第6.5夜 ある提案 Ⅱ
「さて、ではどこからお話ししましょうか。僕としてはこの仕事に就いた経緯までお話ししたいところですが……」
僕は冥朗さんを向かい側の席に座らせてから自分も着席する。
「御託は良い、さっさと話せ」
「おやおや、僕と話すのは嫌ですか?」
「話だけ聞いて有用な情報じゃなければ時間が無駄になっただけ、と言っておこう」
冥朗さんは僕の事を嫌いなようです。そして恐らくこれからもっと嫌われるでしょう。なんせ今から冥朗さんの幼馴染みの皆さんにも隠している、トラウマに触れるのですから。
「約七年前に水朗皇子らが洪水により別邸へ行くのを阻まれ、それを貴方が見つけましたね。僕はその時、現国王に水朗皇子の裏護衛を任されていました」
「でもお前は見かけなかった」
「あぁ、それは隠れていたんですよ。認識阻害魔法です」
「あの時に感じた違和感はそれか」
「おや、気付いていたんですか?」
「何か魔力の流れが変だと思っただけだ」
僕の魔法の気配に気付いていた、か。黒潜はこれほどまでに驚いたことはない。何故なら、黒潜はこの国随一の黒魔術師であるがためだ。そんな黒潜の魔法を見破るなんて至難の技だ、それをまだ七歳だった子供が成し遂げた。これ以上に驚くことがあるだろうか。
「まぁ話を続けます。ボーオ村に水朗皇子が滞在する事が決定したとき、あいつらは動き始めました」
「あいつら、とは?」
「まぁ大体見当はついているでしょう?」
「…………」
「現国王の秘書、アルイゼン・バッカーマです」
アルイゼン・バッカーマ……この男はメンティー学園を首席で卒業し、現在の地位を確立するまで一年も掛からなかった秀才。現国王を操ってると言っても過言ではない人物である。
「おおよそボーオ村という存在はバッカーマの目的に邪魔だったのでしょうね」
「……そいつの目的は?」
「簡単です。国家転覆ですよ」
「は?」
「おやおや、ではまずバッカーマの生い立ちについて説明しましょうか。アルイゼン・バッカーマはこの国のスラム街、マルガン区育ちです」
「……マルガン区」
マルガン区、この国の汚点と呼ばれているスラム街の一つ。前までは無法地帯と化し、密輸、人身売買などの不法行為の絶好の場所となっていた。そんなマルガン区を数年前、咲真家の透さん(でしたっけ?)が区の管理を引き受け、かなり改善させてきましたっけ。お陰で餓死者も減ったとか。
「スラム街育ちだったバッカーマ氏ですが、彼は元々この国の住人ではありません」
「……まさか」
「そう、彼はインバシオン王国の貴族だったのです」
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