第3話 父
大量の資料が乗ってある机の奥に見えるあの男が今の俺の父親なのだろう。
髪は俺と同じ黒髪だが目の色が青色という点が違っている。
さらにその体には服の上からでも分かるほどガッシリとした筋肉が付いており、厳つい顔と相まって凄く威圧感を感じる。
その圧に畏縮して固まっていると、男は眉ひとつ動かさないで真顔のまま言った。
「早く座りなさい」
男はチラリと左右に並んでいるソファーの左側に視線を向けたので、それに従い俺はそのソファーに腰掛けた。
「下がっていいぞ」
男がそう言うとメイドさんは一礼した後この部屋から出て行ってしまった。
男と二人きりになってしまったが男は先程からずっと険しい顔をしている。
これから何を言われるのかと緊張していると男が鋭い眼光をこちらに向けながら言った。
「昨日の件、本当にそれでいいんだな?一度契約を交わした以上は絶対に守らなければならないが」
一体何の話だろうか。
何一つ分からないが、この深刻な雰囲気で話す男に対して何の事ですかとは流石に怖くて言えない。
ここは空気を読んで答えておこう。
「はい」
「そうか……分かった。では明日、奴隷商の元へ行く。……契約は絶対だ、いいな?」
「はい」
「よし、では下がっていいぞ」
そう退出を促されたので俺は立ち上がり部屋から出ていく。
「失礼しました」
俺がそう言うと、終始無表情だった男の眉が僅かに動いたのが見えた。
できるだけ音を立てないようにしながら扉を閉め、一人になったのを確認して俺は息を吐いた。
先程からずっと緊張しっぱなしでバクバクといっていた心臓がようやく落ち着きを取り戻し始めた。
それにしても先程の会話……もしかして俺、売られる!?
あの後何とか記憶を頼りに最初の部屋へと戻った。
冷静に考えてみるとあれは俺が奴隷を買いに行くという意味なのだろう。
まあ、それも意味わからないが。
あの男が言葉からして昨日俺が何か契約?をして奴隷を買う代わりに、なにか対価を払わなければならないということだろうか。
分からないことだらけだが、この感じからして俺はこの少年の意識を乗っ取ってしまったのか、もしくは前世の記憶的なものを思い出しただけなのか。
どちらにせよこの少年としての記憶が全く無いのが問題だ。
言葉はきちんと分かるのがせめてもの救いだが、これからどうするべきか。
言葉が分かるということは、脳はきちんと機能しているのだろう。
ということは、脳は記憶しているけれど俺が思い出せていないだけかもしれない。
これは一回寝たら思い出すパターンなのでは?。
そう思い付き俺は大きなベッドの中に入る。
あっ…さっきは気が付かなかったけど、このベッド凄くフカフカだ。
やはりこの家はものすごい金持ちなんだろうな。
そんな思考を最後に俺の意識は徐々に落ちていった。
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