第25話 罰ゲームという名のご褒美

「世界大会予選の出場権か…… どうしよ……」


 今回の大会でリーダー権を獲得したことによって、チームに所属することなく俺は世界大会予選へ出られるようになった。

 ただ大きな問題がある、それは一緒に組んでくれる仲間がいないことだ。


「個人部門はないから、後3人…… 彩音は多分みんなで出るから集めないとな…… はぁ……」


 インキャにはとんでもなく高い壁にぶつかり、思わずため息が出た。

 俺が1人で悩んでいると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


 俺がドアを開けると、彩音が涙を流しながら俺の胸に抱きついてきた。



「う…… うぇん え……ん えーん……」


「ど、どうした……」


「お、お兄ちゃんに酷いこと言って…… ごめんなさい……」


 彩音は泣きながら、俺を煽ったことを謝罪した。

 俺はそれを聞いて、彩音の頭をそっと撫でた。


「いや…… いいんだ…… 俺は心が死んでいた…… あの言葉ではっとさせられたよ むしろ感謝したいくらいだ……」


「え……??」


「正直勝てない、無理だと思って諦めていた…… そして妹をゲームの世界だからといって殺すのは嫌だと思った…… でも違う!! 俺は勝つために大会で蹴散らした屍の上にいる…… 何が兄妹だ、俺は目の前のやつを倒して頂点に立つ…… そう考えが変わって、彩音との距離を縮めることができたよ」


 俺がそういうと、彩音は安心したのかふふっと笑った。


「変なお兄ちゃん……」


「うっさいな!! まあ今回は負けたけど…… 世界大会では絶対に勝つからな!!」


「うん!! 私ももっと強くなるから、絶対負けないよ!!」


 俺は彩音とハイタッチをした。


「んで、お兄ちゃんの今回の罰ゲームは……」


「ごくり……」


 俺は彩音がどんな罰ゲームを指定するか、内心ビビっていた。

 ゲームの長時間耐久配信、高額プレゼント、またはホラーゲームやバンジージャンプなどの絶叫系、どれが来てもいいように俺は心構えをしていた。


「お兄ちゃんには、明日1日 私の買い物に付き合ってもらいます!!」


「うん」


「いいの??」


「あっ……いや、それと??」


 俺がビビりながら彩音に聞き返すと、彩音はキョトンとした顔をした。


「え?? 私の買い物についてって貰って重い物とか持ってもらうつもりだけど……」


「え?? それだけ??」


 てっきり絶叫系が来ると思っていたので、心構えていたがビビっただけ損した。


「うん!!私はお兄ちゃんと買い物できるだけでいいよ〜」


「そっか、なんか罰ゲームになってない気がするけどわかった」


 俺が買い物に行くことを伝えると、彩音はニコニコして嬉しそうにスマホを見せた。


「えっとね〜 んじゃあこの服屋さんと靴屋さんと〜 後はこっちのお店のパフェも食べたい〜 」


「はいはい、今回は罰ゲームだし大会賞金も少し貰ったし、俺の奢りでいいよ」


「やった〜!! ありがと!!」


 今回の大会、準優勝3万円のギフトカードというプロリーグ参加資格のオマケにしては太っ腹な金額を頂いたのでちょうどよかった。


(それにいっつもご飯作ったりして貰ってるし、たまには奢るべきだしな……)


 彩音は笑顔で嬉しそうにしていた。


「明日の10時くらいに家を出て、近くのショッピングモールね!! ちゃんと早起きしてよお兄ちゃん!!」


「ああ…… 努力はする」


 俺の返事を聞いて、彩音はあははと笑った。


「お兄ちゃんが起きなかったら、私が起こすから安心して!!」


「彩音が起こしてくれるなら、安心だ」


「任せて!!  お母さんがご飯つくってくれたみたいだから食べに行こ!!」


 彩音はそう言って、茶の間の方へ走っていった。

 俺は部屋の中に戻り、飲みかけのペットボトルの水を持って茶の間へ向かった。


 (久しぶりってか、今更だが初めてか2人で買い物行く気がする……)


 初めて行く妹との買い物だ。

 昔はお母さん同伴で行くことはあったが、俺が中学生になってから今までは行ったことがなかった。


「まあせっかくの機会だ、何か俺も買い物するか……」


 俺は水の横にあった傷だらけのキーボードを優しく撫でた。


「そろそろ替え時か…… 明日新しいのを買うか……」


 俺はスマホで新しいキーボードを探しながら、歩いて茶の間へ向かった。


 (せっかくだし、1万円くらいのこれにするか……)


 1万円くらいの中々評価の高いものを見つけ、俺はそれにすることに決めてSNSアプリを開いた。


 今日の通知はいつもより多く、通知がカンストしていた。

 どうせ大会で2位だったから、ざまぁとかだろうと思いアプリを開くとYUU羨ましいがトレンドに入ってた。


「なんだ??」


 俺は2位でプロリーグの参加資格を貰ったことを羨むプレイヤーの声かなと、トレンドを見るとそこには俺が彩音のアバターに押し倒されてる最後のシーンのところを彩音のファンがクリップした物だった。


「……まさか、この大量メッセージも……」


 俺はタイマン用にメッセージを開けている。

 恐る恐るメッセージを開くと、そこには彩音のファンからのメッセージが大量に届いていた。


「とりあえず封鎖するか……」


 俺は返信するのがめんどくさくなり、メッセージを封鎖してご飯を食べに向かった。

 


 

 


※後書き

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