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 十階には満たないであろう、比較的低いクリーム色と煉瓦色をしたアパート。横並びに建った二棟の境目から、滲むように溢れ出す光。

 目を刺すような激しいものではなく、提灯の明かりのように優しく辺りを照らしている。

 しばし動きを止めたあと、探るように周りを見回す。

 帰路に向かう通行人は音楽を聴いたりスマートフォンを触ったり、こちらに気づく様子はない。

 私のすぐそばを歩いているにも関わらず、誰一人として足を止めないのだ。

 もう一度、確認するために先ほどの場所を見る。

 瞬きを繰り返してみても、やはり状況は変わらなかった。

 ――私、霊感あったっけ?

 いやいや、そんなことは今まで感じたこともなければ信じたこともない。

 だから、あるはずがない。この光が私にしか見えていないなんて。

 知らないふりをして、通過してしまえばいい。

 明日も仕事だし、やることは無限にある。

 時間は有限だ。こんなところで突っ立っている場合ではない。

 そう思うのに、なぜかその光景から目が離せなかった。次第に一歩、二歩と、民家の狭間に足を踏み入れる。

 少しだけ、見てみよう。なにがあるのか確かめたら、すぐに引き返せばいい。

 漂うような山吹色の空気の中、踵の音が鳴り止む。

 アパートのすぐ後ろ、裏道に顔を覗かせた私の前には、信じられない光景が広がっていた。

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