第73話 お兄ちゃんに頼みがあるの……

「よし…… とりあえず全勝だな お疲れ」


「おつ〜」


「お疲れさまです!!」


「今度は俺にもっとキルさせろよ」


 俺は通話アプリを消して、トークルームから退出した。

 俺たちチームEGCは第2回スクリムで3勝0敗、相手は全員アジア予選落ちのチームとはいえプロ相手に3−0は自信がついた。


 SNSのトレンドに『YUU』と『KAREN』の名前があった。

 詳細検索をすると、ラリーを筆頭に世界各地のプロたちが俺たちのチームを配信などで話題に出していて注目を集めていた。


(え…… 可憐ってEMEA(欧州・中東・アフリカ)やAPAC South(南アジア)のプロとも知り合いなの…… まあ世界王者ラリーがフットワーク軽いから、プロの友達多いらしいけど、その知り合いの可憐も世界各国のプロと知り合いなのか……)

 

 とりあえず来月のアジア予選前日の最終スクリムまでに、もっと連携が取れるように練習をする。

 課題は見つかった、あとは修正をすることができれば確実に勝てる。

 

 そんなことを考えていると、コンコンと俺の部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 俺はゲーミングチェアから立ち上がって、ドアの前に行くと彩音が立っていた。


「どうした??」


「あ、お兄ちゃん スクリムお疲れさまー ちょっと、お兄ちゃんにお願いがあるんだけど……」


「ん?? ああ、いいよ とりあえず中で話そうか」


 俺と彩音は部屋に入って、ベットの上に2人で座った。


「つーか彩音たちのチーム強すぎだろ…… 今のとこ6−0って、本当にすごいよ」


 俺たちは再結成したので、前回のレートが1からとなってしまったので今回3−0したけれどレート順位は9位。

 彩音たちは6−0でグランディネアや、マリベル(前回のアジアから世界大会に行った2チーム)に次ぐ3位で、本当に始めてから1年経過していないとは思えない実力だ。


「運が良かっただけだよ、それに私たちは上位2チームに当たっていないし、次くらいには負けちゃうかもよ」


「いや、彩音ならきっと勝てるさ なんてたって、自慢の妹だからな」


「そう?? えへへ〜」


 俺が彩音を褒めると、彩音はニコッと笑った。


「んでさ、お願いってなんだ??」


「あのさ、お兄ちゃんさ…… 私たちのチームのコーチになってくれない??」


「コーチ?? いや、彩音たちは十分強いから必要ないと思う むしろ俺の意見でプレイが歪むだろ」


「いや、そんなことないよ それに多分だけど…… 私たちじゃ1位の人に勝てないと思うの……」


「グランディネアか??」


 俺がそういうと、彩音はスマホの画面を俺に見せた。

 スマホ画面には前回のアジア予選でグランディネアが無敗で、1位優勝するところが映っていた。


「最近調べたの、運がよく6−0だから今の私たちでもアジア1位になれるんじゃないかって…… でも、私たちの力じゃ多分勝てない…… だから、お兄ちゃんの戦い方や経験を私たちみんなに教えてほしい」


 彩音はそう言って、俺の手をぎゅっと握った。

 初めて彩音にゲームのことで頼られた気がする。


 いつも全てが俺より上手くて、学びを得ているのは俺の方なのに今回は頼ってきた。

 どうやら流石の彩音でも、アジア最強のあいつには勝てないと思うらしい。


 俺もグランディネアに勝っていないから力になれるかわからない、でも彩音の真剣な表情を見るに絶対勝ちたいという気持ちが伝わってくる。


 確かに彩音たちはライバルだけど、可愛い妹の頼みを断るわけにいかない。


 ここは久しぶりに、頼れるお兄ちゃんになれるチャンスだと思った。


「まあスクリムもしばらくないし、俺にできることがあるかわからないけど…… 彩音に頼られたら仕方ない、いいよ」


「よかった〜 なら、来週の土曜日の強化合宿にお兄ちゃんも来てね!!」


「……え??」


「startubeの事務所で1泊2日、みんなも来るからよろしくね!!」


「……はい??」


 状況が読めないが、流れで女子中学生4人と俺はお泊まり会をすることになった。


 



 1週間後の土曜日、昼ごはんを食べた後に俺と彩音がstartubeの事務所へ行った。

 俺と彩音は自動ドアを通って、受付に向かった。

 

「悠也さん、彩音さんお待ちしておりました そちらのエレベーターで6階に機材は用意しております」


 受付の女性の方はそう言って、エレベーターの方を指差した。


(彩音はメンバーだからあれだけど、俺に対して身分確認とかしないのかよ…… セキュリティが緩いのか、俺が保護者みたいな扱いなのか…… まあ後者だろうけど……)


 

 俺と彩音がエレベーターを降りて、廊下を歩いて3つ目のドアを開けた。

 

 緋奈たち3人はすでに集まっていて、パソコンが4台ある部屋でゲームをしていた。


「にーちゃん!! 来てくれたんだ〜 よろしくね〜」


 緋奈はゲーミングチェアから立ち上がって、俺の腕を組んで喜んだ。


「来てくれたんですね、今日はよろしくお願いします」


「おにーさん…… よろしくね……」


 美佳と有栖も立ち上がり、俺の前に来てお辞儀をした。


「俺に教えられることがあるかはわからないけれど、よろしく」


 こうして、第1回あいうえクラン強化合宿(お泊まり会)が始まった。



※後書き

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