第72話 一瞬だけかっこよかった

 時刻は11時、彩音たちが解散したのち俺たち4人は作戦会議をしていた。

 

「……もういい、仕方ねぇ 俺も競技はしたいから力を貸してやる」


 レインは悩んだ末、仲間になると言った。


「お、話がわかるやつで嬉しい」


「言っておくが、俺はあくまで可憐さんの指示にだけ従う お前らは俺に指図すんじゃねぇぞ!!」


 レインは俺と雪奈に向かってビシッと言った。


「「はいはい」」


 面倒な人だなと思い、俺と雪奈は適当に流した。


「そういや、お前らのチーム名ってなんだよ」


「「「……」」」


 レインにチーム名のことを聞かれた瞬間、俺たち3人はギクっという表情をした。

 俺たちは決まっていないので、答えずに目を逸らした。


「おいおい…… 今週末だってのにまさか決まってないのかよ……」


「っていうことで、これから決めよ〜」


 可憐はそう言うと、可憐のアバターの後ろにホワイトボードが出現した。


(((唐突すぎる……)))


「ん〜 みんな何かいい案ある〜??」


「とりあえず、unknownだけは無しだな」


 俺がそういうと、雪奈は不思議そうな顔をした。


「なぜですか??」


「なんでって…… いやあまりにも適当だからな…… 世界一になるんだから、相応の名前がいい」


「まあね〜 2秒で考えた〜 いえい」


 俺の後ろで可憐がピースしながら、くでーと岩に座った。

 自由気ままにくつろいでいる可憐を見て、レインが俺の横に来た。


「……なあ、あれが可憐さんなのか??」


「いや、俺はこの可憐しか知らないからどーだか……」


「なんというか 冷静でクールな人だったんだが、どうしてこんな緩い人になったんだ……」


「わかんない 何があったかは俺も知らないけど、ゆるキャラみたいで可愛いだろ」


 俺がゆるキャラというと、聞こえていたのか可憐の方からリボルバーの弾丸が飛んできた。

 俺は首を横に倒してギリギリ弾丸を回避した。


(あっぶな…… 彩音に教えてもらった未来視でも、一瞬遅れてたら避けられなかった……)


「ゆるキャラっていうな、怒るよ〜」


「すいませんでした……」


 俺は速攻で可憐に謝った。


「まあこの辺にして話を戻すよ〜 とりあえず悠也、どんなのがいい??」


「ん〜 そうだな…… とりあえず英語のやつがいいな」


「「「厨二病……??」」」


「だから違うって!! FPSゲームのチームなんだからT〇Mとか○Rみたいなのがいいだろ」


「まあ…… そこは一理ある」


「ボクもそういうのがいい〜」


「私はチームのことよく知らないのですけど…… 確かにいいですね!!」


 俺が意見を出すと、3人は賛成してくれた。


「まあとりあえず、俺が考えていたチーム名を発表する 名付けてチーム『EGC』」


「EGC…… どういう意味〜??」


「EGC、これは『egoistic』を短く3文字に圧縮したもの egoisticの意味は『自己中心的』だな」


 俺が意味のことをいうと、3人はふふっと笑った。


「悠也じゃん」


「お前じゃん」


「悠也くんのことですか??」


 3人は俺の方を見て、いじってきた。


「お前らって、本当に酷いやつだよな…… まあいいや チーム名の由来は俺のわがままで可憐を誘った その時からこのチームは始まったというのが由来だな」


 俺が由来について話すと、レインが俺の胸ぐらを掴んで俺の体を持ち上げた。


「なんだ、やっぱりお前のわがままに付き合わせたんじゃねぇかよ!!」


 俺が知らねーと言わんばかりに、可憐の方を見ると可憐はリボルバーを構えてレインの腕目掛けて放った。

 放たれた弾丸は、レインの腕に直撃して俺とレインは地面に倒れた。


「レインは黙っていて あの時、あの瞬間がボクの人生を変えた、ボクの大切なものだから……」


 可憐は真剣な表情で、レインに言った。


「そうでしたか…… すみません……」


「まあレインは知らないもんね〜 これからは気をつけてほしい〜」


 可憐はそう言って、倒れているレインに手を差し出した。

 レインはその手を取って、立ち上がった。


 (なんか嬉しいな…… 本当にあの時、可憐のこと誘ってよかった)

 

「そっか、可憐はそう思っていたんだ……」


「うん、悪い??」


「いいや…… なんかそう言ってくれて嬉しいなって思ってさ……」


「そう…… 本当にあの時の悠也は、一瞬だけかっこいいなって思ったよ〜」


「あはは、冗談きついぜ 常に俺はかっこいいだろ」


「いや、全然」


 俺が渾身のボケをすると、可憐は真顔で手を左右に振って完全に否定した。


「なあ、YUUって多分モテないよな なんつーか下手っていうか、なんというか……」


「そうですよね…… なんというか、女心わかってない感じが伝わってきます……」


 雪奈とレインはこそこそと、俺の方を見ながら話していた。

 

「お前ら俺を悲しい人を見る目で見ないでくれ!! ごほん…… 何度も話が逸れたが、チーム名はこれでいいか??」


 このままだと、俺のチームでの立ち位置が無くなりそうに感じたので俺は強引に話を変えた。


「いいよ〜」


「私はなんでも!!」


「異論無し」


「んじゃあ、チーム『EGC』として これからもよろしくな」


 こうして曲者4人が集まったチームは、世界最強への1歩目を踏み出した。

 



※後書き

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