第3夜 早すぎる再会 Ⅰ
基本的に仕事があるのは火曜日と土曜日だけで、火曜日は楽しい楽しい山賊狩り……いや失言だった。火曜日は汚れ仕事の日と言った方が良いかな、そして土曜日はボーオ村のことについての調査の日だ。ボーオ村について関心が無いわけではない。もちろん、来るべき時に向けて準備はする。今日は4月19日、26時、いや2時に仕事が終わった。今回は数が少し多かった。それだけ帝国は民のことを考えられていないということになる。大体の山賊は税金を払えなくなった者、他国との戦争で故郷を無くした者達が集う。今はインバシオン王国との戦争が主だ。インバシオン王国とは山脈を挟んである隣国で、9年前から戦争をしている。今はニージオ帝国が優勢な状態だが、今後どうなるかは分からない。インバシオン王国からニージオ帝国に難民が逃れてきているのが現状だ。帝国の貧富の差や、人種差別は今も解決していない。……そろそろ寝るか。いつか帝国で反乱が起こるんだろう。そう思いながら僕は浅い眠りに落ちていった。
4時間後──
「眠い……、17日に図書館で借りた小説を一気読みして2日連続で4時間睡眠だったからかな」
睡眠時間が短いと心臓に負担が掛かる。だから心身共に負担が掛かって、思考速度も落ちてしまう。今日はちゃんと寝るか……。
「ふわぁ……」
起きて早々、体を伸ばす。"起きてから体を伸ばすと圧迫されてい血管が解放され血流が良くなる"と天朗に教えてもらったことがあった。僕もそうすると寝覚めが良い。通称、"起き伸び"は僕の日課になっている。ベットから名残惜しいが立ち上がる。ベットにいたら睡眠という誘惑に負けそうだもんな……。ベットの横のカーテンを開けると、気持ちの良い朝陽が入ってくる。今日も何事もなく過ごせたら良いな。そう、思ってたのに。
「ねぇねぇ奇炎く~ん冥朗ちゃ~ん、水朗皇子の従者になろうよぉ~」
なんでこんなにこの人は付きまとってくるんだぁー!!!ことの始まりは4時間前──
「冥朗、とっても眠そうだね」
「うん、めちゃくちゃ眠い。なんなら僕は年中365日、全て眠いよ」
「あー、確かにぃ~。分かるわぁ~」
「「……誰?」」
奇炎と一緒に登校していたら急に知らない人が話に入ってきて警戒した、が。昨夜、水朗皇子の護衛で家に来ていた人だと思い出す。
「水朗皇子の、護衛の……えっと」
「あ~、俺っち?俺は水!水朗皇子の従者よ!」
「それで、その水朗皇子の従者様がわざわざ何の御用ですか」
「様は要らないよ。それに、なにそれ冷たぁ~い。冷たい男は女子にモテないわよぉ~」
「余計なお世話です」
水さんはやれやれという態度をとって、進み出す。奇炎は少し不機嫌そうだ。
「まぁ、ぼちぼち登校しながら話しましょうや」
そう言って一緒に学園に登校したわけだが。登校している間、水さんは僕達に水朗皇子の従者にならないかと持ち掛けてきた。冗談かと思ったが、そうでもないらしい。
「ねっ!お願いよぉ~!」
「断固拒否します」
「僕も同意見ですかね」
そんなこんなで現在まで付きまとわられているわけだが。この男、諦める気配が一切ない。面倒だな……。よし、こういうときの……。
「奇炎」
「……了解」
今は昼休み、だから……席を立ち、廊下に行く。そして……
「ゴー!」
僕の掛け声と共に、僕と奇炎は走り始める。こういう時は三瀬帰と寿々音に頼るほかあるまい。
「2人ともー、なんで逃げるのぉー!」
「本当に断固拒否します!!」
「僕も同じく!」
流石、水朗皇子の従者だ。本気を出していないにしろ、ちゃんと付いてきている。しかも満面の笑みで……。風紀委員室まであと少し。僕は少しだけ走るペースをあげる。風紀委員室の前に着き勢いよく扉を開ける。
「……失礼します!」
「え……」
僕は追いかけられていることばかりに気を取られて大事なことを忘れていた。風紀委員のメンバーの中に、水朗皇子が含まれていることに……。
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