第36話 狂乱
虚空に突如として裂け目ができる。その裂け目から現れたのはすらっとした長身の男だ
「ロキ様のご命令でお迎えに参りました。ルミナ様お久しぶりでございます」
「久しぶりだね、リオ」
ルミナはリオという男と軽い挨拶を交わした。昔からの知り合いのようだ
「俺はスグルって言います。よろしくお願いします」
「はい、私はリオです。よろしくお願いします」
案外人間に優しいのか?人間と魔族は犬猿の仲であると聞いただけあって、このリオという男の立ち振る舞いには驚きを隠せない
「早速ですが、時間も無いので参りましょう」
と言ってリオは空間に歪みのようなスペースを作る
「このヤバそうな穴の中に入るのか・・・」
某アニメの引き出しの中に入る感覚なのだろうか
「スグル、絶対に私から離れないでね。さもないと死ぬわよ」
「ああ、分かってる」
人間を快く思ってない者しかいない。今から向かう場所は生半可な気持ちで行くところではない
「じゃあ掴まって」
「え」
うおおおおおおおおおおお
「はぁ・・はぁ・ちょっ・・と・・・うそ・・だ・・・オエッ」
やばいやばい気持ち悪い。一瞬で移動したけどなんだこの脳みそがぐちゃぐちゃになるかのような感覚は・・・
「最初はみんなそうよ」
「ルミナさん、先に言ってくれよ」
でも、もう大丈夫だな。少しずつ落ち着いてきた。ここは町の中心地なのかな。周りがやたらと騒がしいんだけど・・・
「ところで何?この状況は」
武器を持った翼の生えた人?いや、これが龍人か
「辞めなさい。彼らは来賓です」
「関係ねぇだろ。そいつから人間の臭いがするんだよ」
あ、俺が原因だ
スグルを囲むイビルスの民衆は今にも襲い掛かろうとしている
「スグル、何も喋らないでね」
お、うん
でもこの状況どうするのだろう。続々と集まり出している
「道を開けろ」
周囲に恐ろしい程の殺気を放ちながらこちらへと向かってくる
「ロキ様、わざわざ御足労感謝します」
ロキ様?あの少年が魔王なのか。オーラ以外は小学生の間違えだろ
「リオ、ここはもう良い。他の魔王の所に向かえ」
「はっ」
今気づいたけど全員がひれ伏している。さすがは国のトップ。この展開は読めたぞ。皆のもの、この人間は私の親友であり手出しは許さん的なことを言ってくれるに違いない
さあこい、俺を助けてくr──
「え」
腹に激痛が走る。今殴られたのか・・・
「人間風情が」
少年は終始、睨むような目つきで見下している
「ちょっとロキ、私の仲間に何してくれてんの」
「奴隷の間違えだろ」
助けてくれるんじゃねーのかよ。てっきりリオさんが良い人だからその主人も・・・
「あんた私とやる気?」
「いやちょっと待てよ」
ものすごく痛かった。痛いのは嫌いなんだよ。言いつけ守って大人しくしてたのに・・・仲良くしようとした相手に初対面で殴られるとか・・・
「スグルあんた」
「スグル様お待ちください」
ルミナと師匠は必至にスグルを抑えようとするが、力で押し切られてしまう。そしてロキに向かって走り出した
「魔王だかなんだか知らねーけど、調子乗んなクソガキ」
「ルミナ、この奴隷殺すわ」
少年は突如として背中に折りたたんでいた黒い翼を広げる
「やってみろや」
さっきの一発といい、このガキの動作は全く見えない。だったら──
「目を瞑って俺と戦う気か」
「小学生相手にハンデなしじゃ可哀想だろ」
「意味が分からないが、バカにしてることだけは伝わった」
スグルは目を閉じて相手に突っ込んでいく。しかしロキは軽々とそれをよけた
「当たらねーよ奴隷。早く目を開けな」
しかし、スグルは目を開けない。ただひたすらに突っ込む。それを見ていたルミナはスグルの異変に気付く
「奴隷、もう終わりか」
ロキは相手の単調な攻撃に飽き飽きし止めを刺そうと動き出した
「沈めてやるよ」
「*$#%&%$#%&%@#$@・・・・」
突然スグルは何か言葉を発する。それと同時に動きが停止する
──
「なんなのアレ」
スグルの背には九つの首を持った龍が顕現する。その周りにはこの世の執念であるかのようなドス黒い何かを纏っている
「周りの者は避難しろ」
「スグル、何やってんの。しっかりして」
現れた龍は周りの建物を次々に破壊していく。無差別に・・・無慈悲に・・・すべてを壊していく
スグルの自我はもうない
「俺に任せろ」
─青龍拳─
魔王ロキは理性を失ったスグルを地に叩きつけ、同時に地面が大きく割れる。地響きとともに九つの頭を持つ龍は消え失せた
「スグルっ、大丈夫なの?」
しかしスグルの反応はない
「気絶してるだけだ」
魔王ロキはスグルを抱えた
「ルミナ、この奴隷を連れてそのまま会議に行くぞ」
「はぁ、後でちゃんと説明してよね」
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