第45話 アナスタシア・クロウフォード
リオに連れられて魔王ロキに面会した。自分よりも大きな椅子に座り足を組んでいる。こちらに向けてとんでもない圧をかけていた
「やっと来たか奴隷」
開口一番が奴隷って・・・
「あのー要件は何ですか」
この後の初デートにも関わることだと恐る恐る話を聞く
「最近この国の近くでダンジョンが見つかった。ナナと2人で行ってこい」
ダンジョン?あのゲームによくある魔物やトラップの多いダンジョンのことだろうか。いやそんなことよりも、
「ちなみにいつですか?」
「今日」
はい終わったー
「拒否権は・・・」
「死にたいのか」
「いえ、行かせていただきます」
なんか予想通りの展開すぎる。ナナさんと一緒だから不幸中の幸いだろう。ただダンジョンとはいったい何なのだろうか
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ここはライン王国の北方に位置するノルン共和国。この国に王様は存在しない。主に商人と冒険者がこの国を支えている。その代表が冒険者組合である。ギルドはライン王国にもあるがノルン共和国が本部でありその他は支部となっている
「ギルドマスター、ライン王国から剣聖が面会を求めています。どうなさいますか?」
「事前に連絡は来ている。通してよい」
冒険者組合の長、ギルドマスターのモルス・ザックはこのノルン共和国の実権を握っていると言っても過言ではない。そのギルドマスターに面会を求め遥々隣国のライン王国から剣聖がやってきた
「モルスさん、今回は貴重な時間を割いていただきありがとうございます」
「お久しぶりぶりです。アリウス様」
以前モルスさんに会ったのは火炎龍の討伐以来か・・あの日以来この国に足を運ぶ機会もなかったな
「今回はどのようなご用件で」
「率直に言うと王国の傭兵としてA級以上の冒険者を雇いたい」
冒険者はここの組合本部と契約しており私的な理由で勝手に他と契約を結ぶことができない。常にこの冒険者組合を仲介に挟む必要がある
「そうですね・・是非とも協力したいのですが契約を結ぶかどうかは冒険者本人の意思が尊重されます。おそらくですが応じる者は少ないでしょう」
自由があるからこそ冒険者をやっている人がほとんどだ。王国に雇われて自由のない生活をしたい者などいない
「十分な報酬を検討できる。そう広めていただきたい」
「はい、分かりました」
「それと一つお願いがあります。吸血鬼城への偵察クエストを発注したい」
もし冒険者を雇うことができなくてもこのクエストで王国遠征隊の真相が分かる。この二つがライ王国での重要会議で決まった対策だ
「かしこまりました。すぐにクエストの発注をしましょう」
しかしこのクエストの発注が自国の首を絞めるとはこの時はまだ気づくこともできなかった
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魔族が支配している領域というのは比較的狭い範囲である。その他は無法地帯といって強力な魔獣の出現や未知の魔物といった謎の多き場所だ。冒険者はその無法地帯を開拓し新たな発見をする。それが冒険者の魅力であり生活基盤でもある
「ここのオークは全く美味しくないな」
とある女がオークの肉を焼いている。本来冒険者は複数で行動する。無法地帯で生きることができるのは一流の冒険者で長くても一週間が限度である。しかしその限界を超えていく猛者がいた
「そろそろ龍狩りでも始めようかな」
元S級冒険者のアナスタシア・クロウフォードは人間界での生活に飽き飽きし無法地帯に至福を求めた。そして今は巨大で強力な魔物が多いとされているフルーラ山で自給自足をしている
むしゃむしゃとオークの肉を食べる彼女の背に突然変異個体の大きなミノタウロスが忍び寄る。そのオークの手にはほかの冒険者が持っていただろう大斧が構えられていた
「丁度この肉には飽きてきたとこだし晩飯はコイツで決まりだな」
アナスタシアは背後の魔物の気配に気づく。だが振り返ることなくミノタウロスの振りかざした斧を片手で抑えそのまま放り投げた。もはや彼女の視野にミノタウロスを入れる必要などないようだ
「さあこい」
そう彼女は呟くと突進してきたミノタウロスの顔をぐしゃりと潰した。生命のやり取りに自信を置くことこそが真に生きることだと実感する。それが彼女にとってのエクスタシーである
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