13
「さあ、何屋さんなんでしょうか。お客様によって和食屋にも洋食屋にも、カフェやお菓子屋にだってなりますから」
同じ表情を保ったまま淡々と答える彼に、私の頭はさらに混乱する。
なぞなぞでもしているつもりなのだろうか。だとしたらタチが悪い。
無意味なやり取りよりも因数分解の方がずっと楽だ。
さっさと解答を見つけて、ここから抜け出したい。
今の彼の返事から、とりあえず飲食店だということはわかった。
ならば、とキョロキョロ頭を動かしてみるが、やっぱり目当てのものは見つからない。
「あの……メニューは?」
「ああ、いりませんよ、こっちで勝手に出すので」
「……は、あ?」
思わず間抜けな声が漏れる。
言葉がわかるからといって、少し安心した私がバカだった。
まったく会話が成り立たない。
なにを言っているのか理解不能だ。
「あのっ、ふざけてないで、ちゃんと話をしてくれませんか」
「もちろんいいですよ。ゆっくり食べながら話しましょう……そちらを」
一向に好転しない状況に苛立ち始めた私に、彼はにこやかに右手を差し出した。
整った長い指先を追うと、すぐにたどり着いたのは私の前のテーブルだった。
なにもないはずの平な板の上には、すでにあるものが載っていた。
ビクッと身体を震わせ、椅子ごと僅かに後退する。
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