第67話 不覚の一撃

 レインとのタイマンが始まった。

 マップはニュータウン、ビルや駅などのある近代都市のマップだが、タイマンモードのため比較的狭い構造に変化した。


 俺はサブマシンガンを選んだ。

 

(ランキング戦の時、レインはアサルトライフルを使っていた、なら相性のいいサブマシンガンを使うのがベスト)


 俺は武器を持って、大型ビルの前に向かった。


 ビル前に行くと、レインがいた。


(ライトマシンガン…… やばいな、読み間違えた)


 ライトマシンガンはサブマシンガンのような近接武器を近寄らせない弾幕を張る。

 対サブマシンガンに相性がいい。

 

 だがアサルトライフルには火力負けする武器で、あまりタイマンでは使われないので完全に予想外だった。


「ライトマシンガンか、いい判断だな」


「俺は気に食わない人間が2人いる」


 レインはそう言って、ライトマシンガンの銃口を俺に向けた。


「誰のことだ」


「1人はお前」


 レインはライトマシンガンを俺に向かって発砲した。

 俺は彩音から教えてもらった未来視で、弾丸の軌道を予測して一度距離をとった。


「知ってるよ、もう1人は?? YUKIか??」

 

「もう1人は『あ』さんだよ!!」


「なぜだ」


 俺が避けながら質問すると、レインはリロードして再び発報を始めた。


「決まってんだろ、というよりもお前も気にくわねぇんじゃねぇのか??」


「……??」


「あんな、ぽっと出の美少女仲良しチームみたいなのに、俺の3年を費やした実力を軽く越されたのが気にくわねぇんだよ!!」

 

「……まあ 確かにあいつら…… じゃなくてあの人たちはすごいよな……」


 実際俺も始めてから2年(ガチったのは引きこもってから)、レインや可憐は3年ちょっとやっていてこの実力だが、彩音は最近アジア最強のグランディネアにも匹敵すると言われるようになったのにまだ1年も経っていない。

 

 緋奈ちゃんたちも彩音と同じタイミングなのに、プロリーグ連中とも張り合う実力でアジアランキング上位、圧倒的な才能で嫉妬や気に食わないと感じる人もいるのは当然なのかもしれない。


(実際彩音たちじゃなかったら、俺も妬んでいたかもしれないしな……)


「お前はどう思ってんだよ」


「他人の実力に嫉妬する時間があるなら、少しは強くなる努力をしろよ」


 俺はレインの放ったライトマシンガンの弾を壁ジャンプをして回避して遠距離から、サブマシンガンを放ってレインの体力を1割程度削った。


「ちっ……」


 レインは舌打ちをしたのち、再び発砲を始めた。

 俺はこのまま攻めず、再び距離をとった。


「逃げてばかりじゃねぇか、チキン野郎」


「……」


 俺は何も言わず、弾丸を回避しながら走り続けた。


(いい…… これでいい…… そのまま弾薬を使い切れ)


 正直いつもの俺なら、確実に突っ込んで行った。

 ただ、違和感があった。


 それはレインが、防弾装備を着ていて俺のサブマシンガンのダメージを軽減していたことだ。

 本来なら1.5〜2割程度削れるはずだが、1割かそれ以下なので1段階だけ強化している。


 普通タイマンなら、装備よりもグレネードや武器や回復アイテムを買うのが普通で、あまり装備レベルを上げることは少ない。

 強化するにしても、1段階は誤差程度なので2段階上げる方が基本だ(軽減倍率が少し上がってお得)。


 それにライトマシンガンはサブマシンガン側が詰めるのは苦手だが、詰め切ってしまえば勝ち目はないのでカウンターの閃光グレネードなどを持っているような気もする。


 ただ装備強化で体力上げてるので、どこかしらで詰めないと俺が弾切れしてしまう。

 なので、今は待って詰めるタイミングを見極める。


「すばしっこい奴だ」


 レインは再びリロードをして発砲を始めた。

 

 (よし、2回リロードしたな)


 ライトマシンガンは3回目に1回、リロード時間が通常よりも長い仕様がある。

 俺はその隙を付いて、一気に距離を詰めるつもりだ。


 勿論、レインもその事は知っていてグレネードやサブ武器やグレネードなどで妨害してくるだろう。


 ただ俺はスタングレネードを持っているので、これを使って閃光効果でレインの視界を遮って、パルクールや壁ジャンプで妨害を避けて一気に倒す。


「なぜ当たらねぇ……」


「もう少しエイム練習をした方がいいと思うよ」


 俺が弾丸を避けていると、レインは3回目のリロードを始めた。

 その瞬間、俺は一気にレインとの距離を詰めた。


 レインは俺が来るのを分かっていたのか、グレネードを構えた。


 (だろうな、まあそれも読めている)


 俺はレインの腕を狙って、サブマシンガンを放った。

 俺の放った弾丸は、レインの持っていたグレネードに直撃して炸裂した。


 遠目でよく見てなかったが、レインの持っていたグレネードはスモークグレネードでその場に煙が広がった。


(スタングレネードか普通のグレネードで自爆を期待したが、まあいいや……)


 一見スモークの中でレインのリロードを出来るから、俺のミスというか裏目のようにも見えるが、グレネードの投擲モーションをした段階で、リロードはキャンセルされる。


 なので、今から20秒ほど再びレインはリロードをしないといけない。

 

 仮にグレネード等をもう1つ持っていたとしても、接近さえ出来ればスタングレネードを使ってカウンターができる。

 俺はスモークの中に入った。

 

 リロードの音は聞こえない、恐らくもう1つの小道具で時間を作るつもりだろう。


 俺はスタングレネードを構えて、レインに向けて放った。


「うっ……」


 (いける……)


 俺は勝ちを確信して、レインとの距離を詰めた。


「かかったな……」


「……ッ」


 レインは目を瞑りながら、そう言った。

 レインは俺の方を目掛けて、ライトマシンガンを放った。


 (拡張マガジンか……)


 装備強化2段階目をしなかった理由は、弾薬の拡張をするためにポイントを使いたかったからだと理解した。


 (万が一こんな事もあろうかと、詰めすぎなくて良かった)

 

 ただ目が見えない状態で俺に向かって弾丸が飛んできたので、レインの放った弾丸は俺の横や頭上を通り過ぎて当たる気配がしなかった。


 (どこ撃ってんだ??  まあ、ここで仕留める)


 俺がレインの近くにある遮蔽物で壁ジャンプしようとした瞬間、レインの放った弾丸がコンクリートの壁に当たった。

 

 その瞬間、壁が爆発して崩れた。

 俺は壁ジャンプに失敗して、その場に転んだ。


 (何…… 読まれていた??)


「……ッ」


「そこだな、ガキ」


 レインは目を瞑りながらも、俺に向かって弾丸が放った。

 俺は着地硬直で動けず、腹に2発ほど弾丸を食らってしまった。

 


※後書き

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