第20夜 正義の暗躍
「それで寿々音が崖の下に落ちちゃって」
「え、それどうなったんだい?」
「それが目標の
ゴーンゴーン
冥朗と話していると何処からともなく鐘の音が白い空間に響く。
「えぇ、もう時間なのかぁ。寂しいなぁ」
「……春夢はこちら側には来れないの?」
「あー、残念ながら無理だね。私は精神的存在だからね、冥朗の記憶を覗いている本の虫だとでも思ってくれたまえ」
「そっか、……また来るよ」
「うん、また新しい話を聞かせてね」
僕と手を振ってその場から泡のように消える冥朗を見送ってから椅子に座り直す。
「さて、と……。そろそろ出てきても良いんじゃないかい?とある未来の水朗くん」
春夢の言葉に反応したように左目に眼帯をして、痩せ細った水朗が姿を現す。
「……冥朗の精神状況は?」
「うーん、とても良いとは言いがたいな」
「そうか」
水朗は冥朗の座っていた椅子に腰掛け、何もない上を見上げる。
「本当に冥朗に執着するねぇ、…………一応は言っておくけど大事な妹を傷付けようとするなら絶対にお前だろうと赦さないからな」
「……そこはしっかりと弁えてるよ、天朗」
緊迫した空気が辺りを凍らせる。天朗は静かに着けていた仮面を外した。
「天朗こそ冥朗に執着しているんじゃないか?」
「いやいや、それを言ったら幼馴染み全員が冥朗に執着してるよ」
「……それもそうか。今の水朗が気付けば良いのだが、一番の敵はもう既に見えていることに」
「何を喋ってらっしゃるのです?」
「「?!」」
机の真ん中に降り立つ一人の女性。天朗は椅子から立ち上がり、華麗にお辞儀をする。
「お久しゅうございます、■様」
「もっと気楽に接してもらって良いですよ、僕に遠慮は入りません」
「ですが……」
「僕たちは同じ血を分けあった、家族ではないですか。大事な妹にそんな態度を取られると、お姉ちゃん悲しいです」
「…………分かった、■お姉ちゃん」
「それでよろしいのです」
フフン、と自慢げな■。
「……天朗、お前が負けるとは珍しいな」
「仕方ないじゃないか、■s……お姉ちゃんは初代なんだから。私たちにとっては目指すべきだった到達地点、成功例」
「僕は成功なんかじゃありませんよ。結局は死んじゃいましたからね。駄目駄目、こんな人生……」
「駄目なんかじゃない……」
「ちなみに言っておくけど、僕が死んだ本当の真犯人は君たちの想像と違うと思いますよ」
■は何か見えているような、哀しそうな表情を浮かべた。これから起きることが分かっているように……。
「これから冥朗ちゃんには辛いことが沢山待っている、それをきちんと支えてあげなさい天朗。貴方なら出来ます」
「……はい!」
「水朗くんもみんなを正しい方向へ導いてあげて、誰かが道を外れそうになったら手遅れじゃなければ連れ戻してあげてね」
「あぁ……」
「よし、さぁーて。僕は封印に戻ります、警戒は怠らないように」
「「了解」」
三人は違う方向へ歩いていった。それぞれの役目を果たしに、大事なものを守るために。
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