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「――な、なん、で、いつの間に……」

「さっきからずーっと置いてたのに、やっと気づいてくれましたね」


 ふふふ、となぜか嬉しそうに笑う、彼の後ろに調理場らしきものはない。

 ただ客席との隔たりがあるだけで、食器なども一切ない。ならばこれはどこから出てきたのか。

 私の目の前に鎮座する花のような形のガラス器、そこにミルフィーユ状に積まれたフレークとバニラアイス、最上部には生クリームが盛られ、バナナが大量に刺さっている。

 しかも大きい。たぶんメガホンくらいある。


「……あの……」

「はい?」

「私……こんなの、頼んでないんですけど」

「ですね」


 率直に言うと、バカなのかな。

 晩御飯もまだな上に、夜八時を過ぎているのに、こんな特大のパフェを提供するなんて。


「どうしてこれが出てきたのかは、僕にもわかりません。ご自身の胸に聞いた方がいいかと」


 顎に手をやり考える素振りを見せる、彼の言葉にピクリと眉を動かす。


「ここではお客様が、本当に求めているものしか出しませんから」


 そう言って目がなくなるほど笑った彼は、右手人差し指と親指を弾いてみせた。

 パチンと小気味いい音とともに、パフェの上空から黒い蜜のようなものが溢れ出す。

 滝のごとく襲いかかるそれは、みるみるうちに白い部分を黒く染め上げてゆく。

 得体の知れないもの……ではない。

 この芳醇な香り立つとろみは……カカオ豆が生み出した奇跡の甘味だ。

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