第79話 私もあなたのような兄が欲しかったです

「理由か…… なんでだろうな……」


「お兄さんは敵チームなのに、合宿の練習もしっかりと教えてくれました こういうのは利敵行為ではあると思います」


「ん〜まあ確かにそうかもしれないけど、別にそこまで考えてないな……」


 俺がそういうと、美佳は俺の横にちょこんと座った。


「どうして、私たちにここまでしてくれるんですか??」


「単純に彩音に頼まれて、断れなかったかな……」


 俺がそういうと、美佳はクスッと笑った。

 

「お兄さんは本当に、彩音ちゃんに対して甘々なんですね……」


「シスコンで悪かったな」


「でもいいな、私もそういうお兄ちゃん欲しかったです」


「美佳ちゃんって一人っ子なんだっけ」


「はい」


「俺と彩音は喧嘩とかしないけど、男女の兄妹って喧嘩することがあるらしいけどね」


「まあでも、お兄さんみたいな人が兄に欲しかったです」


「別に俺が兄でいいことなんて、そんなに無いよ」


「そうですか?? 彩音ちゃんはお兄さんのことをすごい優しいって、いつも話していますよ」


 美佳はそう言って、俺の肩に横たわった。


「どうしたの??」


 美佳の方を見ると美佳はあくびをし、メガネをあげて眠そうに目を擦っていた。

 

「……眠くないです」


「それは無理あるだろ…… まあいいや、肩を貸すから布団のとこいくぞ」


「……はい」


 俺は美佳に肩を貸して、布団の方へ向かった。

 布団を見ると、彩音、緋奈、有栖の3人が幸せそうに寝ていたので俺は緋奈の隣に美佳をおろして上から布団をかけた。


「メガネ、そこに置いておくね」


 俺は美佳のメガネを取って、枕の少し上にあったケースの中にしまった。


「ありがとうございます……」

 

「いいよ、別に」


「最後に聞いてもいいですか??」


「ん、なんだ??」


「今回の合宿はどうでしたか??」


「そりゃあ、楽しかった…… ありがとう」


「それは…… よかったです…… おやすみなさい、お兄さん」


 美佳は俺の返事を聞くと、ぐっすりと眠りについた。


「どうして……か、本当に、どうしてなんだろうな……」


 俺は大好きな彩音の頼みだから叶えてやりたいという気持ちもあるが、みんなが成長した姿を見てみたいという戦闘狂みたいな考えもあった。


 実際、中学1年でここまでの実力があるなら1年以上練習を続ければ、世界大会優勝も狙えるくらいの才能があると思う。


 多分遊びとしての合宿だと思うが、夕飯までの時間に強さを求めて俺に質問をしてきた、そんな彼女たちの背中を押してあげたい。


 それと俺は純粋に彼女たちが好きだ。

 ろくでなしで、今まで親以外の人間に愛されたことのない俺のことを、彩音以外の3人も兄のように接してくれているので、気のせいだと思うが彼女たちの成長を見守る義務があるように最近感じてきた。


「まあ、そろそろ寝るか……」


 俺はそういい、彩音たちが寝ているところを一目見て自分の枕と座布団のある所へ行った。

 

 座布団は質が良くて、マットレスのように柔らかくて寝っ転がると次第に眠りについた。







「ん……」


 カーテン越しに太陽の光が入って、俺は目を覚ました。

 

 目が覚めると、隣に誰かが横になっている感覚がした。

 細目で確認する限り、金髪の長い髪で女の子特有のいい匂いがする。


 擦ったのちに目を開けると緋奈が横に寝っ転がっていて、帯が解けて上着の着物が脱げかけのような状態になっていた。


「え…… は…… なっ……」


「あっはん〜 にーちゃん、夜は凄かったね〜 本当にいろいろと凄かったよ……」


「え、あっ…… え??」


「にーちゃん…… 責任とってね……??」


「ちょ、ちょっと 待て!!」


 俺はビックリして、自分の物を確認する為に目線を下げた。

 下を確認したが、スボンは脱げていなかった。


「ちょっと…… にーちゃんの変態……」


 緋奈は顔を真っ赤にして、目を逸らしながら俺に言った。


「誰のせいだよ!!」


 俺と緋奈が会話をしていると、美佳が後ろから来て緋奈の着物の首を元を掴んで持ち上げた。


「ちょっと緋奈、お兄さん起こしてとは言ったけどドッキリ仕掛けろとは言ってないわよ」


「ちぇ〜 にーちゃんに責任取らせようって思ったのに〜」


「……なっ、なっ何の責任よ」


「それはもちろん…… いや、何言わせるんだよ 美佳の変態!!」


「あんたがやり始めたんじゃない!!」


 緋奈と美佳が言い争っていると、有栖と彩音も目を覚ました。


「おはよ〜 みんな、昨日は早く寝ちゃてごめんね〜」


「朝から…… うるさい…… 3人とも…… 喧嘩は外でやって……」


 彩音は目覚めがいいのか笑顔だが、有栖は怒った表情をしていた。

 戦場で見る鋭い瞳を見て殺気を感じ、俺たち3人は1列に並んだ。


「「「ご、ごめんなさい」」」


 (って…… いや、これ俺悪くなくない??)


 俺は寝起きが悪い有栖にビビって、緋奈と美佳と同時に謝ったが冷静に考えると全然俺は悪くない気がする。


「にーちゃん、大丈夫だよ〜 何にもしてないから!!」


「お、おう…… ならよかった……」


 さすがに冗談だと思っていたが、安心した。


 こんな感じで1泊2日の楽しい合宿は幕を閉じた。

 



※後書き

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