第22話 不死鳥

「カレン、早く逃げるぞ」


兄貴が作ってくれたこの時間を無駄にしてはだめだ


「ファイアーボール」


ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール・・・


迫りくる敵を魔法で退けていく。今にも魔力が尽きそうだけど、そんなんじゃカレンを助けられない


「レオにい、私たちはどこに向かえばいいの」


「兄貴の妹、アリスさんをまず探す、特徴は聞いているからその人に助けを求めろって」


アリスさんのところに行けば・・何とか


「レオにい、どうしたの。しっかりして」


魔力の使い過ぎだ・・でも走らないと―


「あっ―」


「ラッキー、コイツを捕まえれば俺も出世できるぜ」


兵士の一人とばったり出会わせてしまう


もう魔法は使えない。だったら


「おらあああああああ」


「残念、そんなリーチの短い剣じゃ先に死ぬのはお前だよ」


俺が死んでもこいつだけは殺してカレンを逃がさないと―


「コイツ刺されてんのに俺と刺し違えに来ただと・・」


兵士の剣はレオの心臓を貫く。そしてレオの短剣は敵の腹に浅く刺さった


「お兄ちゃん、やだよ、死んじゃいや」


レオはぐったりとその場に倒れる


殺しきれなかった・・でも、カレンが逃げきれるくらいの深手を―


「ガキがっ、ふざけやがって。死ねええええ」


兵士は思い切り剣を振りかざす。しかし──


「えっ、首が・・・」


敵の首が地面に落ちていく。誰かが倒してくれたのか。もしかして兄貴が・・・よかったこれで―






お兄ちゃん、どこかなあ第三王子の屋敷はこの先だったはず―


「あれっ、お兄ちゃんの弟子じゃん」


でもお兄ちゃんがいないんだけど・・・


「二人を先に保護しないとね」


今回の事件の発端のマルクス王子調べて分かったのが、不老不死のスキル『不死鳥』の奪取のようだ。そもそもこの事件の前に、この子のたちの親からスキルを奪おうとして失敗したとか


「お弟子君、ちょっと待って・・」


兵士に向かって無謀にも突っ込んでいく


あっ、間に合わない


「レオにい、起きてよ、ねえ、ねえってば」


敵の首は落とせたが、お弟子君は少しまずい状況だ


「ごめんね、少しどいてもらえる」


まだ脈はある。ただ私の回復魔法じゃこの傷は・・・


「レオにい、私の不死鳥あげるよ、だから生きてよ・・」


その手があったのか。なら―


「だ、だめだ・・カレン、そしたらカレンが・・」


途切れ途切れにレオが言葉を発する


どういうこと、この子がスキルを貰うことを拒否している。待ってアリス、調べたことを思い出しなさい


「でも、レオにいが助からないよ」


そういうことね。カレンはもともと持病持ちなのか・・それも不治の病


「カレンだけでも幸せになってくれ」


「ちょっと待って、アリスその言葉は嫌いだよ」


お弟子君の命はあと持って一分・・アリスにとっては十分すぎる時間ね。


「カレン、お兄ちゃんを助けたいなら一生懸命応援してあげて。あとはアリスが何とかするから」


「うん」


強い子だね。じゃあ今日手に入れた知識もすべて含め、すべての知識から検索をかけてみる。魔法の根本。魂とは何か。医療、科学技術・・助けられる方法は


「カレン、あなた回復魔法は使えないの」


「できないの」


―不死鳥を持つものが世界の傷を癒す・・我が人生の―


歴史書の記述が正しいのなら


「カレンちゃん、私が今から回復魔法を教えるから、それでお弟子君を救って」


「うんっ、分かったの」


本来、魔導書が必要だけど私の中には内容はすべて詰まっている


回復ヒール


癒しの火が傷口をゆっくりと元通りにしていく。術者はまるで炎の翼を生やした天使のようだ


「レオにい、大丈夫?」


「うん、カレンのおかげだよ」


とっさだったから焦ったけど、上手くいってよかった。あとはお兄ちゃんを連れ戻さないと

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