第12夜 True Villain Ⅱ
「ねぇ、今。どんな気持ち?」
やっとだ……、やっと、やっと復讐が。嬉しい、やっと復讐を果たせることが嬉しいはずなのに、僕の心は虚無感で埋め尽くされていた。
「2M……」
「……あ、ごめんよ。ボーッとしてた」
その場から足を進める。
「さ~てと、獲物になりたい奴はだ~れだ」
***
「さ~てと、獲物になりたい奴はだ~れだ」
……あの女を見た瞬間、どうしようもない恐怖が俺を襲った。この炎朗が誰かを恐れただと……?体が恐怖で凍りついて動かない。動けよ……、動け。
「まずはお前からだ」
2Kと呼ばれた人物がゆっくりと俺に近づいてくる。
「奇……じゃなくて2K~、そんなあっさり標的を王族にする馬鹿がどこにいる~!」
あ、駄目だ俺……とでも言うと思ったか。
「っ、2K!」
「っ……、ちっ」
***
「っ、2K!」
「っ……、ちっ」
奇炎、2Kを襲ったのは……
「天、朗…………?」
あの日、死んだはずの"お姉ちゃん"だった。なんで天朗があちら側に。いや、冷静に考えろ。天朗はもう死んだ。(僕を庇って)天朗はこの世にいない。(僕が)天朗は……(僕が殺したも同然)
「…………僕が殺した」
そんなことを考えた途端に酷い目眩、頭痛、吐き気、色々なものが僕を襲った。
「はぁっ、はぁっ、はっ、ははっ」
「2M?」
「あはっ、あはははは……塵どもが」
「行け!行くんだ!俺を守れ!!」
思考がクリアになった。死んだはずの人が動いている、ならばこれはネクロマンサーの仕業だろう。どれほど金を積んだのだろうか。向かってくる"姉だったもの"に走っていく。
「待て、2M!」
そんな2Kの制止も気に止めず、僕は"アレ"に走っていく。楽しい。(苦しい)幸せ。(辛い)笑ってしまう。(泣きたい)嬉しい。(叫びたい)誰か、助けて。一瞬、足を止めるか迷って隙を見せる僕。その瞬間、いつの間にか横にいた黒マント狐面に僕は足を貫かれた。
「っあ、あああぁぁぁぁ!!」
僕はその場に倒れ込む。こいつ……
「…………黒狐」
「当ったりぃ~、よく憶えてんなぁ。俺、めっちゃ嬉しいわぁ」
じわじわと血が滲み出してくる。この感覚は……
「アルスタールの痺れ麻痺毒か」
「そうそう、当ったりぃ~。にしても冥朗ちゃん、こんなことして堪忍なぁ~」
顔半分の下を黒い狐の面で隠し僕の顔のすぐ横でしゃがんでそう言ってくる男……。こいつは通称"黒狐"。黒い狐の面と、僕と同じ黒髪に黒い瞳が特徴的な元賊だ。何処に行ったかと思っていたが……。
「まさか王族の下で働いてるとはな」
「えぇ~、仕方ないやん?あいつらは冥朗ちゃん達に捕まえられちゃったし、ね?」
「敵討ちのつもりか?」
「いやいや、そんなことやないて~。ほら僕、君の事が好きやから。ほんまに敵討ちとか興味ないで~、無駄やし」
やっぱり黒狐は少し……怖い。仲間を仲間と思わない思考。躊躇なく人を殺すその精神。目の前がぼやけてきた。
「黒狐、お前、この針に何を塗った……」
「えぇ~、教えてほしい?ほしいかぁ~、これはなぁ、痺れ麻痺毒と睡眠薬を合わせたぁー、言わば麻酔やな」
睡眠、薬?そうこうしているうちにも、意識は徐々に薄れていく。これ、ちょっとやばいかもなぁ……。最後、僕の視界に写ったのは…………傀儡となった天朗だった。
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