第6夜 剣術大会 Ⅶ

「それでは選手に登場していただきましょう!西側から出て来ていただくのは今回、剣術大会に初参戦であります!期待の二年生、おう朔選手ー!!」


わあぁぁぁ!と観客席から大きな歓声が上がる。


わたくしとしては何故これまで王さんの実力が評価されてこなかったのか不思議でなりません!それとも王選手、自らが実力を隠していたんでしょうか……。そこのところ、どうなんでしょうか芽悪先輩!」


「Saku, if you hurt my friend, I'll blow you up.ってとこですかね。」

「ええと、つまり?」

「能ある鷹は爪を隠す、ってことです」


英語が得意な人はお分かりでしょう。芽悪が言ったのは「朔、てめえ先輩を傷つけたらっ飛ばすからな」です。本当に面白いことを言いますよね、あの子。


「朔選手、観客の皆様に何か一言ありますでしょうか」

「観客には何もないが、芽悪には一言」

「キャー!!何、愛の告白?!ごめん朔、私は冥朗先輩にぞっこんなんだわ!!」

「……There's no way I can win.」


これは「俺が勝てるわけがない」ですね。否定はしませんが、良い線は行くと思うんですが。


「あー、そんなことか」

「え、なんですか全く理解できていない観客席の皆様と私なんですが」

「えーと、俺はそんなに評価されるほど強くない、寧ろ弱々だぁー。って言ってます!」

「……おい」

「は、はあ……。では気を取り直しまして……」


朔は実況席にちゃっかり居座っている芽悪に冷たい視線を送り、芽悪は目を細めながら機嫌がよさそうに朔を見下ろしている。まったく仲が良いんだか悪いんだか……。そんなところも、あの子たちの面白いところの一つなんですがね。さて、本命の登場ですかね。


「それでは対戦相手の選手に登場していただきましょう!東側から出て来ていただくのは昨年度の剣術大会の王者!二年生の絶対的王者、咲真冥朗選手ー!!」


朔が登場したときよりも遥かに大きな歓声が上がる。東側の出入り口からゆっくりとした足取りで腰に剣をたずさえて歩いてくる綺麗な黒髪を後ろに結わえての人物。その人物こそ今日の目的の人物、冥朗である。


わたくしとしては、まだまだこれから出場予定の咲真家の冥朗先輩を含めて左目に眼帯をしているのか気になってしまいまして、冥朗先輩に伺ってみたところ昔、野犬に襲われて冥朗先輩が左目を負傷してしまったそうです。それを気の毒に思ったのか他の五人もナイフで自ら左目瞼に傷を作ったそうです。もうこれを聞いてわたくし、感動感激雨あられでございました!!これこそ友情!家族愛ですね!個人的に今回、冥朗先輩に勝っていただきたいです!!!」

依怙贔屓えこひいきだろー!!」


そんなブーイングをくらいながら生徒は紹介を続けたのでありました。


「良いんですかねぇ……」


そんなことを言いながら、珍しい服を着た男はそのまま闘技場を見下ろしていた。

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