第16話 絶対防御

第三王子の住む王宮前まで来たけどどうしよう。熱くなって何も考えずにここまで来てしまった。冷静に考えれば俺そんな強くないし、もしルミナみたいな強いやつが出てきたら終わりだ


「兄貴、ここからどうしますか」


事は一刻を争う


「とりあえず、警護の薄いところから・・」


いや、門以外だとあの高い塀を・・無理だな。やっぱり正面突破しかないか


王国という大きな敵と戦うなどスグルにとっては初めてのことだ。何から始めていいのか分からず混乱してしまう


「レオ、お前は魔法が使えるのか」


「俺の一族は、火の魔法を得意としています。でも俺は魔力量が少ないので連発はできません」


一方、俺は魔法は使えず近接戦闘しかない。敵と対峙する場合は、俺が前衛、レオが後衛だな。でもそんなことより、どう侵入しようか


「兄貴、見てください。ライン監獄から煙が上がっています」


少し離れたところで騒ぎがおきているようだ


「さっきから少し騒がしいと思ったら、他にも王国を楯突く馬鹿ががいるとはな」


なかでも極悪な囚人が収監されていると言われるライン監獄で事件・・そっちに意識が向くから、今がチャンスだろ


「騒ぎが大きいうちに、これに乗じてレオの妹を取り戻すぞ」


「はい」


まずは入口の二人からやるぞ


スグルは門番に向かって走り出す


「オラああああ」


「兄貴、ワイルドすぎです」


油断していたので二人とも一発KOだった。


「ここからは王宮を詳しく知ってるレオに任せる」


「分かりました」


警護している兵士はやはり少なく、短剣や素手を使ってんなんとか倒した。攻撃が間に合わない敵は、レオのファイアーボールでサポートしてもらう。


「レオ、ナイス」


「兄貴もさすがです」


「このまま乗り込むぞ」


思いの外、初めてとは思えないほど順調に進んだ。誰かが背後でサポートをしているかのように


調子いいぞ。このまま―


「おお、ターゲットのレオ君がわざわざ来てくれるなんて」


やはり、物事はそう簡単にいくものではないようだ


正面に、周りの兵士とは少し雰囲気の違う男が立ち塞がってきた。


「レオ、あいつお前の知り合いか」


「兄貴、あいつは第三王子、マルクスの護衛隊長です」


護衛隊長かよ、絶対強いやん。あと少しだってのにピンチか・・・


相手は装備をせず、身軽そうである


「マルクス様、だろレオ。お前は少し教育しなきゃダメだな」


敵がレオを狙ってきそうなので、敵とレオの間にスグルが割り込む


ああ、もうやってやるよ。ここまで来て引けるわけねー


「私はテスター・マルチンス、テスターとお呼びください。今からあなたを殺す者の名前です」


「あっそうですか」


スグルは名を名乗らずファイティングポーズを構える


相手は剣士か、なら俺はこの短剣でやってやるぜ。


「では、参ります」


テスターは剣を抜きまっすぐにスグルへと向かう


やはり、ほかの兵士と違ってテスターってやつなかなか剣筋がいいな


「なかなかやりますね」


「そっちこそ」


でも技術は俺のほうが格上。これは勝った―


「取ったああああ」


技術の差でスグルはテスターの剣を払い短刀ですかさず首を狙う


これはさすがに致命傷だろ


「えっ」


なぜかスグルの短剣はテスターの首に刺さらない


俺が切られている・・・痛い・・


「さすがだよ。技術も、切られて悲鳴を上げない根性も私より上回ってる。でも私が持つスキル──絶対防御──私はマルクス様の最強の盾だ」


スキル持ち・・俺の攻撃が効かないのはやばいな


「兄貴から離れろ、ファイアーボール」


「ちっ」


魔法は受けずによけた。物理攻撃だけが無効なのか。もしそうなら、いや・・もうだめだ


出血のせいでスグルの思考は停止する。


「レオ、次はお前だ」


「ちょっと待てよ、俺はまだ戦えるぜ」


もう考えるのはやめだ。俺は頭脳はじゃねーんだ

 

アドレナリンが出てるのか、もう痛みはない。ただ俺の頭の中にある冷静に考えれる部分がプチンっ、と切れてしまった。


「あーもうやめた。こんなもんいらねーよ、ぶっ殺す」


スグルは短剣を地面に捨てる


「剣士に素手で戦うとは、とうとう壊れてしまったか。可哀そうだから生かしてあげようと思ったのに。次は確実に殺すよ」


「構わねえ、二回戦目と行こうか」


胸の奥にあるドロドロとした黒いものが外へと出ようとしている。そして全身を駆け巡った


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