第46話 アリス社長
カミヤ国ではエルフの魔王が襲来してから3日経った。大事件であったが幸い死者はおらずお互い様という形で事は終わった
重症を負ったカレンはようやく全快したがいつも通りの仕事はせずアリスの言う通りに休みを取ることにした。その間にカレンは趣味である料理に没頭していた
カレンが休んでいる間その穴を埋めたのはアリスだ。自身の仕事を最小限で終わらしせっせと部屋の掃除、庭の片づけ、洗濯料理などを終わらしていく
「ふぅ・・・やっと終わった。カレンを改めて凄いなと思う」
額の汗を振り払い窓の外を見ると日も暮れてしまっていた。すぐに自室へ戻り例の計画を進める
「アリスー?部屋に入るわよ」
ドアをノックする音とともにルミナが部屋に入る
「アリスに前に頼まれてた奴だけど・・・」
「上手くいったの?」
「うん。でも条件付きだってさ」
以前ルミナに頼んでいた事それは不死者の大王カザリスとの同盟である。ライン王国の襲撃から私達の国カミヤの軍備拡大を余儀なくされた。その襲撃が少数部隊だったから防げたのであり戦争になれば大変なことになる。だから同盟が必要だ。とここまでがルミナに説明した内容である
「条件って?」
「人間の死体を定期的に捧げろと」
「へーまだ必要なの」
そう、ライン王国の遠征隊を壊滅させた時、全ての死体を集めて献上した。その中には王国騎士団長の死体もあり喜んだようだ
「それで、アリスはいつライン王国に仕掛ける気なの?」
「まだかな、いろいろバタバタしてるし」
実際にまだできないのはマリとレナの報告が来てないからだ。情報が入り次第行動に移そうと考えている
「ふーん、じゃあ私はこの後カレンに会議の内容をまとめてもらうから」
「はーい」
ルミナはイビルスで行われた会議の重要事項をまとめるためカレンに会いに行くようだ。カレンが読み書きのできる優秀な子で助かった
「さーて、アリスは少し外出しようかな」
部屋に誰もいないことを確認する。自身の力を知られては困るからだ
──空間移動──
虚空に裂け目ができる。これは魔王ロキの配下であるリオのスキルだ
「法則が分かれば簡単だね」
ひょいっと亜空間に入り込む。移動した場所はノルン共和国にある商業が盛んな地域だ
「ウゥっ...まだ少し慣れないなぁ」
初めてこの技を使った時には二回くらい吐いた。今回この国に来たのは三回目のとなる
ファンタジー世界ではあまりにも不自然なガラス張りの建物の前に来る。そしていつものように入口へ進む
「いらっしゃいませ、ようこ──あっ、失礼いたしました。アリス社長」
「気にしなくていいよ」
フロントの女性従業員はアリスをお客様と勘違いする。実はアリスはこの企業、ニーホンの社長だ。とはいってもまだ四階建ての小さな事務所である。そしてこの四階にある一室がアリスの社長室だ
「いやー便利だね」
階段を上らずともこのエレベーターですぐに4階についてしまう。やっぱり技術力って重要だよね
エレベーターを降り一番奥の社長室に入る。部屋にはこの世界に存在しないあらゆる文明の利器がある。正直住み心地はカミヤよりもここの方が良いかもしれない
「いやーこの椅子はいいね。偉くなったみたい」
自作で作った社長が座るようなかっこいい椅子だ。この椅子に座って事務的なことをしている
「それにしても・・・」
案外商業の世界で成功するって大変なんだなぁ。城のリフォームを終えてから空いた時間でこの国に来て会社を設立した。普段は副社長のマリにここの経営を任せている。そのためほとんど来ていないアリスの顔を覚える従業員は少ない
「「お久しぶりです。アリス様」」
「ここでは社長と呼んでくださいね」
自身の主が来たことを知り急いで参上したようだ
「「はい、社長」」
マリは本当は殺し屋ではなく普通の仕事がしたかったようだ。なのでこの企業の副社長に命じたときは飛んで喜んでいた
「それで王国の動きは?」
「はい予想通りの行動を」
それじゃあ進めようかな。机の引き出しにしまっていた例の書状をレナに預ける
「レナちゃんこれをカミヤ国の使者として渡してきて」
「はい」
レナは書状を受け取り王国へと向かった
「マリちゃん今月の売り上げはどうなの?」
「すこしずつですが右肩上がりとなっています」
「さっすがあ」
アリスは提案をするだけで実務はすべてマリに任せている。だからこの功績もすべてマリの成果と言っても過言ではない
「ですが・・・」
「どうしたの?」
「少し、妨害や嫌がらせなどがありまして・・・」
この成功を妬む商人も少なからずいるのだろう。しかしこれは成功している何よりの証拠でもあり想定内のことである
「まあ、やばいと思ったら呼んでね」
「はい。かしこまりました」
進めてきたあらゆる計画が順調に進んでいることを確認し終わるとアリスは再びカミヤ国へと戻る
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