第5話 天才と呼ばれていた少年②
彼女の名前はレリア・シュトラス。
剣も魔法も万能に扱える天才であるが特に剣術の方に並外れた才能がある聞いている。
しかし、実際に見た彼女は綺麗な長めの銀髪に鋭く光る青い瞳を持ち、身体はかなり細い。
その細腕では剣などとても振るえるとは思えない。
だがその瞳には不安の色は無く、ただ真っ直ぐな自信に満ち溢れていた。
間違いなくそこらの騎士よりは強いのだろうが体格ではこちらが勝っているし魔法だって剣と同じくらい扱える。
苦戦することはあったとしても負けるようなことは無いと思っていた。
しかし、
「それでは開始!!」
「…えっ!?」
その予想は直ぐに覆された。
父上の開始の合図と共に彼女の姿が消えて次の瞬間には俺の喉元に彼女の剣先が突きつけられていた。
「すまない、やり過ぎてしまった。天才と聞いていたものだからつい。今度は君から攻めて来たまえ。」
何が起こったのか理解できていなかったがその言葉になんだか馬鹿にされているような気分になり居ても立っても居られずに、彼女に向かって勢いよく剣を振るった。
しかしその一撃は軽々と躱されてしまった。
腕を振り切り無防備な姿勢を晒したのに彼女から攻撃を仕掛けてくる様子は無い。
先程の言葉通りあくまでも俺に攻めさせるつもりらしい。
「……ッ!ふざけた真似を!!」
そうして俺は何回も彼女に斬りかかった。
だが俺の剣が彼女を捉えることは一度も無かった。
どれだけ攻め方を変えても躱され、往なされ、弾かれた。
両者の実力差は圧倒的だった。
初めて剣の師と相対した時でもこんなに大きな差は感じなかった。
どう足掻いても、どんなに努力しても追いつくことが出来ない大きな壁が見えたような気がした。
気がつけば俺は地面に膝を着いていた
「…ふむ。この程度か」
「…ッ!!」
俺を見下ろすその目には心底ガッカリしたという感情が籠っていた。
その瞬間今まで積み重ねてきたものが音を立てて崩れていくような感覚がした。
彼女はそれだけ言うと足早に去っていった。
彼女の姿が見えなくなってからもしばらくの間、俺は膝をついた体勢から動けないでいた。
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