第21話 天才を超えた瞬間

「え…… 嘘っ……」


 俺は弾丸が脳天に直撃する寸前、首を横に寄せて弾丸を回避した。


「バカいってぇ…… だが…… 上手くいってよかった……」


 俺はアサルトライフルを地面に捨てて、ハンドガンを持って距離を詰めた。


「嘘でしょ…… なんで……」


 有栖はスナイパーライフルを構え、俺目掛けて放った。

 俺はパルクールの動作をして、弾丸を回避した。


「俺はこんなとこで、負けられないんだ」


 俺は有栖に接近し、足目掛けてハンドガンを放った。

 ハンドガンが有栖の足に当たって、有栖は木の根元で転倒した。


「はぁ…… はぁ…… 閃光弾で目眩しをしたのに、なんで弾丸を回避できたんですか……??」


「秘密、と言いたいところだけど…… どーせ配信履歴でバレるからいいか」


「……おにい」


「あああああああ!! なんだ…… 俺様になんか言いたいことでもあんのか?? えーさんよ……!!」


 有栖ちゃんが俺のことをお兄さんと言いかけたので俺は適当に誤魔化した。


「あ、そうだった…… ん〜とYUUさん、どうやって回避したんですか……」


「正解はアサルトライフルを単発に切り替えて、ダメージを上げた状態で自分に発砲してダメージエフェクトに上書きしただけ」


「え……」


 俺は目が見えない状態で奇跡的に回避できても、追撃までは避けられる気がしなかった。

 なので自分の体に弾丸を撃って、ダメージエフェクトを無理やり出して閃光の視野を遮るのを無効化し、上書きした。


「どうする…… まだ続けるか?? 俺はまだまだ戦えるが」


「いえ…… 参りました……」


 有栖はそう言って、降参ボタンを入力した。

 YOUWINの文字が俺の画面に表示された。

 勝利画面を見て俺は肩に入っていた力が抜けて、ぐったりと椅子に倒れた。

 

「よし…… これで彩音と戦える〜」


 俺は指をポキポキと音を鳴らして、軽くストレッチをした。


「さて…… コメント欄はどうなってるか……」


 俺が有栖ちゃんを倒したことで、俺のアンチや有栖ちゃんの一部のファンなどでコメントが荒れるように思った。


 俺は恐る恐る配信を開くと、悪い予想は的中していてコメント欄は大荒れ状態だった。

 TAKIは必死に対応していたが、配信のコメントが多く対応しきれていなかった。


「ネットでイキるのやめようかな……」


 俺は今までアンチが増えるような発言をしてきたことを少し後悔した。

 

『今のは運だろ』


『女の子相手にイキるボッチ君(^_^;)』


『えーちゃんの決勝が見たかった!!』


『待ってろ、えーちゃん…… 俺様がこんな雑魚ぶっ倒してくる…… 籍を入れるのはその後だ……』


 など様々なコメントが流れていた。


「何が運だよ、おめぇらにあれができんのかよ下手くそが!! 早くIDをメッセージでおくってこい、二度とPCの前に座れんくなるくらいボッコボコにして…… ん……」


 アンチのコメントにムカついて1人部屋でキレていると、通話アプリから電話がかかってきた。

 

「あ…… 繋がった、お兄さん…… いいゲームだった……」


「有栖ちゃんか、俺もめちゃくちゃ強い有栖ちゃんと試合できてよかったよ」


「褒められると嬉しい…… えへへ…… それより決勝の相手は確認した??」


「ん…… あ〜もう出てるのか、どれどれ……」


 俺はトーナメントを確認すると、決勝は彩音と俺の名前が載っていた。


「やっぱり…… 彩音か……」


「彩音ちゃんは最強…… お兄さんには負けない……」


「確かに彩音は強いけど、今回は俺が勝つ!! 応援しててくれ」


「それは無理…… 彩音ちゃんの方を応援する……」


「ですよね〜」


 有栖ちゃんらしい返事で、キッパリ断られた。


「でも…… 強かったのは本当だから…… 簡単には負けないでね……」


 有栖ちゃんに応援されて俺は少し笑顔になった。

 推しのグループのメンバーに応援されたからか、それとも天才に応援されたからか、どちらにせよ凄く嬉しく感じた。


「あ、ありがとう…… んじゃあ試合で勝って俺が最強だってことを証明してくる」


 俺はそう言って通話アプリを切断した。


「さて…… いよいよか……」


 俺は決勝で彩音と戦うことになって武者震いで少し震えていた。

 俺は大会の公式配信を開いた、彩音の方のフューチャー試合が終わり彩音のインタビューが終わったタイミングで彩音に電話をした。


「あ、彩音聞こえる??」


「うん、聞こえるよ〜 」


「これから決勝だけど、彩音って何の武器を使う??」

 

「ん〜 サブマシンガンを使うつもりだったよ〜」


「そっか、なら俺もSMG使うから、同じ武器で完全に実力で決まる試合をしよう」


「分かった!! 負けたら罰ゲームだからね!! 」


「ああ、んじゃあ お互い頑張ろ」


「うん!!」


 俺は通話アプリを切って、ヘッドホンを頭に付けた。


「よし…… んじゃあ俺が勝ってアジアで1番上手いって証明させるか……」


 俺はゲームを開いて彩音に対戦の招待を送った。

 

 


※後書き

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