第6夜 剣術大会 Ⅷ

闘技場の日向へと足を踏み入れる。実況が何やら変なことを口走っていたが気にしないこととしよう。闘技場の中心部には僕の対戦相手の朔が立っており、こちらを見定めるかのような視線を向けていた。今更だが剣術大会のルール確認をしておこう。

一・この試合に時間制限は存在せず、決着がつく、もしくはどちらかが降参するまで試合を続行せよ。二・この試合会場において選手以外の入場は禁ずる。観客が入れるのは観客席のみとする。三・この試合おいて反則行為はドーピング、または外部の人間の介入とする。それ以外の反則行為は審判が判断するものとする。四・選手はメンティー学園から支給されている制服を身に着け、剣も支給されたものだけを使用するべし。五・闘技場を全壊させうる攻撃は禁止する。六・試合会場以外の生命体への殺傷及び、害をなす行動は禁止する。七・メンティー学園内に存在するシー塔への立ち入りは禁ずる。この七つが剣術大会の絶対的なルールである。ちなみにシー塔というのはメンティー学園の敷地内、西側の端に存在する古びた塔のことである。あまりにも不気味なため生徒、教員さえ近づこうとしない。シー塔は、あの塔に立ち入った者は冥府に連れていかれる、というこの学園の七不思議のひとつの舞台でもあるのだ。


「さあ、やっと登場して頂きました!メンティー学園の一等星、常に輝き続ける我らの絶対的王者、冥朗選手!!!」

「いやああぁー!!!冥朗先輩かっこいいー!!」


観客席から五月蝿いほどの歓声が聞こえてくる。その歓声をよそに僕は着々と朔がいる方へ足を進めていた。こんなに盛り上がらなくてもいいのに……、そう思いながらも少しだけ嬉しいと思う気持ちが僕の中にはあった。


「さて、それでは冥朗選手、観客の皆様に何か一言ありますでしょうか」

「えーと、そうですね……」


しばらく考えた結果、これしか出てこなかった。カメラ目線でにこっと微笑んで、


「頑張ったらご褒美に、たこ焼き食べたいなぁ」


その言葉を聞いて冥朗ファンクラブの会員が卒倒し、保健室が満員になったことは言うまでもないだろう。


「たこ焼きですか……、ちなみに冥朗先輩は何派ですか?」

「ノーマルですね」

「おっと、敵勢力でありましたか。にしても朔先輩さっきから抱腹絶倒してるように見えますけど大丈夫です?」

「……大丈夫なわけないだろう」


ゆっくりと立ち上がる朔は顔を手で覆い隠して、肩を震わしていた。


「ちょっと朔、何してんのよ」

「不可抗力だろ」


そういう朔の目元は泣いたように赤くなっていた。


「まあまあ、それではそろそろ試合を開始しないとわたくしが後で招集されそうなので始めましょうか」

「あ、実況くん後で会議室に来いだってさ」

「え、うっそーん。……マ?」

「うん、マジマジ」

「終わったああああああああああ!!!!!!!!!」


マイク、スピーカー越しに聞こえてくる叫びはしっかりと国民の心に響き渡ったという。「こいつ、やってんな……」と。

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