第66話 最強と最恐

「そろそろだな……」


「うう…… なんか緊張してきました……」


 学校が終わったのち、俺と雪奈はプライベートマッチの訓練場にいた。


 可憐は母がお見舞いに来ているみたいで、夜の時間しかできないらしい。

 急な出来事で仕方が無いので、俺たち2人ですることになった。


 時間は5時30分集合ということで、そろそろ来るだろう。


「まあ俺が基本話すから、雪奈は立っているだけでいい 下手なことは言うなよ」


「私を誰だと思っているんですか!! 任せてください!!」


 俺たちがそんな会話をしていると、レインが参加したというログが出た。


 俺と雪奈が屋外訓練場の部分に座っていると、後ろから足音が聞こえて振り向くとそこにはレインがいた。


「ひっ、ひいっ……」

 

 雪奈は怯えて、全力で走って俺の後ろに隠れた。


(おいおい…… ってかでっけぇな……)


「対面して話すのは初めてだな…… 初めましてレイン、俺はYUU」


「あ?? てめぇには用ねぇよ」


 レインはそう言って、あたりを見回していた。


「は??」


「俺はKARENさんに用があってきた、お前らの世界大会ごっこなんかに付き合うつもりはねぇよ」


「……おい、今なんつった??」


 俺は武器ストレージからサブマシンガンを取り出して、レインの頭に突きつけた。


「よく聞こえなかった、もう一度いえよ…… 3位」


 俺がレインを挑発すると、レインは拳を握りしめて俺の頭目掛けて殴りかかった。


 俺はレインのパンチを避けてサブマシンガンを頭に目掛けて放ったが、レインのパンチとほぼ同時に放った蹴りが俺の胴体に当たったことで軌道を逸らされ、放った弾丸はレインの胴体に当たった。


「ちっ……」


「やっぱり、てめぇは気にくわねぇ さっさとKARENさんを出せよ」


 レインは半分キレながら俺に言った。


「あいつは今、用事で席を外してる ってかKARENに何の用だ」


「うるせぇ、てめぇには関係ねぇ 俺個人の問題だ」


「一応俺がリーダーだ リーダーの俺に理由を言わない限り俺はKARENとお前を合わせない」


「お前がリーダー、冗談きついぜ KARENさんがお前みたいなネットイキリの部下になるわけないだろ……」


「KAREN、YUKIは部下じゃない リーダー権を持つのは俺だけど、2人と俺の立場に上下はない」


「それはそうだろうな」


「……何が言いたいんだよ、はっきり言えよ」


 俺がそういうと、レインは頭を抱えた。


「てめぇはどこまで知ってるんだよ……??」


「何が……」


「KARENの病状のことだ、お前はどこまで知ってんだよ……」


「……」


(可憐はレインのことを知らない感じだったが、レインは可憐の病気のことを知ってるのか……?? いや、だがここで下手なことをいえば可憐のプライバシーを害するから下手に出るか……)


「……いや、噂程度でしか知らない KARENは俺に詳しくは話していない」


「その程度の知識なら、お前らKARENさんから手を引け あいつは重い病気を持ってる」


「いや、手を引くつもりはない 確かに病気を患っていることは話していた気もするが、何よりもあいつの意思を俺は尊重したい」


「俺はKARENさんに、無理をしないでいてほしいんだよ……」


「……どういうことかわからないが、その情報はどこから仕入れた」


 俺はとりあえず、探りを入れてみることにした。


「世界王者ラリー 俺はアジア1桁キープを条件に最もKARENさんと近いプレイヤーに何故KARENさんがランキングを走るのを辞めてしまったか、それを教えてもらう交渉をして話してもらった」


「……」


「ラリーが言うには、KARENさんはソロで維持して世界大会の権利戦の出場券を手に入れるつもりだったが、病気の悪化で絶望してもう二度と立ち上がれないほど落ち込んでいると言っていた そんな彼女をお前が説得できるわけねぇ…… 何か裏があんだろ」


「……」


 レインはおそらく、俺と可憐が出会う前のことをラリーに聞いたんだろう。

 確かに最初にあった時はそんな感じだった。


 でも今はそうじゃない。


「だからお前らは手を引け、病弱なKARENさんに無理をさせるんじゃねよ……」


「KARENちゃんは、弱くないです!!」


 俺が後ろを見ると、雪奈が震えながらも立っていた。


「誰だよてめぇ」


「KARENちゃんは、確かに病に苦しんでいるかもしれませんけど…… KARENちゃんは夢を叶えるために諦めたりしません、私やYUU君よりも強い女の子です!!」


「あ?? 病弱なの知ってんのかよ、なら余計に無理させんな てめえらが変なことを吹き込んで、無理な幻想に巻き込むのもいい加減やめろ!!」


 レインは雪奈を威圧するように近づいて、見下ろしていた。

 雪奈は泣きそうになりながらも、必死に耐えて立っていた。


 俺は必死な雪奈、病弱ながらも必死に努力している可憐、そして俺たちのことをごっこ呼ばわりさせたことで怒りが頂点に達して、レインの真後ろに立った。


「なあレイン、タイマンしようぜ」


「あ……??」


「俺が負けたら、KARENから手を引く だが、もしも俺が勝ったら俺の言うことを聞け」


「……条件はなんだ」


「それはKARENに、このリプレイを見せてから決める」


「話にならねぇ」


「怖いのか……?? そうだよな、俺は『ソロ』で2位だけど、お前は選りすぐりのメンバーを集めて『3位』だもんな、せっかく雑魚の意見を聞いてやろうって気になったのに残念だ」

 

 俺がそういうと、レインは俺の胸ぐらを掴んだ。


「おい、誰に物を言ってる 口を慎めよ…… クソ餓鬼が……」


「なら逃げるなよ、そのヤグザみたいな面をぐちゃぐちゃにしてやるよ……」


「上等だ、この野郎……」


 こうして俺とレインは、ソロでタイマンをすることになった。

 



※後書き

読んでいただきありがとうございます!!

よろしければ、左上にあります星をクリックや感想、ブックマークをしていただけると今後の活動の励みになります!!

https://kakuyomu.jp/works/16817330654169878075#reviews

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る