第80話 勝てるさ、きっと

「なあYUU、いい加減お前の妹たちと戦わねぇのか??」


 APAC NORTH Champions Leagueグループ発表の前日、俺たち4人で深夜に演習場の共有サーバーで練習しているとレインが言った。


「確かにそうですね…… あいうえクランの皆さんの戦う姿…… ぜひ戦闘中に撮影してぐへへ……」


「雪奈は黙って、まあ確かにボクたち2人だったときも彩音ちゃんたちと直接対決はしてなかったよね〜 何か理由があるの??」


「彩音たちとやり合うつもりは、今のとことない」


 俺はそう言ってサブマシンガンを高速移動をして、アクロバットに飛び回るBOT全弾命中させてパーフェクトの文字が表示された。

 その姿を見て、雪奈はパチパチと手を叩いた。


「なんだ、やけに弱気だな さてはまた負けるのが怖いのか??」


「いいや、そうじゃねぇ 確かに今の俺たちでも勝てるか五分五分だと思う、でもそれだけじゃ戦わない理由にならない 何せ戦えば戦うほど、お互いがレベルアップするんだからむしろやった方が得だろう」


「なら、なぜで戦わないんですか……??」


「まあなんというか…… あいつらと緊張感のある本気で勝負がしたい、それが叶うのは北アジア予選か世界大会だろ ならその時までとっておきたい」


 俺がそういうと、可憐がふっと笑った。


「いいね〜 まあアジア予選の振り分け次第かな〜」


「ですよねKARENさん、第1回の昨年のアジア予選と似たような振り分けになるのか、または完全にランダムの振り分けになるのか全くよめねぇ」


「敬語はいらない可憐でいいよ〜 本名だし、多分レインくん年上だろうし〜」


「え、そうですか…… ちなみに大学1年です……」


(大学生なんだ…… てっきり25くらいだと……)


(見ないな〜)


(3つ上には見えないです……)


 俺と可憐と雪奈は3人で顔を合わせ、心の中で同じようなことを思った。


「年上じゃん、私たち高1だよ〜 先輩だね〜」


「そ、そうですか…… ってYUU、お前の少し前のSNSで喧嘩売られた時の対応が幼いのも納得だな、中3の時は誰でもイキリたくなるもんな」


 レインは俺が年下と知って、SNSで荒れてた時のことをいじってきた。



「うっせぇよ、それに可憐と雪奈は引いた顔すんな!!」


「だって〜 まあ悠也が中学生の時どんな感じだったのかな〜とは思ってたけど、実際にそうだとちょっとね……」


「引きました……」


「あーもう、そのことはいいから!! 大会のことを話そう」


「まあこの辺にしといて…… レインさん、昨年はどんな感じの振り分けだったんですか??」


「さあな昨年はAPAC NORTH(北アジア)とAPAC South(南アジア)の合同リーグだったから全く読めねぇ」


 明日発表のアジア予選は20チームで、予選はABCDの4つのグループに分けられる。

 その4つのグループで5連勝したチームが決勝ラウンドに上がり、AはB、CはDと対戦して勝った方が世界大会の権利を得る。

 

 昨年度はまだプロチームの数が少なく、APAC South(南アジア)と合同リーグ(20チーム)で上位4チームが世界大会へ行くルールだったが、今年は分けられての2チーム上がり(向こうも同じルール)なので相対的に難易度は上がった。

 そんな敗北は許されない試合で、彩音たちと全力を出し合って戦いたい。


「悠也はどう思う??」


「まあ昨年APAC NORTH(北アジア)から世界大会へ行ったグランディネアとマリベルの2チームは多分別グループ確定として、俺たちと彩音たちは新しいチームだから予選では当たらずに決勝か、または案外初戦で当たったりして」


 昨日発表されたアジア予選前日の最終スクリムの3試合も、彩音たちとは戦うことはないらしい。

 なので案外1回戦で当たる、みたいなのもあるかもしれない。


「あーちゃんたちは昨日の配信を見た感じ、前の配信の時よりもレベルアップしていました!! 何があったんでしょうか……」


「……」


 俺は雪奈の発言を聞いて、目を逸らしてエイム練習を続けた。


(この前の合宿で練習したことを活かしてレベルアップしてるんだな…… 歴の短い雪奈でもわかるくらいあの子たちは進化してるのか、教えた甲斐があったな……)


 俺が彼女たちの成長に心の中で喜んでいると、隣に可憐がきた。


「悠也が何をしたのかわからないけど…… そういえばいうの忘れてた、とりあえず外出許可はもらったよ〜」


「まじか、それはよかった」


「可憐ちゃん、一緒にスタジオで大会に出られるんですか!!」


「しゃあ!!」


 俺たちは可憐がstartubeのスタジオに行けることを知って喜んだ。

 正直行けるか怪しいと心で思っていたが、安心した。


「一応、心拍数が上がったのを確認するために計測器をつけるけど、まあいつも通りプレイできる」


「そっか、無理しすぎないで全力で頑張ろうな」


「うん〜」


「ちなみに悠也的には、彩音ちゃんたちには勝てそう??」


「どーだろうな……」

 

 俺たち個人の実力なら、彩音以外のみんなよりは上だが彼女たちの強さは連携力、俺たちも最近はマシになってきた方でも彼女たちよりも動ける自信はない。

 それに今の彩音は未来視の弱点の近接戦も強くなってきたので、成長した俺や病気悪化前の可憐と互角かそれ以上だ。


 でもだからと言って、俺はもう二度と彩音に負けるつもりはない。


「まあでも…… 俺たちなら勝てるさ、きっと」




※後書き

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