第38話 ナナさん?

屋敷をこっそり抜けて二人でブラブラと出かけている。とりあえず部屋にいてもやることがなかったので外の空気を吸いにきた


「あのーナナさん。俺、外に出てよかったんですか」


「その魔道具を着ていれば大丈夫だよー」


今、俺が着ているこの服は視覚阻害の機能があるそうだ。人間であることは周りには分からない。いやいや、そういう意味じゃなくて


「勝手に出て怒られないの」


ギクっとナナは身震いする


「なんとか・・・なるょー」


「なんとかならないやつだよ。それ」


ビクビクしながらも2人でこの街を散策した。龍人と言っても見た目はほぼ人間で翼が生えてることくらいしか違いはない。しかも折りたたむこともできるので、人間と言われても俺には区別できないだろう


「ナナさんは普段なにをされているんですか」


「私は・・そうですね・・この街の治安維持とか・・・ですかね」


ナナさんは戦うようには見えないけどやっぱり強いのか。ん〜想像できないな


「あの、ちなみにどちらに向かっているんですか」


「人気のない場所だよー」


女の子に人気のない場所へと連れられる。あっ・・ま・まさかこの展開は


ナナに手を引かれ森の中へずんずん進んで行く。そして小屋が一軒ぽつんとある大広間に辿り着いた


「あの・・ナナさん・・これって・・・」


「スグル、私と・・」


「はい」


「手合わせお願いだよー」


「はい・・・ってえええええええええ」


何でやねん。いや、俺が勝手に想像してただけか。何やってんの俺、ほんとこの場から消えたい


「スグル、ここに来て暴れた時のやつもう一回できるかなー」


「え、何のことですか」


「君の持っているスキル 九頭大蛇だよー」


九頭大蛇?俺がこの国に来て、瞬間移動で気持ち悪くて気を失って、起きたらベッドの上で・・・っていったい何の話をしてるんだ


「ほんとに分からないです」


「えーーーーーーー」


そんなに残念がることなの。いや、本当に申し訳ない。九頭大蛇か・・でも、なんとなく分かるような・・・


「スグル、目を瞑ってじっとしてて」


えっ、ちょっと・・な・なにこの展開は・・・


「ドヒャーーー」


手が胸に触れたと思いきや、全身に電気のようなものが駆け巡る


「何するんですか」


「ごめんね、少し魔力が凝り固まってたから活性化させたの」


あーそういえば俺、魔力あったのか。ってな・なんだこれ背中が妙に熱い


「あ、いい感じかも〜」


「何が・・ってえええええ」


俺の背に龍がいるんですけど


「やばい・・意識が・・・」


なんだこれ、精神が削ぎ落とされるような


「まずい予感が・・ナナさん・・逃げて」


「このタイミングうー」


ナナの手がもう一度スグルの胸に触れる。鎖で縛りつけられるような感覚に襲われた


「え?」


あれ、なんか普通になってる・・・ナナさんが助けてくれたのか


「ねぇスグル、今自分が強くなった感じしないかなー」


「体の中のモヤが全身に回ってるけど・・体が軽い・・・」


なんだこの感覚。全身に上手く力が入るような


「よし、大成功だよー」


「なんだか分からないけどやったー!」


「「イエーイ」」


二人でガッツポーズを決めた




この後俺とナナさんは森の中を駆け回って遊んでいた。私に捕まったら負けねーと言いナナさんは俺を追いかける


なんだここは、楽園か。女の子に一度くらいは追いかけられたいと思ってたけど・・・やっぱりいいなあ


「スグル捕まえちゃうぞおー」


ナナは猿のように木を上手くわたる。このまま捕まってしまっては楽しい時間が終わると自分に言い聞かせ全力で逃げる。だがその楽しい時間もとうとう──


「スグル、捕まえ─────」


「おいナナ」


「ひゃいーーーー」


スグルを捕まえようとしたナナのさらに後ろにいたのは魔王ロキとリオだ。ロキは誰が見ても明らかなくらいに激昂している


「勝手なことするな」


「ごめんなしゃい」


あの天真爛漫なさナナさんが・・・


「あの、初めまして。俺スグルって言います」


「は?ふざけてるのか奴隷」


え、何で初対面で奴隷扱いなの。あと俺はいたって真面目なんですけど


「ロキ様、スグルは記憶が飛んでるんだよー」


ロキ様って確かこの国の魔王・・・いや魔王なの!俺この小学生みたいな子が・・・


魔王ロキはナナの首根っこを掴み城へと戻る。ルミナもスグルのことを迎えに来ていたようで、元気なスグルに少し安心していた


「ほんと元気でよかった」


「ルミナ心配かけたな」


この感じだともう会議は終わったみたいだな


「あのね・・・スグル」


「うん」


今の間はなんだ・・・この悪い予感は・・・


「スグルだけ少しこの国で生活してもらうことになったの」


「は」


ええええええええええええ

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