第82話 戻りたくない時間
「そういや、結局 彩音たちとは最後まで当たらないみたいだね」
俺は夜ご飯のオムライスを食べながら、彩音に言った。
ついさっきご飯を運んでいる時にメールが来て最終スクリムの相手が決まった。
対戦相手は『UPG』『T&G』『TOE』で彩音たちとは最後まで当たることはなかった。
「そうみたいだね〜 1回くらいは戦うと思ってたけど……」
「まあでも、俺は彩音たちとは決勝で戦いたかったからよかったけどね」
「うん!! 私もお兄ちゃんたちと全力の勝負をしたいからそう思ってた!!」
どうやら彩音も俺と同じ気持ちだったようだ。
「そういえば、昨日うーちゃんが可憐さんの先生になった!!って言っていたけど、ほんと??」
「え…… そうなの??」
意外すぎる組み合わせで、一瞬耳を疑った。
それに可憐が先生ならまだわかるけど、逆とか意味がわからないし聞いてない。
「いや、何も聞いてないな…… まあ可憐のことだ何か大会用に練習したんじゃない??」
「まあそうだよね〜」
そんな話をしながら、俺はスマホでスクリムのマッチ表を確認すると彩音たちの最終戦の相手が『ROSE』だと知った。
「彩音たちの最終戦はマリベルか……」
マリベル、チーム『ROSE』のリーダー。
黒髪のストレートの高身長で低い声が特徴の女性で、紫のメッシュが入っている。
昨年度はグランディネアに次ぐ2位で予選を抜けた。
世界大会1回戦で敗れたものの、彼女の圧倒的なフィジカルは世界にも通用するレベルだ。
性格は荒く、攻撃的なスタイルで彩音とは真逆の性格だ。
ただ、仲間の3人の女性選手との関係が悪いというわけでもなく、あくまで1人で解決するとこはするがグランディネアとは違って仲間に頼る面もある。
近距離戦が得意なので、彩音の未来視(中距離で弾丸の軌道を読むので近寄られたら使えない)は封じられる形になると思うので相性も最悪に近い。
「世界2位の人だっけ、そんなすごい人と私たち戦えるんだ〜」
彩音は緊張してるのかと思いきや、むしろワクワクしてる感じすらしていた。
ただ余裕かというとそうではなく、真剣な表情ではあった。
「緊張とかしないのか??」
「してないわけじゃないけど、私たちはどんな人が相手だって負けるつもりはないよ お兄ちゃんたちと全力で戦える瞬間を楽しみにしてるから!!」
「そっか…… でも今度は絶対に負けないからな!!」
「うん!! 望むとこだよ!!」
そんな話をしていると、開始15分前にセットしていたアラームが鳴った。
「んじゃあ、彩音 今日も頑張ろうな」
「うん!!」
俺たちは食べ終わった食器を食洗機に入れて、お互いの部屋へ行ってゲームを起動した。
俺たちはスクリムが終わった後、反省会ということで共有サーバーに集まった。
可憐と俺は岩の上に座って、レインは瓦礫の上、雪奈はスナイパーライフルと一緒に遮蔽物の壁に横たわった。
「ふぅ…… とりあえず全勝」
「ないすだよ〜」
「いいゲームでしたね!!」
「だが…… ディネアに通用すんのかよ、これ」
「わかんないけど、多分いけると思う…… とりあえず全勝のパーフェクトゲームなんだ ある程度は通用するだろ」
俺たち『EGC』は北アジア予選前日のスクリム、3−0のパーフェクトゲームで終わった。
「明日の立ち回りはこの感じでいいか??」
「うん、いいと思う〜」
予選は全勝しないといけないので、安定重視の4人で固まって俺とレインの前線に可憐と雪奈がカバーする立ち回り。
これなら、ミスしても巻き返しが効きやすくて最悪無理矢理でも延長戦に持ち越して倒す。
「ただ、ディネアさん…… 別次元の強さですけど、悠也くんいけますか……??」
「やれることは全力でやってあいつを倒すつもりだ、あいつに負けるようじゃ世界1になんてなれないからな」
「そうだね〜 まあとりあえず最後の作戦会議は明日集まったらで〜」
明日、予選開始は11時からで決勝は4時頃開始。
事務所に9時頃集合なので、機材のセッティングや調整込みでも30分は予選前にあるので早めの解散をすることにした。
実際時刻は9時半を過ぎていた。
このまま調整や練習をしたら、確実に1時を越えるし多分寝坊するので懸命な判断だろう。
それに俺たちは明日のために、チームとなったあの日から鍛えてきた。
努力を怠ったつもりはない、絶対に明日の予選は突破してみせる。
「んじゃあ みんな、おやすみ」
「おやすみ〜」
「おやすみなさい!!」
「寝坊すんなよ」
俺たちは解散して、俺はゲームと通話アプリを落とした。
「んじゃ、風呂でも入るか」
俺は軽いストレッチをしたのち、スマホを開くと通知が3件届いていた。
試合中、集中力が切れない用にミュートモードをしていたので気が付かなかったが相手は緋奈、美佳、有栖の3人からだった。
「なんだ……?? ってか、9時7分って最終戦始まったばっかりじゃん」
内容を確認すると、3人とも彩音が変だっていうような内容のメッセージだった。
試合結果をリザルトで確認すると、彩音たちはスクリム始まって以来初めての0−2の敗北をした。
まあ相手が昨年2位のマリベルだから、流石の彩音も調子が出なかったんだろうと思いつつ、俺は彩音の部屋のドアをコンコンとノックした。
ノックをしても返事がなかった。
流石に完敗したことで落ち込んでいるだろうとも思ったが、緋奈たちが変だということが違和感だった。
俺は状況説明が上手いであろう美佳に、『どういうことが変だったの??』と聞くと2戦目から返事がなくて操作もしていないらしい。
回線のエラーなどは、俺が普通にできていたので問題ないと思うので、何か理由があるんだと思った。
俺はとりあえず、彩音の部屋のドアを開けた。
「……彩音!!」
彩音は大粒の涙を流しながら、パソコンデスクの前にうずくまっていた。
※後書き
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