第44話 本当の天才

 次の日、ネットを見ると記事は誤報と報じられてネットでは噂となった。

 ただ、こんな感じの事件はネットに関わっている以上避けては通れない道だろう。

 

 彩音に昨日の夜、それとなくグループのことを聞くと、グループ内以外の人とのチームは組まないようにと運営方針が変わったと言っていた。

 アイドルブランドとして活動を強くするという名目だけで、彼女達には炎上のことは伝えていないようだった。


 

「まあ、一件落着…… で済ませるわけにもいかないが、ひとまずは安心かな」


 俺が一息をついて、インターネットを見ているとドアを誰かがコンコンとノックした。


「入っていいよ」


「お兄ちゃん、動画配信サイトの企画で作ったパフェなんだけど食べる??」


 彩音はチョコレートパフェを持って俺の部屋に入ってきた。


「んー ソロランクもいい感じのとこいったし、ありがたくいただこうかな……」


 俺は彩音からパフェを受け取って、スプーンを使って食べ始めた。


「美味しい〜 ありがと、彩音」


「えへへ〜 ありがと!!」


 俺はどうにか、彩音と練習できないか考えていた。

 彩音の未来読み??を俺もできるようになれば、グランディネアにも勝てる希望が見える。


 ただ、前回の炎上みたくなるとめんどくさいからどうにか出来ないだろうか。

 そんなことを考えていると、彩音が俺にスマホを見せた。


「そういえば、お兄ちゃんって私たちのサーバー入るの??」


「ん??」


 彩音のスマホを確認すると、あいうえ運営のサーバーから俺と可憐宛に、メールが送られていた。

 

 詳しい詳細を見ると、運営会社のスタッフが監視の元のサーバーで建前は全国大会練習用サーバー、本当は俺達がやらかさないように見ておくんだろう。


「やべ、ランクしてて見てなかった…… まあ参加させて貰おうかな」


 俺が彩音に参加することを伝えると、彩音は嬉しそうな顔をした。


「良かった〜 昨日も言ったけど、私たちの運営さんがお兄ちゃんや可憐さんとかとやるのは見てる範囲で〜って言ってたから、入って貰えるなら一緒に出来る!!」


「お、おう…… 俺も彩音とできて嬉しいよ」


「んじゃあ、招待後で送るね!!」


「ああ、頼むよ 可憐も多分来ると思うけどできるの金曜日だから、俺から一応招待したってメッセージ入れとく」


「可憐さんともしたいから助かるよ〜 」


 そんな事を彩音と話していると、俺はパフェを食べ終わった。


「ご馳走様でした、美味しかった」


「いいえ〜 んじゃあ私は部屋に戻るね、招待送る〜」


 彩音はそう言って部屋に戻った。


「運営監視か…… 俺や可憐の動きが向こうにバレることで勝ちずらくはなるけど、それ以上に彩音たちの動きを見れるのが大きい」


 冷静に、彩音のキャラクターコントロールは他のプロをも凌駕する実力がある。


 実際にインターネットでも、アジアではグランディネアに次ぐ実力と言われている。


 

 「まじで、どうやったら彩音を……」


 俺が独り言を言っていると、彩音が俺の部屋に戻ってきた。


「ごめんお兄ちゃん、スマホ忘れてた〜 えっと、私がどーしたの??」


「あ、いや…… どーしたら、彩音みたいに弾避けが出来るようになるのかなって思ってさ……」


 俺がそう言うと、彩音は俺がゲーミングチェアに座っているところの横に来た。


「特別に教えてあげる とりあえずマウス持って!!」


「お、おう」


 俺が右手でマウスを握ると、彩音が俺の手の上に手を置いた。


  彩音のスベスベで真っ白な肌が俺に当たって、少しくすぐったい。


「まず大前提として、弾丸はアサルトライフル6種類、サブマシンガン3種類、ライトマシンガンやミニガン系7種類、スナイパー3種類全ての弾丸の軌道と音をまずは覚えて!!」


「……銃声はわかるけど、弾の描く軌道も全部覚えるのか??」


「うん、そうじゃないと全弾回避は不可能だよ スナイパーとか早すぎて見てからじゃ避けようがないからね〜」


 俺は改めて彩音は別次元の存在だと、再認識した。


「確かにな…… つか、彩音はどうやってこの技術を見つけたんだ?? 動画とか??」


「ん〜 始めた頃は動画とかで練習してみたけど、肌に合わなかったからこれとかは独学っていうか自己流だよ〜 」


「嘘だろ……」


 まさかの自己流で俺は驚きを隠せなかった。

 確かに昨年の世界大会で数名はしていたが、企業秘密とかと言っていたり、彩音のように弾丸の軌道を予測すると言っていたがそんなの出来るわけないと言われていた。


 こんなの長年の経験値がないとできない熟練の技だと思うが、始めて1年ほどの彩音ができるのは彼女が圧倒的にゲームの才能がある何よりの証拠なんだろう。


「えっへん!! 凄いでしょ〜」


「あ、ああ…… 凄いよ、お前は……」


 俺は彩音が誇らしげに言っていたので、頭を優しく撫でた。


 そして、彩音の技術を教えて貰ってふと思った。

 俺はこのままで、良いのだろうか。


 確かに彩音に勝つことが何よりの目標だが、この技術が出来なきゃ彩音やグランディネアに勝つのは不可能だろう。


 この間は偶然できたけど、あの日以降全く出来なくなった。

 恐らくは一時的な覚醒状態のような感じで、安定してその形態を維持出来なければ勝利は薄い。


 この技術を手にするには彩音に直接教えて貰うのが手っ取り早いが、兄が妹に教えを乞うのもどうなのかと心の中で葛藤していた。




 

 




※後書き

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