第26話 推しの寝顔は天使のようだった

 ピピピピ、ピピピピ。

 アラームの音が俺の部屋に響いた。

 

「んんっ…… あ〜もう朝か……」


 時刻は7時半、昨日の夜彩音と母と3人で話しながらご飯を食べた後に、風呂へ入ってからすぐ寝たが寝不足な感じがしてなかなか目が開かなかった。

 とりあえずカーテンを開くと、太陽の光を浴びて目を覚ました。


 彩音は昨日絶対起こしに行くと言っていたが、俺の方が早く起きたようだ。


「SNSは…… 彩音のグループの運営が頑張ったからか、大分落ち着いてるな…… さすがだ……」


 昨日100件ほどきていたメッセージは、メッセージ機能を拒否設定にして対処してから来なくなり、エゴサをすると目に入る程度まで落ち着いた。


「あれ、昨日起こすって言ってたのに、彩音こないな……」


 SNSを5分ほど見て、そろそろ彩音が起こしにくると思っていたがなかなかこないので、俺は今日着る予定だった黒のパーカに着替えて彩音の部屋の前に向かった。

 コンコンと2回ノックしたが反応がなかった、俺は彩音の部屋のドアを開けて中に入った。


 俺は小学生の頃以来、初めて彩音の部屋に入った。

 部屋の中は配信用のPC、観葉植物、水色と白色のキーボードやヘッドセットといった、いかにもゲーマー女子の部屋みたいな感じの部屋だった。


(つーか部屋綺麗だな…… 整理整頓しっかりしていて真面目な性格の彩音って感じの部屋だ、散らかってる俺の部屋とは大違いだな……)


 彩音の綺麗な部屋を見ていると、奥の窓側にあるベッドで彩音は寝ていた。

 ピンクのもふもふのパジャマを着た、真っ白の肌に綺麗な黒髪、まるでお人形さんのような容姿で義理の妹だが思わず可愛いと思った。


 (やっぱ俺はこの美少女が推しだ……今更だけど、やっぱり実感が持てないな……)


 まさか推しが妹だとは今でも信じられない。

 俺が前シーズン、アジアの頂点をかけたランキングで俺を超え、個人の試合でも俺を倒した最強の美少女。

 そんな少女が今目の前で眠っている妹なんて誰が信じられるだろうか。


 俺は彩音の椅子に座りながら、そっと左手で彩音の頭を撫でた。


「ったく…… こんな可愛い妹が俺の超える目標か……」


 俺が頭を撫で、独り言を言っていると急に眠気がした。

 昨日の大会の疲れだろう、全力で息を上げるほどの熱狂は暖かいお湯に浸かっても、早く布団に入っても回復しきれない。


「彩音も寝てるし、少しだけ寝るか……」


 俺は彩音のゲーミングチェアを倒し、ベッドのような形にして寝っ転がった。

 以外にもゲーミングチェアは寝心地がよく、俺の視界が暗くなり眠りについた。








 あれから何時間が経過したんだろう、俺が目を覚ますと俺のお腹の部分に彩音の布団が横の状態でかかっていて添い寝のような状態になっていた。


「あっ お兄ちゃんおはよ〜 ごめんね…… 起きれなくて……」


「え……」


 俺が横を見ると、寝た状態の彩音が隣にいた。

 妹(元推し)と擬似的な添い寝という、オタクとしては天国な状況、兄妹としては複雑な状況に俺は混乱した。


 (は?? いや、待て待て待て…… え??)



「あ、お兄ちゃん 風邪ひくとよくないから、私の布団をかけたけど大丈夫??」


「いや…… 俺はいいんだが、彩音は俺の横で寝るの嫌じゃないのか??」


 俺が嫌じゃないことを伝えると、彩音はクスっと笑った。


「全然いやじゃないよ〜 だって私のお兄ちゃんだし」


「まあ、彩音が嫌じゃないならいいんだけどさ……」


 俺はとりあえず体を起こして、掛け布団を彩音に渡してスマートフォンで時計を確認した。

 時刻は14時、俺は7時間も寝ていたみたいだ。


「お兄ちゃん、せっかく朝起きて着替えてくれたのに私が起きれなくてごめんね……」


「いや…… 俺も寝ちまったし…… 彩音は何時頃起きたの??」


「えっと…… 多分8時頃かな、お兄ちゃんが横に寝てたから掛け布団を半分貸して2度寝して、さっき起きたよ!!」


 完璧美少女の彩音でも大会の疲れで2度寝してしまうというギャップ萌えで、俺は内心可愛いと思った。


「やっぱり大会の疲れ??」


「うん!! やっぱり強いひと達と戦ってたきたから疲れが取り切れなかったみたい!!」


「俺もそうだった…… どうする?? 準備して買い物に行こうか??」


 俺がそういうと、彩音は首を横に振った。


「今2時だし、ご飯食べたら3時頃…… 買い物の時間少なくなっちゃうから今度でもいい??」


「うん、俺はいつでもいいよ」


「なら、今度にしよう〜」


 彩音はそういい、布団から出てベッドメイキングをした。


「まあ世界大会予選、練習カスタム試合はまだ時間あるしそれらが始まるまでに行こうか」


「うん!! 絶対に約束だよ!!」


 彩音は俺の前に左手の小指をだしてもってきた。

 俺は右手を出し、彩音の指と結んで約束をした。


「んじゃあ、少し遅いけどお昼ご飯にしよ」


「ああ……」


 俺は返事をし、スマホをいじっていると彩音は恥ずかしそうにムズムズとしていた。


「あの…… お兄ちゃん……」


「ん…… どした??」


「えっと…… 着替えるから外に出てて貰ってもいい??」


「す、すまん……」


 俺は急いで彩音の部屋を出て、扉を閉めた。

 

 


 


※後書き

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