第13夜 気付いてしまった感情 Ⅲ
「……それは破滅の序章──報いはなく、救いもない。さぁ、序曲を奏でよう」
すぐに血が辺りに飛び散る。これは、土朗の血だ。
「っ、青樹くん……なのか?」
そう聞くと青樹は振り返り、俺を見つめる。
「ちょっと1S~、何見つめちゃってんだよぉよ。……まさか!禁断の恋?!」
「は?」
「は?ついに頭がおかしくなったか1R」
「え、冷たい?!何その態度ぉー」
2人の右目はそれぞれの色、青と緑のままなものの、眼帯をしていた左目は獲物を狙う梟のように金色に輝いているように見えた。そして目の中心には白詰草の紋様が浮かび上がっていた。
「その目は……ボーオ村の……」
「そっすね、お久し振りっす。といわけでは無いですね」
「この姿で会うのは何年振りですかね、お久し振りです水朗皇子」
彼らの目は綺麗なものの、どこか寂しそうで俺を通して何かを見ている気がした。突然のことに言葉を紡ごうにも、思考が追い付かなくて黙って呆然としてしまう。
「水朗皇子は今すぐ王城にお帰り下さい」
その一言が発せられたと同時に空気が冷えきってように寒くなる。帰れ、と?嫌だWhy?《何故?》Why?《どうして?》そんな疑問が頭をよぎっているうちに、青樹と緑樹はその場から離れていこうとした。その後ろ姿に声を掛ける。
「ま、待ってくれ!」
「何ですか、俺たちは忙しいんです。冥朗……、2Mのお願いじゃなきゃ助けに来たりなんかしてませんよ。それぐらい俺達は忙しいんです」
冥朗が……?大変な状況なはずなのに不思議と歓喜が込み上げてくる。…………、そうか俺は……
「冥朗のことが好きなのか……、俺も覚悟を決めないとか」
「ぼそぼそ小さい声で聞こえません、ちゃんと話してください」
「青樹くん、緑樹くん。俺を、冥朗の居る場所へ連れていってほしい」
「「あ?」」
2人から送られてくる冷たい視線。だが俺はそんなことには負けたくない、いや負けない。2人に向けて頭を下げる。これが俺ができる精一杯の事であり、俺からのお願いでもある。
「駄目です、許可できません」
「何故だ?」
「それは王族なら察してよ~、分かるでしょ?ボーオ村の住民達の怨念が水朗皇子達に反応していること」
怨念……?
「まぁ!とにかくは」
そう言った緑樹からは拳が飛んでくる。緑樹の拳は俺の腹に入り、俺は後ろへ飛ばされた。
「俺達をなめんな」
「はぁっ、はっ、おえぇぇぇ」
正直、今にも吐きそうだ……。こんなにも強く攻撃を受けたのは、久々だ。今にも吐きそうな体を、起き上がらせる。
「何故まだ起き上がる?」
「なんで諦めねぇの?」
そんなの決まっているだろう……。
「冥朗のことが好きだからだよ」
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