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「さあ、何屋さんなんでしょうか。お客様によって和食屋にも洋食屋にも、カフェやお菓子屋にだってなりますから」


 同じ表情を保ったまま淡々と答える彼に、私の頭はさらに混乱する。

 なぞなぞでもしているつもりなのだろうか。だとしたらタチが悪い。

 無意味なやり取りよりも因数分解の方がずっと楽だ。

 さっさと解答を見つけて、ここから抜け出したい。

 今の彼の返事から、とりあえず飲食店だということはわかった。

 ならば、とキョロキョロ頭を動かしてみるが、やっぱり目当てのものは見つからない。


「あの……メニューは?」

「ああ、いりませんよ、こっちで勝手に出すので」

「……は、あ?」


 思わず間抜けな声が漏れる。

 言葉がわかるからといって、少し安心した私がバカだった。

 まったく会話が成り立たない。

 なにを言っているのか理解不能だ。


「あのっ、ふざけてないで、ちゃんと話をしてくれませんか」

「もちろんいいですよ。ゆっくり食べながら話しましょう……そちらを」


 一向に好転しない状況に苛立ち始めた私に、彼はにこやかに右手を差し出した。

 整った長い指先を追うと、すぐにたどり着いたのは私の前のテーブルだった。

 なにもないはずの平な板の上には、すでにあるものが載っていた。

 ビクッと身体を震わせ、椅子ごと僅かに後退する。

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