできただけあって今が異常事態であることをスグルは感じていた
「ナナさん、あれをお願いします」
「それしかないかなー」
──九頭大蛇──
スグルの背に九つの龍が現れる。だがすぐにナナのスキルによってスグルの内側に抑え込まれる
俺のこのスキルは防御無視の必中攻撃だ。直接相手の生命を喰い散らかす
「ナナさん、カバーお願いします」
「オッケー」
ダンジョンのラスボスとの戦いが始まる
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