第18夜 過去語り Ⅱ
時雨は冥に連れられて滝の側に来ていた。冥が岩に腰を下ろすと、時雨も続くように腰を下ろす。
「……時雨、お前もある意味は特殊な育ちだっただろう」
「まぁ、そうやな。兄弟殺しなんて当たり前、生き残ったものだけが後継者候補になれる弱肉強食の社会やったな……」
時雨が思い出す強く記憶の中にあるのは死んでいった兄弟たちの顔……なんて覚えているはずもなく、あったのは心を必死に押し殺して生きることに必死だった自分と、山賊のときに出会った冥朗の姿だった。
「兄弟殺し、か……」
冥はおかしそうにクツクツと笑い始めた。
「何がおかしいん?」
「いや、お前は冥朗と真反対なんだなと思っただけだ」
「……どういうことや」
「そうだな、…………お前と真反対というところは冥朗は"死にたがっている"ということだろうな」
時雨は息を呑む。
「そうだな、お前が言った兄弟、いや家族殺しも冥朗は既に体験済みだ」
「家族、殺し……」
「冥朗は物心……意識がはっきりする前から
「そ、れは……」
「そう、実験体だ。冥朗は実験体として生まれ、育った。……信じられないか?」
「……」
「ならば冥朗の許可をとって背中を見せてもらえ、
「でも今は普通に生活して……」
「師がいたのだよ」
「それ、は……」
「そう、ボーオ村が滅ぼされたときに殺された天朗だ」
時雨は到底その真実を信じられなかった。実験体として人型の生物を扱うことは人権侵害にあたるとしてご
「天朗は冥朗に色々なことを教えた。天朗は師であり、冥朗の名付け親でもある」
「天朗はんは冥朗と1歳差じゃ……?」
「……実験体たちは番号で呼ばれていた、実験体527番……それが冥朗の番号だ」
「ちょい待ち、
冥朗が実験体として扱われていて、死にたがっていて……。あまりの情報の多さに時雨は
「ん、天朗はんが名付け親っちゅうなら冥朗の本当の親はどうしたん?」
「冥朗に親はいない、……冥朗はある昔に存在したホムンクルスのクローンだ」
冥は懐かしむように目を細める。ホムンクルス……
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