第112話 にーちゃんたちはちょろいですな〜

 俺とレインは食堂で豚骨ラーメンを乗せたお盆持って、端っこの席に並んで座った。

 一応、平日ということでスタッフの人が何人もいた。


「「いただきます」」


 俺たちは手を合わせて、豚骨ラーメンをすすった。


「うっま!! なんで教えてくんなかったんだよ」


「お前らに教えたら、俺専用の練習場がなくなると思ってな」


「別にお前専用じゃねぇだろ…… ってか今までチーム練以外の日、レインは1人で練習してたの??」


「ああ」


「別に誘ってくれたらやるのに、彩音たちもやってくれると思うよ」


 俺がチャーシューを食べながらいうと、レインは呆れたような表情を浮かべた。


「俺はお前らの仲良しグループがなんというか苦手だ」


「ん」


「実力は確かだから文句を言うつもりはない、ただお前らやお前の妹たちの出す優しい空気感が苦手というか俺の肌に合わない」


「別に俺たちと彩音たちは敵同士、世界大会で当たるまでの協定だ」


「そう言う意味じゃねぇ」


「なら、どういう意味だ??」


「……年下の女の子に慕われるのが苦手だ」


「あー確かに苦手そう」


 俺がうんうんと首を縦に振った。

 

(確かに緋奈ちゃんとかは、グイグイいきそうなのが容易に想像できる)


「別に居心地が悪いわけじゃねぇ、ただ…… 俺がこの輪に入るのは違うって思っていてな」

 

 どうやらレインは俺たちと壁を作っていたようだ。

 まあレインの言うことを理解できる。


 俺も彩音が『あ』だと知った時、始めはどう接したらいいか分からなかった。

 俺自身、荒れていた時期があったし、有名配信者のブランドを傷つけないようにとかいろいろ考えた。

 ただ彩音たちみんなが俺に絡んでくれたおかげで打ち解けたが、それがなければ俺も壁を作っていたと思う。


(今思うと緋奈ちゃんって、実はすごくいい子なのでは??)


 俺がこのチームに馴染めたのは多分、緋奈ちゃんのおかげだ。

 彼女の明るい性格が俺を変えてくれたような気がする。

 俺は心の中で緋奈ちゃんのことを褒めた。

 

「まあでも、深く考えすぎなんじゃね??」


「俺に光は似合わなねぇ」


「……」


(なんつーか、めんどくせぇ……)


 別に俺たちが意地悪しているわけじゃない。

 勝手にレインが壁を作っているだけだから、どうフォローするのが正解なのか俺は考えていた。


 レインの実力は確かに高い。

 緋奈ちゃんや美佳ちゃんや雪奈よりは上、有栖ちゃんと互角かちょい上で高い方だ。

 

 個人練でここまで上手いなら別にこのままでもいいが、世界大会を考えるならもう少し強くならないといけない。

 なので、レインには俺たちと一緒に練習してほしい。


 俺がどうしたらいいか頭を悩ませていると、俺の膝の上に何かが乗った。


「にーちゃん来てたんだ〜 反社のにーちゃんもやっほ〜!!」


 白いワンピースを着た緋奈ちゃんが、俺の膝の上に座っていた。


「誰が反社だ!!」


「……緋奈ちゃん、どうしたの??」


「にーちゃんが来たってパパから聞いたから遊びにきた!!」


「そっか」


「にーちゃん、せっかく来たんだし何かゲームしよ〜!!」


「今食べ終わるから待ってろ」


 俺がラーメンを食い終わった瞬間、緋奈ちゃんは俺の手を取った。


「今日はすごろくしよ!!」


「はいはい…… レインはどうする??」


 レインは何も言わずに帰ろうとすると、緋奈ちゃんはレインの背中に飛び乗った。


「……なんだ」


「え〜 反社のにーちゃんも、すごろくしようよ〜」


「だから反社じゃねぇ!! つかなんで俺がすごろくしなくちゃいけねぇんだ」


 レインは半分キレた感じで緋奈ちゃんに言った。

 

(ナイス、緋奈ちゃん!!)


 これはいい機会だ。

 これを機にレインの壁が崩せるんじゃないかと俺は瞬時に思った。


「一応緋奈ちゃんの事務所で、俺たちは借りてる側だ 願いの1つくらい聞いてもいいんじゃねぇか??」


 俺は正論を言って、レインを誘導した。


「……確かにそれは一理ある 1回だけだぞ」


「やった〜 んじゃあ私についてきて!!」


 こうして俺たち3人のすごろくが始まった。



 


「はい、私の勝ち〜 にーちゃんたち下手くそですな〜」


 結果は緋奈ちゃんが1位、レインが2位、俺が3位だった。


「くっそ……」


 俺は4回連続1で、運がなさすぎで大敗した。


「2位か……」


 レインはどこか嬉しそうな表情でサイコロを見つめていた。


「どうだった??」


「はっ、お前に勝った時点で満足に決まってんだろ」


 レインは照れたような表情で俺に言った。


「……なっ」


「にーちゃん、最下位の罰ゲームとして私をお姫様抱っこすること!!」


「え」


「お、いいな 早くやれよYUU」


 レインはノリノリで俺に言った。

 俺に勝ったのが嬉しかったのか、レインはさっきのヘラっていた時とは別人のように感じる。


「さっきまで俺は……とか言ってただろ!!」


「3位はだまっていうことを聞いてやれ、『緋奈さん』のいうことだぞ」


(俺が正論で誘導したのまだ根に持ってんのかよ……)


「……はいはい 1回だけな」


 俺は呆れながら、緋奈ちゃんをゆっくりと持ち上げてお姫様抱っこした。


「……おお にーちゃん力持ち〜!!」


「これで満足か……」


「にーちゃん、このまま…… 誓いのちゅーは??」


 緋奈ちゃんはそう言って、俺に顔を近づけてきた。

 そんな緋奈と俺をレインはドン引きした目で見つめた。


「やんないから!! ちょーしに乗んな!!」

 

 俺は緋奈ちゃんを優しく下ろした。

 こうして俺たちのすごろくは幕を閉じた。


※後書き

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