第5夜 襲撃者 Ⅱ
寿々音は周囲の偵察に行ってもらい、僕達は修練場の中央に集まる。
「今回の一件ですが、実行犯はこの学園の元生徒です」
「……メンティー学園の退学生なのか?」
いちいち反応しないで欲しいのだが。そう思ってつい、キツい言葉を発する。
「余計な口は挟まないでもらえますか、水朗皇子。報告の邪魔になるようなら追い出しますが?」
「……、すまない。続けてくれ」
はぁ、と溜め息を1つ。そうすると青樹が目配りをして、
『別にそれくらい良いんじゃない?冥朗』
『否、そもそも聞かせてもらってるなら余計な反応はしないのが、是』
『冥朗がそこまで言うのなら、まぁいっか』
水朗皇子はショボンとした様子で報告を聞いていて、その様子を水が横目に笑っている。笑いをこらえているようだが、笑っていることがバレバレだ。あいつら追い出してやろうか……。そう思いつつも、報告を続ける。
「犯人達のことだが、退学前の武術の成績を考えても3人に対抗できている辺り、何者かが外部の人間が関わっているとみられる」
「……その根拠は?」
「交戦中に2階に人影が1つと、屋根にいた奇炎が突き落とされた」
場の空気が、一瞬で冷える。まぁ仲間に害をなされたのだ、当然だろう。三瀬帰が考える様子を見せ、
「そうか……面倒なことになったな。4人とも、その調査は任せても良いか」
「分かった」
「了解です」
「……最善を尽くします」
「おう!」
「あ、ちなみに今回は冥青ペアと、奇緑ペアで活動してもらうからな」
「「はあぁぁぁぁ?!」」
「三瀬帰!考え直してくれ!緑樹と俺なんて明らかにおかしい!」
「そうだぞ三瀬帰!奇炎となんて絶対に嫌だ!」
「おー、おー、2人は仲良くなれるように頑張れ、あとは知らん」
「「おぉーい!三瀬帰ー!!」」
そんな2人の声が修練場に響いた。そうしていると偵察に行っていた寿々音が戻ってきたようで、2階の窓から1階に飛び降りてくる。
「周囲に怪しい人影なーし!内部に協力者がいる可能性が高いね!」
「内部、か……。内部のことならば俺が調査してみようか?」
そう言ったのは水朗皇子。は?馬鹿なのか、こいつは?咳払いをして僕から一言。
「水朗皇子が怪しい動きをしたら逆にこちらが怪しまれるので、どうぞ御構い無く。配慮には感謝します」
「そうか……」
今回、水は笑わなかった。内部の犯行かもしれないのだ、真剣になるのも当然か。内部の犯行だった場合、主人である水朗皇子の立場などが危うくなるかもしれない。そう考えると水も大変だな。そう思っていた最中、水が口を開く。
「君達の調査に口を出す気は無いけどさぁ、一応やり方は考えているのかい?」
纏う雰囲気が変わった。ポワポワしてた空気が一瞬で、電気を帯びたような荒々しい空気になった。まぁ、つまりは学園の立場を考えて調査は慎重に、ということだろう。
「大丈ー夫よ、水くん!」
そう言って寿々音が水の肩をバシッと叩く。水が「痛い痛い」と言いつつ苦笑い。だが、そんな水の表情は一瞬で真顔になる。
「だって君達、今話題の"ナイト・アウル"でしょ?」
「……」
もう嗅ぎ付けられていたのか……。
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