第7夜 襲撃者の正体…… Ⅲ

「……」


僕はどうやら敵国であるインバシオン王国の第2王子様をいじけさせたらしい。近所迷惑も良いところだ。


「うぅ……、馬鹿じゃねぇし」

「まぁまぁ、兄さん落ち着いて……」


兄の方は単純な馬鹿ではない、と思う。王子という立場上、褒めたりされることが少なかったり、比べられたりしたんだろうな。その寂しさ故、今回の行動を起こした。そんなところか。さて、この密売人はどうするか……。するとこの密売人の積荷を調べていた寿々音が結果を盛大に報告する。


「みんな~!こいつら学園の襲撃者と繋がりあるかも~!」

「それは本当か、寿々音」

「うんうん、本当ほんと♪ほら、"学園襲撃の計画書"って書いてあるじゃん♪」


確かに寿々音の言う通り、紙束の表紙にはでかでかとそう書いてあった。

─馬鹿だねぇ~、冥朗でもすぐ分かるよぉ。


「学園襲撃?そんなことがあったのか?」

「つい最近、修練場が襲われたんだ。この太った奴はインバシオン王国の貴族か?」

「あぁ、よく分かったな」

「そりゃ俺らはニージオ帝国の住民、全員のことを記憶しているからな」

「「……え?」」

「「「「「「え?」」」」」」


「「……え?」」って失礼な。裏の人間ならそれくらい当たり前だろうに。まぁ、良い。おおよそインバシオン王国のスパイというのは、この密売人だろう。こいつらは透さんに引き渡すか……。

─さすが冥朗、格好いい!


「天正といったか?こいつらはこっちで引き取っても大丈夫か?」

「いきなり呼び捨て?!あぁ、別に良いぞ」

「了解した、緑樹」

「へいへ~い、先に運んどきますよっと」

「僕も手伝うよ」

「あ……、じゃあ僕も」


─そう言って3人とスパイ容疑のかけられた数十名は暗闇の中に消えていったのでした。相も変わらず冥朗ちゃんは可愛いね。みんなも変わらずのようだし、良かった。それでは!一場 春夢がお送りしました!

またあの声……。一体なんだったんだろう。他のみんなには聞こえてないぽいっし……。


「なぁ、冥朗」

「何?」

「いやー、さ。助けてくれて、ありがとな」

「いや別に……」

「いえ!僕からも、ありがとうございます!冥朗さんがいなかったら兄さんは……」

「冥朗」

「え?」

「冥朗で良いよ、空正くん」


そう言ったら空正くんは顔を赤くして、コクンと小さく頷いた。可愛いなぁ。……僕は今、一体何を考えて。駄目だ。


(私情をかけたら、後悔しちゃうよ)


「っ?!」

「どうしたんだ、冥朗?」

「何かあったの?」

「え、あ…いや、何でもない」


何だったんだ、今のは。でも確かに、私情をかけたらいずれ後悔するかもしれない。うん、きっとそうだよ……な。


「なぁなぁ冥朗」

「ん、何」

「……6人とも俺達の国に来てみないか?」

「「「……は?」」」

「俺達の国には強い奴が必要なんだ。それにお前ら、ニージオ帝国に復讐したいんだろ」

「?!」


何故それを知っている。


「何故かって?それは、」


そう言って天正はフードを取る。フードを取るうちに天正の整った顔立ちが見えてくる。紺色にネイビーのメッシュが入った髪の毛、そしてサファイアのように輝く瞳。あと、狼のような耳と尻尾。


「、……獣人族」

「……そうだ。インバシオン王国の王家の血筋は代々、獣人族の狼だ。そしてお前らと同じ千里眼持ちだ」

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