第43話 子供の過ちを許すのも、大人の使命だ
「いきなり取り乱してしまって、申し訳ない…… 」
「い、いえ 全然…… 俺も妹が年上の男の子と遊んでいたら心配になりますから……」
俺は淳一郎さんの向こう側のシングルタイプのソファーに座ると、緋奈ちゃんが俺のほっぺをつんつんと触った。
「え〜 にーちゃんのシスコン〜」
「やめろ」
「えへへ〜」
緋奈ちゃんが俺をいじっていると、コンコンとノックをした後、受付をしてくれた女性の方が部屋に入ってきた。
「失礼します、緋奈ちゃん そろそろ宿題をやる時間ですよ」
「え〜 にーちゃんと遊びたい〜」
「緋奈、宿題はやりなさい」
淳一郎さんが、緋奈ちゃんに宿題をやるように言うと緋奈ちゃんは不機嫌そうな顔をしながらも、俺の膝の上から立ち上がってドアの近くまで歩いていった。
「ちぇ〜 わかったよ〜 んじゃあ緋奈、宿題してくるからにーちゃんは帰ったらダメだらね〜」
「お、おう……」
緋奈ちゃんと受付の方は部屋を出て、俺と淳一郎さんだけの空間になった。
俺は真っ先に頭を下げた。
「本当にすみませんでした!! 俺の不注意で、そちらの事務所に多大なご迷惑をかけて、本当に申し訳ございませんでした」
「……頭をあげたまえ」
淳一郎さんは激怒していると思い、俺はゆっくり頭をあげると、淳一郎さんの表情は反対に申し訳なさそうな表情をしていた。
「君や彩音ちゃんが謝るべきことではない、むしろ謝るべきはこちら側だ……」
「え……」
淳一郎さんはノートパソコンをカバンから取りだし、画面を俺の方に向けた。
俺が画面を確認すると、画面には彩音たち4人の活動内容がまとめられている画像が表示されていた。
「元々、この活動は緋奈がネットで有名になりたいといって3人を誘ったことで始まった企画だ」
「そうなんですか、知りませんでした……」
「2年前、私の動画サイトが世界一の配信プラットフォームになった時、緋奈が小学5年生の時のことだ……」
「パパの動画サイトが世界で1番有名なサイトになったって、本当なの〜??」
「緋奈やスタッフのおかげで、無事に世界一になったぞ!!」
「えへへ〜 そうだ、パパにお願いがあるんだけど……」
「どうした?? 緋奈」
「んーとね、私有名人になりたい」
緋奈は突然、私にそう言った。
「ど、どうした急に…… お小遣いがもっと欲しいのか……??」
「いや、そうじゃないよ」
「んじゃあ、あれか?? 人気俳優の人付き合いたいとか……??」
「そんなのきょーみない、私が有名になりたい理由はね 天国のママに私を見つけて欲しいの……」
「……ッ」
私の妻は、緋奈が3歳の時に病気で亡くなっていた。
「パパは世界で1番のステージを作った、そんなステージで私が歌ったり、みんなで遊んだりしたら、きっとママは喜んでくれるって思うんだ」
「環境は作ることが出来る、ただ運営会社は平等という建前で活動している…… 緋奈が実際に有名になるかどうかは、運だ……」
「でも、私は…… どんな険しい道でも挑戦したい!!」
緋奈は私に、配信者になりたいと言った。
最初はいつもの緋奈のように、1週間程度で飽きて辞めると思っていた。
だが私の予想は外れ、緋奈はみんなを説得させて『あいうえ』クランを作って活動をしたりと自分なりに努力をした。
「私は緋奈の活動を応援するため、事務所を作った それに本名で呼び合わないようにレッスン、SNSの制限などネットの悪い人たちを見えないような仕組みを作った」
「……」
「ただ、私が過保護すぎたのかもしれない 彼女たちが幼いからと言ってネットを制限しているのにも関わらず、彼女たちの行動には制限を設けていなかった 今回の事件は私の責任だ…… すまないことをした……」
「……彩音にはこの事を話しましたか??」
俺が淳一郎さんに質問すると、淳一郎さんは首を横に振った。
「彩音ちゃんにも悪いところがないわけじゃないが、彼女達には重すぎる事件だ 既に向こうのメディアには止めるように指示したから時間が経てば噂となり、インターネットから消えるだろう……」
淳一郎さんはそう言うが、俺は納得がいかなかった。
俺や彩音が1番悪いのに、全てを背負わせるのも違うと思う。
「いいんですか?? 会社の信用やコンテンツブランドを下げてしまって、お金も結構使って貰いましたよね……」
「自慢では無いが、日本人では両手の指で数えるくらいの資産があるから問題はない」
「そうだとしても、俺に償いを……」
「私は娘の大切な友達や君たちを守れれば、それでいい……」
「でも……」
淳一郎さんはそう言って俺の横に来て、俺の頭に手を置いた。
「子供の過ちを許すのも、大人の使命だ」
「……ッ」
俺は淳一郎さんの言葉を聞いて、涙が出た。
「それに君たちは若くして異能レベルのプレイヤーだ、こんな事なんか気にせずに最強の称号を掴んできなさい」
「わかりました……」
「君たちには期待しているよ」
淳一郎はそう言って、部屋を出た。
俺が涙を拭いて座っていると、扉が開いて緋奈ちゃんが入ってきた。
「宿題終わったよ〜 何して遊ぼ〜って、にいちゃん泣いてるの??」
「いや、別に泣いてない 寝不足だからかな……」
「そっか〜 まあいいや、にーちゃん!! とりあえず下の遊べるスペースに行こ〜」
「ちょっ、いきなり引っ張るな……」
緋奈ちゃんは俺の手を引っ張り、下の遊べるスペースに案内してくれた。
※後書き
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