第119話 決戦の日は近い

 翌日、可憐と可憐のお母さんはstartubeの事務所に行った。

 緋奈ちゃんのお父さんと話し合った結果、世界大会が終わった日から1ヶ月間ハワイの病院へ入院することになったようだ。

 予定通りに終わったなら、手術をしたのちにリハビリをして早ければ9月の後半、長引いても10月中には退院することができるらしい。


「え、可憐ちゃんの病気治るんですか!! よかったです!!」


 雪奈はそう言って可憐のアバターに抱きついた。


「まじですか!! そりゃあ、おめでたい よかったですね、師匠」


 その日のチーム練習で雪奈とレインにそのことを伝えると、2人ともテンションが上がり自分のことのように嬉しがった。


「無事に世界大会に出られるんだ、がんばろうな可憐」


「うん 絶対に負けないよ〜」


 そんな話をしながら、エイム練習や立ち回りの研究をしていると世界大会運営スタッフからメールが届いた。

 今日は世界大会のグループ分けの発表日で、それに関してのメールだろう。


「来たな……」


 思った通り、世界大会のマッチングに関してのメールだった。


(さて…… 誰が相手だ……)


 どのチームが相手だとしても負けるつもりはないが、武者震いのようなものがして体が少し震えた。

 

 改めてルールを確認すると、世界大会はハワイで行われる。

 各国代表チームがABCDの4つにグループへ別れて世界1位を決める。

 各リーグの参加枠は昨年優勝チームと準優勝チームがいるNA(北アメリカ地域)は4枠、SA(南アメリカ地域)は2枠、APAC(北アジアと南アジア)はそれぞれ2枠、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域)は2枠の合計12チームで戦う。

 勝ち上がった1位のチームはAグループとBグループ、CグループとDグループのマッチングでさらに勝ち上がったチームが決勝で戦う形式だ。

 そこで敗北したチーム同士で3位決定戦などは行われず、同率3位とする。

 特別ルールとして、各国の出場枠の多いNAを除き、他のチームは決勝まで同リージョンのチームと当たることはない。

 北アメリカ地域は4枠なので、4つのグループへ均等に分けられる。

 特別ルールを設ける理由は、次回の大会の参加枠の問題だ、全リージョン2枠を基本として余った2枠を優勝と準優勝チームが取るというルールなので同リーグで潰し合うと、昨年の優勝チームと準優勝チームのいるリージョンが有利になる関係だ。

 なので、例えば俺たちがAグループなら彩音たちはCグループかDグループになる。

 

 メールをみんなで共有し、同時に中身を確認した。

 俺たちはBグループ、彩音たちはDグループだった。


 優勝候補のラリーの所属するFTS(ファイターズ)はCグループ、昨年2位で同じく準優勝候補のWI(ホワイトインフィニティ)はAグループだった。

 仮に俺たちが勝ち進んで、おそらく決勝で戦うのは彩音たちかラリーたちになった。


「そうくるか……」


 昨年優勝チームと決勝まで当たらないというのは、俺たち目線ではラッキーだ。

 ただ、彩音たちがラリーたちと戦うというのが心配に思った。

 彩音たちとはライバルで心配するべきじゃないけれども、予選を勝ち進んだ場合、おそらく妹の相手が世界王者になるというのは心配になる。


 彩音たちの実力を疑うつもりはないけれど、FTSはラリーを筆頭に世界でTOPレベルの4人組、タイマンで戦うことになった場合俺の見立てだと、彩音はサブリーダーのCAPよりも少し上手いくらいでラリーには劣る。

 俺や全力を出した可憐でも勝つのは厳しいと思う、そのくらい別次元の強さ。

 覇王という2つ名にふさわしい、史上最強のプレイヤー。

 MINDとリスも世界屈指の火力とフィジカルを誇る、タイマンでの勝率が限りなく低いと思うので、彩音たちの得意とする集団戦にいかに持ち込めるかが勝利への鍵だ。

 ちなみにプロシーンに参戦してラリーを最も追い詰めたのが可憐、時点でWIのリーダーのホワイトらしい。

 2人とも追い詰めたとは言っても彼の体力を0にしたものはいない。

 昨年の大会の動画を見た感じ、世界ナンバー2のホワイトですら完全にやられていた。


「ど〜したの悠也?? まさか彩音ちゃんのこと心配してる??」


「……まあな」


「敵なのに??」


「そうだけどさ、なんつーか兄としてかな……」

 

「まあ相手がおそらくラリーだもんね、心配になるのもわかるよ〜 でもさ……」


「……ん??」


「ボクは彩音ちゃんなら、きっと勝てるって思うよ〜 信じてあげて」


「可憐がいうなら、間違いないな」


「えへへ、それほどでも〜」


 世界最強の男をもっとも追い詰めた可憐がいうなら間違いないなと思った。


「おいYUU、よそ見してるんじゃねぇぞ 俺たちだって勝てるかわからねぇんだ、気合い入れろ」


「そうだな」


「ここまで来たんです、優勝目指して頑張りましょう!!」

 

「うん」


 俺たちは再び練習を始めた。

 日本を出発する日まで残り少ない、後悔がないよう精一杯強くなろうと心の中で誓い、手に持っているアサルトライフルをリロードした。


※後書き

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