第34話 世界王者からのメッセージ
「わりぃ 俺たちはプロリーグで勝てる気がしないから辞退するわ…… わざわざ選んで貰ったが、これはさすがに次元が違った……」
「……わかりました」
スパイダー、PASERI、クローズの3人は俺の作ったボイスチャンネルから退出してチームは解散となった。
俺たちがグランディネア1人にボコボコにされた後に10位のチームと試合をしたが、チームの空気が悪くて連携が取れず、普通に敗北した。
いくら昨年のアジアリーグ覇者とはいえ、この俺が1人相手にダメージを1すら与えることが出来なかったのはさすがに心に響いた。
「まじで言ってるのか、これ……」
チーム募集も1から、それに世界大会優勝をするなら次元の違うグランディネアに勝てるくらいの実力とメンバーが必要だという条件の厳しさに俺は絶望していた。
「無理だ……」
俺はこの完全に詰んでいる状況で思わず、弱音を吐いた。
今回のスクリムの結果は17位、このままの感じだと世界大会に出場できる2枠に入るのは不可能だろう。
「俺は世界に行けないのか……」
俺は身体が重く、何もする気が起きなくてベッドに横たわった。
「少し寝るか……」
俺は頭がぐちゃぐちゃで何も考えたくなくて、仮眠を取る事にした。
次のスクリムまでに1から仲間集めをして、俺のゲームの腕を本当の強者と渡り合えるほどの上達するための練習をしなければならない。
もういっその事、再び引きこもってプロレベルの実力をつける事にしようかと思ってスマホを横になりながらいじっていると、SNSの通知が届いた。
どうせ、さっきのやつらが俺の悪口でも書いてんだろうと思いながら開くと、通知の内容は昨年度世界王者のラリーからのフォローバックの通知だった。
「は?? えっ…… ちょ…… ん??」
俺は世界で1番尊敬しているプレイヤーからの突然のフォローバックで、さっきまでの落ち込んだ気持ちが吹っ飛んだ。
「待て待て…… 誤フォローの可能性もある」
俺は一旦落ち着き、向こうのミスだと思って他の人の投稿を見ているとラリーからダイレクトメッセージが届いた。
俺は急いで内容を確認すると、メッセージには『 どこ住み??』と記載されていた。
「……偽物か」
一瞬でも本物だと思った俺が馬鹿らしくなり、無視してブロックしようとラリーの偽物であろうアカウントのホームを開くと100万人のフォロワーと公式マークがあった。
「……え?? 本物なん……」
SNSの公認マークは本人の確認書類と、100万人のフォロワーがいないと貰えないので確実に本物みたいだ。
とりあえず俺は東京に住んでますと返事を英語に翻訳して返すと、明日は日曜日だから君の予定がないなら、僕の行きつけの場所に付き合ってくれないか??と英語で返信が来た。
僕がどこですか??と送ると、そこは千葉県の船橋市にある病院の住所のURLが送られてきた。
俺の住む江戸川区から、電車で数十分の比較的近い場所だった。
「総合病院……??」
俺はラリーになんで病院なんですか??と言うと、移動費は出すから、とりあえず昼頃に来て欲しい!!君が求めてる人物はここにいる!!と返信がきた。
「俺が求める人??」
俺はどういう意味ですか??と言って返事を数10分待ったが来ることはなかった。
ラリーのツイートを見ると、日本に来日してるという投稿が新しくされていて、千葉県にある旅館とお酒の写真があったので、確実に本物だということはわかった。
「俺の求める人か…… まあ行ってみればわかるか……」
俺は明日着る服を決めるため、部屋を出て彩音の部屋をノックした。
「お兄ちゃん、今回は初めてのメンバーだったから仕方ないよ…… また次がんばれば……」
「彩音…… 俺に似合う服ってどれだ??」
「え……」
俺が彩音に似合う服を聞くと、彩音は脳がフリーズしたように数秒間動きが止まっていた。
俺は彩音の顔の前で手を左右に振って意識を取り戻そうとすると、彩音は目を覚ました。
「お、お兄ちゃんにか、彼女とかで、でき」
「ち、違うわ!! なんか昨年の世界チャンピオンの人が俺に用事があるっていうから、さすがにいつものパーカーはまずいだろって思ってさ……」
俺がラリーとのメッセージを彩音に見せると、彩音は何故かほっとしたような表情を浮かべた。
「な、なるほどね〜 とりあえず、お兄ちゃんの部屋にあるものを見せて」
「お、おう……」
俺は彩音を連れて自分の部屋に行った。
彩音は俺の部屋のクローゼットを開けて中身を確認した。
「ん〜 っていうかお兄ちゃんもオシャレな服とか結構あるんだね」
「まあな、一応なんかの時のために買ったけど、如何せんセンスが無いからさ」
「そっか〜 あっ!!これとこれとか似合うと思うよ!!」
彩音は真っ白のTシャツと羽織るタイプの薄い水色のシャツとデニムを手に取った。
よく見るオシャレ系男子の格好で、俺には似合わないと思ったが、せっかく彩音が選んでくれたから俺はそれに決めた。
「ありがとな……」
「うん!! 」
俺が感謝を伝えると、彩音は嬉しそうな表情をした。
次の日、運命を変える出来事が起きるということをこの時の俺は考えてもいなかった。
※後書き
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