第116話 お兄さんはずるいです……

「うーん……」


 冷静に俺の人生を振り返ってみた。

 確かに最近はコーチとしてみんなに教えたりすることがあったりで、頼れるかもしれない。

 でも、有栖ちゃんたちとの初対面の時からそうかと言われると全くもってそんなことない。


 引きこもる前は、彩音と普通に会話したりはしていたが今ほど話していない。

 それに引きこもってる時は一言も話していない。

 そんな奴が頼れる兄なわけない、ありがたいことだけれど、これは彩音が俺を過大評価しているんだと思う。

 

「俺は別にそんなことないよ」


「でも…… お兄さんは優しいです……」


「なら、有栖ちゃんはそのままの有栖ちゃんでいいと思うよ」


「どういうこと…… ですか……??」


「俺は頼れる存在っていうのがよくわからない だから有栖ちゃんの思う頼れる存在になれる鍵が優しさなら、君は優しいからなれると思うよ」


「本当…… ですか……??」


「うん、嘘じゃないよ」


 俺が有栖ちゃんを褒めると、有栖ちゃんはえへへと笑った。

 有栖ちゃんのリアルで笑っているところをあまり見たことなかったので、少し新鮮な感じがする。


「お兄さん…… ギャルゲームの主人公みたい……」


「え……?? どこが……??」


「女の子を口説くのが…… 上手…… です……」


「別に有栖ちゃんのこと口説いてる訳じゃないよ、思ったことを正直に言っただけ」


「そうですか……??」


「うん」


「……お兄さんはずるいです」


「ん??」


「なんでもない…… です……」


 有栖ちゃんはそういって、カフェラテをふーふーと息で冷ましながら飲んだ。

 スナイパーライフルのキル数世界一位という、残虐にも見える肩書きを持つ少女だが、年相応に可愛らしい行動をしてた。


「有栖ちゃんってギャルゲーやるんだ、なんか以外かも」


「両親がどっちもいろんなゲームをやるので…… ギャルゲーはお父さんがやってるのを借りたらハマりました……」


「そうなんだ、楽しい??」


「はい……!! 私は結構…… 好きです……」


「でもギャルゲーって男性向けだよね?? 有栖ちゃん女の子だけど楽しめるの??」


「全然楽しめますよ…… おすすめの作品…… 今度お兄さんに貸しますか……??」


「いや…… 遠慮しとく」


 俺がギャルゲーをやっているところを彩音に見られたりでもしたら、絶縁されるような気がしたので俺は遠慮した。


「お兄さんは…… FPSゲーム以外のジャンルは…… するんですか……??」


「RPGや格闘ゲーム、シューティングゲームとかは少し前にちょこちょこハマってたけど、最近はFPSがメインかな」


「RPGだと…… ドラゴニックファイナルとかですか……??」


「うん 一応無印から最新作の7をクリアするまでやったけど、俺はシリーズだと5が一番好きかも」


「私も全部クリアしましたけど…… 5が一番好きです…… お兄さん、ジョブは何でやってましたか……??」


「魔道士にした、有栖ちゃんは??」


「一緒です…… あのシリーズは遠距離魔法のダメージが強いから…… 楽勝です……」


「ほんとそうだよね、高台の上から氷属性の魔法で足止めするの強かった」


「あれは…… バグ技…… じゃないですか……??」


「あー確かそうだったかも、にしてもドラゴニックファイナル懐かしいな」


「懐かしいですね……」


「だね、5は俺が小学4年生の時の作品だから有栖ちゃんは1年??」


「はい…… お母さんとお父さんにおねだりして買ってもらいました……!!」

 

 俺と有栖ちゃんはRPGの話題で盛り上がり、気がつけば2時間ほど経過していた。


「そろそろ行こっか」


「はい…… 美味しかった…… です」


 俺は伝票を持って、レジへ向かった。

 コラボカフェだがグッズとか込みでお会計は2500円と、思っていたよりも安かった。


「あの…… お兄さん……」


「……ん??」


「私が払いますよ……」


「年下の女の子に奢ってもらうのは気が引けるし、それに……」


「それに……??」


「俺も今日は楽しかった、また誘って欲しいって思ったからね」


 俺はそういってレジで会計を済ませ、有栖ちゃんと2人で店を出た。

 店を出た瞬間、有栖ちゃんは俺のパーカーの袖をギュッと握って下を向いた。


「はい、これ」


 俺は有栖ちゃんにコラボカフェの特典のアニメキャラクターのストラップをあげた。

 どうやら2000円以上で1個貰えるようだ。


「ありがとう…… ございます…… いいんですか……??」


「俺この作品わからないから、有栖ちゃんにあげるよ」

 

「……お兄さんの前だと、みんな弱音を吐く理由がわかった気がします」


「ん??」


「彩音ちゃんを幸せに…… してください……」


 有栖ちゃんは満面の笑みで俺にそう言った。

 その瞳は何故か、少し悲しさを感じるようにも見えた。


「……言われなくてもそのつもり、他にどこか寄りたいところはある??」


「今日は満足です…… 私も今日は楽しかった…… です」


「んじゃあ、帰り送ってくよ」


「はい…… よろしく…… です……」


 俺と有栖ちゃんはコラボカフェの近くにあったエレベーターへ乗り、出口へと向かった。


※後書き

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