第78話 あんたが1番モテるでしょ……

「待て待て、俺も一緒の部屋は流石にまずいだろ……」


「……え、つまり手を出すってことですか??」


 美佳は俺の方を見て、引いたような表情をした。

 他の3人も俺の方をじーっと見つめた。


「出さないから!! っていうかなんで他の部屋使えないんだよ!!」


「だって、貸切状態なんて基本的にないからフローリングの部屋はワックスがけで、和室のフロアも張り替えしてるんだよ〜」


「お、おう…… なるほどな…… それは仕方ないか」


 からかうためとかじゃないかと思っていたが、案外真っ当な理由で納得してしまった。


「みんなはどうなの〜 にーちゃんと同じ部屋なの」


「私は別に気にしないよ、兄妹だし」


「全然…… いいよ……」


「まあ、仕方ないですよね わざわざきてもらった方に外で寝ろなんていうわけにもいきませんし」


 彩音たち3人は俺が同じ部屋で寝ることを了承してくれた。


「んじゃあ、決定ね!! にーちゃんもおいで〜」


「俺はまだいいって…… ちょ、ちょっ……まって」


 緋奈はそう言って俺の手を引っ張って部屋の中へ行った。




 部屋の中へ行くと、大きな布団が敷かれていて枕が5つあった。

 俺は大きな布団を見て、違和感を感じた。


 (あれ……?? なんかおかしくない……??)


 よく見ると1つの大きな布団があるだけだった。

 何が言いたいのかというと、布団自体の大きさは十分でむしろでかいくらいだが、端っこにいたとしても誰かしらと添い寝のような形になってしまう。

 彩音は兄妹だからギリギリセーフだとしても、他の子との添い寝は非常にまずい普通に捕まる。


「ちょっと待て!!なんで1つしかないんだよ!!」


「これしか用意できなかったんだよ〜 にーちゃん、文句いわないの〜」


「それは無理あるだろ!! まあいいや…… 俺は部屋の隅で寝るから」


 俺は枕を1つ手にとって、部屋の端っこに置いた。


「お兄ちゃん、寒くない??」


「いや、大丈夫 もうすぐ夏だし全然寒くないよ」


「にーちゃん、いいんだよ?? 私の隣でも〜」


 緋奈は誘惑するような口調で俺に言った。


「それは遠慮しておく……」


「まあ…… おにーさん可哀想だし…… 座布団はあげるね……」


 有栖は押入れの中から座布団を2枚取り出して、俺に渡した。


「ありがとう」


「いえいえ……」


「まあいいや〜 それよりみんな〜 せっかくだし恋バナとかしない〜??」


 緋奈はそう言って、大きな布団のど真ん中に寝っ転がった。


「そういうあんたが、一番モテるでしょ」


「え、そうなの??」


 俺は緋奈が1番モテるということに驚いた。



「うん…… この間も…… 告白されてた……」


「う、うるさい!! うるさい!! クラスの子達は恋愛対象に見えないから!!」


 緋奈は顔を赤くしながら言った。


(告られたの事実なんだ……)


「いや…… あんたがしよって言ったんでしょ……」


「私のはいいから!! にーちゃんはなんかないの??」


「えっ、俺……??」


 俺が反応に困っていると、俺の前に緋奈と美佳と有栖が寄ってきた。

 彩音は少し恥ずかしそうな表情で、遠くから俺の方を見ていた。


「いや、俺はモテないからな??」


 俺がそういうと、目の前の3人はだよねーみたいな表情でうんうんと頷いた。

 そこは否定してほしい。


「お兄さんって、どういう方が好みなんですか??」


「俺の好みか……」


 俺の好みは優しくて、一緒にいて楽しくて、俺のことを大切にしてくれる人が好きだ。

 俺は自然に彩音のいる方を見た。


「あれ……?? 彩音寝てない??」


 彩音は布団のに体育座りのような姿勢で眠っていた。


「まあ、疲れてますもんね」


 夕飯までの時間、フルで頭を回転させてランキング戦したのちに緋奈、有栖、美佳の3人にキャラクターコントロールの上級テクニックや小技を教えた。

 ただでさえ彩音の未来視は疲れが溜まりやすいので、むしろお風呂で寝ていてもおかしくないレベルだ。


「そうだよね〜 あやねんの寝顔かわいい〜」


 緋奈は彩音を抱っこして動かして、枕の上に頭を置いて布団をかけた。


「彩音ちゃん寝たけど…… 何かする…… 緋奈……??」


「緋奈……??」


 美佳と有栖と俺が立ち上がって布団を確認すると、彩音を抱きしめるかたちで緋奈も眠ってしまっていた。


「寝たのかよ!!」


 さっきまで元気だった緋奈が幸せそうな表情で爆睡してるのを見て、思わずツッコんでしまった。


「いつもですよ、むしろ彩音ちゃんよりも緋奈が真っ先に寝ます」


「うん……」


「そうなんだ…… 2人は眠くないの??」


「私は眠くありません、有栖は??」


「ふわぁ〜 少し…… 眠いかも……」


 俺が質問すると、美佳は眠くなさそうだが有栖はあくびをした。


「そう、無理しなくてもいいのよ??」


「大丈夫…… じゃないかも…… おやすみ……」


 有栖はそう言って、その場で横になって眠りについた。

 俺は有栖を抱っこして、彩音たちの寝ている布団の中に入れた。


「美佳ちゃんは眠くないの??」


「私は大人なので、眠くありません」


「そ、そっか……」

 

「お兄さんに聞きたいことがあったんです」


「なに??」


「どうして、私たちにここまで優しくしてくれるんですか??」


 美佳は真面目な表情で俺に質問した。




※後書き

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