第3夜 早すぎる再会 Ⅱ
「……失礼します!」
「え……」
勢い良く扉を開けると、そこには……。あ、駄目だこりゃ。僕は風紀委員室にいた水朗皇子とぶつか……
「冥朗!」
らなかった。奇炎は僕が水朗皇子とぶつかる寸前、僕の手を引っ張ってくれた。そのお陰で、僕は奇炎の上に乗っかってしまったわけだが。
「冥朗、大丈夫?」
「うん。かばってくれてありがとう、奇炎。助かったよ」
その場で素早く立ち奇炎に手を差し伸べる。奇炎はすぐ差し伸べられた僕の手を取った。
「よいしょっと……ありがとね、冥朗」
「ううん。こっちこそ、ありがとう」
「冥朗……」
「キャー!!!」
─冥朗を呼ぶ声は虚しく悲鳴にかき消される。そう……生徒の悲鳴である。
「みなさーん!この学園1美男美女がお揃いですわよ~!」
「本当ですの?!」
─あ、そっちの悲鳴?いやー、でも嬉しいね。冥朗ちゃんがこんなにも、人気になっているとは。大勢の生徒が風紀委員室に走ってくる。その様子は、まるで楽園を求める愚者のようだった。あ、愚者では無いか。以上、さっき来たリポーターの仮・
……今、僕を"ちゃん"って呼んできたのって誰だったんだろ。頭に響いてくる声だったし、気になるな。生徒にあんな声の子はいないはずだし。
「冥朗様~!こっち向いてくださ~い!」
「ん?どしたの?」
「キャー!!純粋な眼差しの王子様のような対応ー!神……グッ」
「うわー!生徒が4人倒れたぞー!!」
あぁ……、こんなにどんちゃん騒ぎしてて良いものなのか。そう思っていると、1人の生徒が風紀委員室に駆け込んできた。
「水朗皇子!」
「そんなに慌ててどうした!」
その生徒は腕に怪我をしていた。その様子を見て、三瀬帰が生徒達を風紀委員室の外に退出させた。この様子だと重要なことか……。そういえば水はさっき僕達を追い掛けてきた後、何処かへ行ってしまったのだろうか。
「三瀬帰先輩、2人は退出させなくて良いのですか……?」
「別に大丈夫よ。2人とも私と同じ咲真家の一員だもん」
「寿々音の言う通りだ」
「そうですか……。君、何があった」
焦っている生徒の口から出た言葉は……
「修練場で怪我人が数名!何者か分からない人物と現在、水先輩と咲真の双子が交戦中です!」
双子と言うと、青樹と緑樹か。この様子だと手こずっているのか……。三瀬帰が考える様子を見せ僕達に命令する。命令、僕達は名前を呼びあえば考えていることが分かる。なんてそんなものではなく、ただ単に意思疎通の能力を持っているだけだ。
『目標・仲間に害を為すもの、対応・排除』
「冥朗、奇炎」
「了解」
「分かりました」
三瀬帰にそう返して、僕達は風紀委員室の窓から飛び降りる。風紀委員室は学園の最上階である6階だ。そこから体育館の屋根を通り、修練場までの道をひたすら走るだけ。
「お前ら、ここ6階って……」
そんな水朗皇子の声も気に留めず飛び降りて、走る。ここからだと1キロ先だからゆっくり走って2分ってところか。本気で走ると他の生徒の目に留まるかもしれない、だから学園ではゆっくり走る。
『冥朗、僕が銃でサポートするから……』
『銃は学園内だから駄目。使うなら弓だけ』
『……了解』
そうして僕はいつでも攻撃が出来るように双剣を持ち、手に力を込める。見えてきた……。
『奇炎、屋根の硝子が割れてる。そこから少し様子を見て、敵の数を目視で確認。後に攻撃開始』
『了解』
屋根の割れていない部分に音を立てないように乗る。敵の数は……14、21……、多いな。交戦中の青樹がこちらに気付いたようで、意思疎通に入ってくる。
『冥朗ちゃん、奇炎くん。敵の数が多くてすぐ片付けられなかった、ごめん』
『いや大丈夫だよ。怪我はないかい?』
『今のところは僕と緑樹は無傷だよ、奇炎』
『おっ、冥朗と奇炎いんのか!』
『青樹と緑樹、3、2、1で僕が入るから2人は水と生徒を連れて1度下がって』
『わかったよ、冥朗ちゃん』
『……行くよ、3、2、1』
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