第59話 浮気はダメ……
雪奈は俺の隣で、過去にあったことを話し始めた。
「私は昔から友達を作るのが苦手で、いつも1人でいました」
「そんな私がある日、なんとなくでstartubeのアプリを入れたんです そしたら急上昇ランキング1位にあいうえクランの配信がありました」
「最初は女の子4人でゲームしていて、楽しそうだなといった感じですぐに配信を閉じようと思いましたが、なぜか配信を閉じずにその日は2時間見てしまっていました」
「当時はランキング戦をしていませんでしたから、あいうえクランの配信は毎日なかったので過去の配信アーカイブを毎日見ていていました そして気がついた時には全部見終わっていました」
「見終わった時に私は、このグループを推すことが生き甲斐だと思いました こんなにのめり込んだのは生まれて初めてです」
「そして彼女たちがやっていたラグナロクフロンティアにも興味を持って、今までもらっていたお年玉を崩して環境を整えて始めてみました」
「初めてやるゲームなので、最初は上手くなかったんですけど 解説動画や配信を見たりしているうちにマスターランクまで行けるようになりました」
「そして私はランキング戦上位32人が出ることのできる大会があって、彼女たちも出ることを知りました」
「ですが、チャンピオンどころかグランドマスターにもなれない私ではランキング上位32人になるのは不可能です……」
「なので私は勇気を出して、SNSで募集をかけてみました」
「募集をかけたら、プロ志望の男性3人が私と組んでくれました」
「俗にいうキャリーといいますか、ブースティング(強い人にランクキングを上げるのを手伝ってもらう行為)のような形ではありましたが、彼女たちの配信時間以外にランキング戦をして無事に一瞬だけ28位になれました」
「私は嬉しかった このまま維持できることができたら彼女たちと試合中のオープンVCでお話しすることができる、そう思っていました」
「ですが、維持をしようと思った矢先メンバーの1人が私に裸の自撮りを要求してきました」
「彼らは私が写真を送らなきゃ、維持を手伝わないといいました」
「私は怖くて、彼らの連絡先を消してしばらくゲームができなくなってしまいました」
「毎日ランキングは下がり、気がつけばチャンピオンから降格……」
「結局私は強い味方に手伝ってもらっただけの、弱い人間だと認めて維持を諦めました」
「そしてランキング残り1ヶ月のある日、えーちゃんがソロ配信をしていた時に質問コーナーをしていました」
「私はえーちゃんに『チャンピオン維持をしたいんですがどうすればできますか??』と質問すると彼女は言いました」
「『残りの時間はまだあるよ…… 諦めなければきっと叶うから、頑張って…… 応援するよ、ふぁいと……』って言われました」
「私はえーちゃんに背中を押されて、ソロで頑張ることを決めました」
「それから私は寝る間も惜しんでランキング戦を頑張りました、生活の全てをランキング戦に注いで戦い続けました」
「結果は大会に出ることは叶いませんでしたが、チャンピオンは維持することができました」
「ですが私はもう少し頑張れば、彼女に会えたって後悔しているんです……」
「長々と話してごめんなさい」
雪奈は俺に謝った。
「いや、話していいって言ったの俺だし謝ることじゃないよ…… 聞いた感じ、雪奈さんはすごいよ」
「……え??」
「いや、キャリーとか聞いた時は言い方悪いけど最低なやつだと思ったよ、でもソロでグランドマスター落ちしたとこから43位まで、ソロで戻すのはとんでもなくすごいことだと思うよ」
「……でも最初は卑怯なことをしていましたよ」
「キャリーの基準は曖昧だからどーでもいいだろ それに俺もさ、あのランキングでアジア1位になれなくて悔しかったから雪奈の悔しいって気持ちは死ぬほどわかるよ」
まあとはいえ、結果が全てだ。
大会も来年のプロリーグまでないし、それに彩音たちはプロリーグに行ったのでアジア予選で18位未満に終わらない限りはプロリーグに居られるので、ランキング戦上がりの大会に出る必要がない。
なので彼女たちに会うにはファンイベントなどに行かないといけないが、今までオフイベなどはあっても顔非公開の彩音たちがひたすら話すイベントみたいなので、握手会みたいなファンと話す機会みたいなのはしばらくないと思う。
(まあ中1だしな…… なんでないのか不思議だったけど、彩音たちの年齢を考えたら妥当なんだよな)
「というか、雪奈はなんであいうえの人と会いたいの?? やっぱり推しと写真撮ったりとか??」
「最初は一緒にツーショットを撮ったり、お話ししたかったんですけど…… 今は……」
「……??」
「私が頑張ろうって踏み出す勇気をくれたお礼を伝えたいからです!!」
雪奈はそう言って、立ち上がった。
「そっか……」
最初はただの限界オタクの人だと思っていたが、雪奈の話を聞いているとどうにか有栖ちゃんに会わせてやりたいと思った。
ファンと推しという関係で、プライベートで会わせるのはいけないことだってのはわかる。
だけど、俺と同じステージで1歩届かなかった雪奈の願いを叶えてやりたい。
「仕方ない、ならさ俺が……」
俺が雪奈に交渉してやろうと、言おうとした瞬間プライベートマッチに『え』が入室しましたの文字が表示された。
「なっ……」
俺が振り返ると、岩の上から鋼鉄の弾丸が飛んできて俺の頭に直撃した。
「ぐはっ……」
「お兄さん浮気は…… だめ……」
スナイパーライフルを持った有栖は、俺にそう告げた。
※後書き
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