第8夜 来訪者
「同じ……、千里眼持ち」
「あぁ、そうだ。まぁ俺は人の心を読むことに特化したもんで、回数制限ありだがな」
回数制限がある千里眼なんて聞いたことがない、が他の国には有り得ることなのか……。
「それで、インバシオン王国への勧誘は言葉の通りなのか?」
「あぁ、インバシオン王国が今のところ負け続きなのは本当だしな」
私達が行くことで大きな戦力になるとは到底、思えないな……。
「なぁ頼む。俺達の故郷を守ってくれ」
「……なら1つ確認したい」
「…よりはなんだ?」
そう三瀬帰が2人に質問した。確認とは敵対勢力ではないこと?いいや、それはもう証明されている。仲間に危害を加えないこと?いや、いくら千里眼持ちだからと言っても僕達に勝てるはずがない。では三瀬帰が確認したい事とは、なんだ?
「お前の国が絶対に俺達を裏切らないと、言えるか?」
「っ……それは」
「なら交渉決裂だな」
「そんな……!」
「お前らとはサヨナラだ……、と言いたいところだが俺達にはお前らの保護の義務がある」
「えぇ、そんなの頼まれてたの三瀬帰?」
僕も驚いた、そんなことを透さんが三瀬帰以外に知らせないとは思わなかった。今まで、そんなことは1度も無かった。それだけ重要なことなのだろうか。そんなことを考えていると誰かの足音がしてきた。
「三瀬帰、恐らく巡回の警備が通る。隠れた方が良い」
「そうだな。寿々音、俺含め全員に透明化をかけてくれ」
「いや、僕は遠慮しておく。調べたいことがあるし、警備が通り過ぎたら2人はそこの2人を連れて先に帰っていて」
「……良いのか?」
「うん」
「そっか、りょーかい」
そう言って寿々音は4人を透明にする。と言ってもフクロウと契約している契約者は透明化した人間を視ることができる。さてと……
通り過ぎた巡回の警備の後を追い、警備の話に耳を傾ける。
「それでな、拐った子供がギャアギャア五月蝿かったもんだから、足に剣を突き刺してやったんよ」
「うわぁ、酷えことするなぁ」
「お前も大概じゃねえだろうが、ぶつかってきた子供を奴隷として売り飛ばした屑じゃねえかよ」
「まぁな?」
……気持ちが悪い。聞いているだけで気持ちが悪くなる。こんな屑どもがのうのうと生きているから、この世の中は腐っていくんだ。息を潜めながら、襲撃する時を見計らう。……今。木の上から警備の背後へ斬りかかる。肉を斬る鈍い音に、体はもう反応しないようだ。
「なな、な何者だ!」
「さぁーん」
「ひいっ!!」
「にぃーい」
死んだ警備を置いて、もう1人が逃げる。まぁ、
「いーちぃ」
逃がさないけど。辺りに血吹雪が舞う。ドシャッ、と倒れる音がして我に返る。あ、また殺しちゃったんだ。
「力加減が難しいな……」
生け捕りにするつもりだったのだが……。
「そこで何をしている!」
そう聞こえた瞬間、その場から立ち去る。幸いにも、僕には暗くて気が付かなかったようだ。警備に気付かないとは、警戒を怠っていた……よりはボーッとしていたが正しいか。自分の未熟さに反吐が出る。
「あ~ぁ、生け捕りにして拷問する予定だったのにねぇ~」
「!!」
聞き覚えのある声に思わず振り向く。お前は、誰だ……?
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