第13夜 気付いてしまった感情 Ⅱ

戴冠式が始まり、ボーオ村からの祝電の順番が来た。『この日を大変喜ばしく感じる、訳がない。我々は大変、遺憾に感じている。』この発言に対して国王はボーオ村の住民を捕らえるよう命じた、が一流の魔術師に兵士達が勝てるわけもなく、青年の言葉は続いた。ボーオ村の代表として話していたのはミササギという青年で、蘭の幼馴染みであり佐布との顔見知り、親友であった。『佐布、君には伝えなければいけないことがある。蘭は行方不明ではなく、そこの女と国王に殺されたのだ』周りに動揺が広がるのは遅くはなかった。『蘭の梟から遺言を預かった、佐布へは僕を愛してくれてありがとう大好きだよ、ということと僕はこれから殺されるであろう、と』そう、蘭は自分が殺されることを分かっていたのであった。『本当はロベリアは不安で我が儘というより見栄を張っていて、虐めは使用人の体調を案じていただけで素直で良い子、僕の暗殺は国王に唆されただけだ、とも』国民や貴族の視線が一気に国王に集まる。国王は予想外の展開に慌てふためき、ボーオ村の住民によって捕らえられた。そしてロベリアの目からは涙が零れた。そして陵は伝え終わった後に、王族に呪いをかけた。国王を除き、王妃や佐布、ロベリアはそれを甘んじて受け入れた。この呪いは憎みや恨みを増幅させるもので、王族はもうこんな過ちを起こさないと誓い呪いを受け入れた。

呪いの効果はもう1つあり、憎みや恨みを増幅させると共に身体をどんどん蝕み、身体がどんどん宝石に変わっていき、やがて死に追いやるという呪いであった。戴冠式の後、佐布はロベリアとの婚約を解消し、第2王子の白妙シロタエと結婚し、キクという男の子に恵まれ、ニージオ帝国を支えていった。一方、佐布はというと陵の提案でボーオ村で暮らすこととなった。これが、王家に伝わる呪いの原点であった。



***



「土朗、何があったんだ」

「水朗兄さまに伝えることではございませんよ、何も知らず死んでください」


近衛騎士団や水は先に咲真家へ向かわせてしまったため、この現場には水朗と土朗の2人だけだ。さて、どうしたものか……。土朗からは次々と剣が振り下ろされてくる。しかも雨の後だからか、地面がぬかるんで移動しにくい。その時だ、水朗は木の根もとに足を引っ掛けて転んでしまったのである。


「あぁ、残念です」


そう言って土朗の剣が振り下ろされてくる。ここまでか、そう思った。最後に冥朗に会いたかった……。ぎゅっ、と目を瞑る。しかし、いくら待っても痛みは感じない。ゆっくりと目を開ける。


「……それは破滅の序章──報いはなく、救いもない。さぁ、序曲を奏でよう」

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