第6夜 剣術大会 Ⅱ

「冥朗は勝ち進んだみたいだなぁ……」


相手の剣を受け流しながら冥朗の方へ視線を向けると、こちらの視線に気づいたようで恥ずかしそうにしながらも手を振ってくれた。つい嬉しくて、手を振り返す。


「こっちの試合に集中しろ!!」


相手の方は苛々し始めたようで、太刀筋が荒くなる。相手に笑顔を向けると、少し怯んでスピードが落ちる。その隙を奇炎が見逃すはずがなく、相手の懐に入り込む。


「……文句を言うくらいなら僕に勝ったらどうだい?」


そう言って相手が体勢を崩した瞬間に喉元に剣を向ける。


「残念、僕の勝ちだね」


僕が微笑むと相手は悔しそうに表情を歪める。あぁ、なんてつまらないんだろう……。


「奇炎、1回戦突破おめでとう」

「ありがとう、冥朗も1回戦突破おめでとう」


周りから視線が集まってくる。まぁそうだろう。学園一の美男美女と称されている僕達が並べば視線はおのずと集まってくる。まぁ、そうなるように仕向けたのは僕なんだけど……。


「これより、第2回戦を始める!生徒は位置につけ!!」

「おっと、もう次の試合みたいだね」

「うん、奇炎も頑張ってね」


お互いに手を振って、その場を離れる。次の対戦相手を確認すると、自然と苛々してきた。こういうときに限って、僕はつくづく運がないな。


「では、これより!咲真奇炎、水朗皇子の試合を始める!!」


互いに視線で相手を牽制し合うこの空気は、周りからすればとても重かっただろう。


「よーい!」


体勢を整えて、剣を構える。今回は手加減なしだ。


「始め!!」


審判役の生徒の合図が出た瞬間に僕は地を蹴り、相手の懐へ潜り込む。


「っ?!」


あぁ、嫌だ。こんな奴に…………冥朗を渡してたまるか。この気持ちが醜いものだと分かってはいる、脳では理解している。だが気持ちを抑えることは出来ない。あぁ難しいなぁ、


「……感情って煩わしい」


重い重い一振を水朗皇子にくらわせる。水朗皇子はその剣を真っ直ぐに受け止めて跳ね返す。


「おっと……」

「…………微塵も負ける気は無い」


やっぱり嫌いだ。その諦めない目が、その情熱が、その志が…………嫌いだ。何回も剣を交えながら話をする。


「そろそろ冥朗に話しかけないでくれないかなぁ?」

「っ、冥朗が嫌がってないならば、俺は話しかけ続けるぞ」


あー、苛々する。そんな中で視界の端っこで心配そうにこちらを見つめてくる冥朗。そんな目をされたら……、


「勝つしかないじゃないか」


水朗皇子の攻撃を受け流した後に、踏み込んで剣で攻撃を仕掛ける……


「と思いきやの、残念でしたー」


わけもなく。水朗皇子の脚を引っかけて転ばせる。


「はぁ~い、ゲームセット」

「…………参ったな俺も、もっと剣の腕を上げなくては」


だからそう言うところが嫌なんだって。いい加減、自分でも気づいてほしい。こうして試合は進んでいき、ついに僕と冥朗が戦うことになったのであった。

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